科学技術関係予算のパブコメ募集―総合科学技術会議

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大学の事務からの案内で知りました。

総合科学技術会議
「平成23年度科学・技術関係予算についての意見募集~優先度判定の実施に向けて~」
パブリックコメント募集
締切日: 平成22年9月17日正午まで
意見募集ページ: https://form.cao.go.jp/cstp/opinion-0015.html

各府省が要求する主な科学・技術関係予算について、総合科学技術会議が「優先度判定」を行う一環として、限られた財源のなかで、どんな研究を優先的に進めていくべきか、国民から広く意見を募るものです。
来年度から始まる「第4期科学技術基本計画」では、「国民とともに創り進める科学・技術政策」という理念のもと、「政策の企画立案・推進への国民参画の促進」がうたわれています(総合科学技術会議「科学技術基本政策策定の基本方針(案)」(PDF330KB)36頁参照)。このパブリックコメントは、その前倒し的な取り組みの一つだといえます。


「素人に研究の優先度なんて考えられるのか?」「素人の意見で優先度を決められたら堪らない!」「こんなのミンスの人気取りのための衆愚政治じゃないか?」――そんな声も、とくに研究者業界からは聞こえてきそうですが、ぼくとしては、こういう取り組みは、やり方の工夫は凝らしつつも、大いに進めるべきだと思います。
第一に、これだけ社会に大きな影響(プラスにもマイナスにも)があり、税金もたくさん投入している科学技術に関係する政策を、(一部の)研究者や政策関係者だけで決めてよいのか、ということがあります。恩恵を享けるにしろ被害を受けるにしろ、潜在的には誰もが「当事者」です。恩恵を享けるとしたら、どんな恩恵を享けたいか、被害を受けるリスクがあるとすれば、そのリスクは、その半面にある便益やコストなどと比較して、受け入れるに値するものなのかどうか、不確実な未来に賭けてみるだけの価値があるものなのかどうか。それを決めるのに、当事者の意見を無視することは、少なくともデモクラティックな社会では許されないでしょう。
第二に、「国民」とひとくくりに言われるけど、その内訳は、多様な職業や生活の経験と知識、価値観や感性をもった人々です。みんな、それぞれの場所で日々真剣に働き生きている人たちです。たとえ科学技術の研究には「素人」であっても、別の分野・領域ではある種の「専門家」です。そうした人たちが多く関わることで、政策決定に直接関わる専門家や政策関係者では気づかない問題点や課題、あるいは期待が浮かび上がってくる可能性が高まります。とりわけ、何らかの意味で「社会に役立つ(経済的な意味に限りません)」ことを狙った研究であれば、どういう研究をすれば、本当に社会に役立つものになるのか、それを探り出し、研究をより良い方向に進めるための洞察が得られる可能性も高まります。
第三に、パブコメを呼びかけられている「国民」には、当然ながら、科学技術の分野の研究者も含まれています。研究者の世界も多様であり、その人たちの意見を、政策決定に直接関わる専門家――具体的には総合科学技術会議の議員や各府省の審議会委員――の人たちがバランスよく汲み取っているとは限りません。分野が違えば、何を優先すべきかは自ずと異なるでしょうし、同じ分野でもそうでしょう。とりわけ、総合科学技術会議や審議会に集うシニアの研究者と、30代~40代の若手・中堅の研究者――研究現場を実質的に切り盛りしている人たち――とのあいだに意識や認識の差があるというのは、よくある話です。
非研究者の声と同様に、そういう研究現場からのボトムアップな専門的意見も、これまでの政策決定ではなかなか反映させることができなかったわけです。これからの研究を担う大学院生やポスドクの声は、なおさら届く回路がありませんでした。
もちろん一般にパブコメの制度は、「とりあえず意見聞きました」という儀式的なものとして機能していないという面はあります。しかし、それに実質的な力を持たせるには、意見を出す側でも、政策決定の場にいる人たちが考慮せざるをえないような鋭い意見・提案をたくさん出していく必要があります。そのままでは「木彫りの仏」にすぎないパブコメ制度に魂を込めるのは、ぼくたちの側なんだと思うわけです。
そんなわけで、研究者の人も非研究者の人も、ぜひぜひパブコメを出してみましょう!

 

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