米加BSE対策調査団は子どもの使いか?

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昨日公表された政府の「米国及びカナダにおけるBSE対策に関する現地調査」の報告を見て、頭を抱える。う~ん、調査団の人たち、子どもの使いですか??

3.主な調査結果
(1)と畜場におけるSRM除去と月齢判別の状況について
(1) と畜場における衛生管理は、HACCP及びSSOP(衛生標準作業手順書)等により行われており、これらに従いSRMの除去や30ヶ月齢の月齢判別が行われていた。
(2) 30ヶ月齢未満の牛の脳、せき髄等についてもフードチェーンから除去していた。
(3) 20ヶ月齢の判別方法については、牛の個体識別システムの下で一部の牛は出生記録での判別が可能であった。
(4) 生理学的成熟度(A40)による月齢判別については、格付検査官がA00からA50までの標準写真サンプルを携行することや、通常の格付工程で対日輸出用に選別した牛枝肉を対日専用作業ラインに移し、改めてA40以下かどうかについて再度確認し最終判定するとの考え方が示された。
 
(2)飼料規制の実態と遵守状況について
(1) 米国及びカナダにおいては、大規模な飼料等関連施設を中心に、畜種別の分離が進んでいる。
(2) 今回は、特に非専用化施設における製品製造工程等について調査した結果、
イ 飼料の交差汚染等の防止のため、製造工程の分離又は洗浄及び製品への表示について、それぞれの法制度に従った管理が行われていること
ロ これら法令に基づく規制に加え、飼料の適正使用を担保するため、飼料や家畜の出荷に際して、飼料に禁止物質を含んでいないことや、牛に禁止物質が与えられていないことについて明記した宣誓書(affidavit)の提出を求めることが行われていること
が確認できた。

ちなみに調査場所と日程は、米国はカリフォルニア州のと畜場・飼料関連施設とネブラスカ州のと畜場で5月9日~11日、カナダはオンタリオ州のと畜場で5月12日~13日とだけ書いてあって、何箇所行ったのか、それぞれどれくらいの時間を書けたのかは分らない。仮に毎日午前・午後一つずつ見て、最大でも米国が6箇所、カナダが4箇所。そんなんで、食品安全委員会への諮問の基礎データにするつもりですか?おそらく、ちゃーんと米国農務省にお膳立てされた場所だろうし。
上記に引用した調査結果にしても、いちおう現場を見ながらも、基本的には先方の説明者の話をまとめただけなんじゃないのだろうか?それとも、ちゃんと現場のラインで働く作業員にも、「今何やってるの?」、「これは何ヶ月の牛ですか?」、「特定危険部位ってどれですか?」とか、抜き打ちでトートツな質問してみたりしたんだろうか?(できればスペイン語で。)そもそも調査に行った「担当者」の人たち、氏名や役職が書いてないんだけど、現場を見て、何をやってるか自分で理解できるような知識や経験がある人たちだったのだろうか?失礼ながら、普通のお役人では現場の事情は日本国内のでも詳しくないのではないか?現場に一度も行ったことない人なんてゴロゴロいるだろうし、一度や二度行っただけではダメだろうし。
それと、そもそも今回の調査では、米国のBSE対策の問題を内部告発をしているOBおよび現役の検査官や全米食品検査官合同評議会議長(参考)、精肉企業タイソン・フーズ社の労働組合代表(参考1参考2)、あるいは米国会計検査院(参考)には話は聞かなかったのだろうか?聞いてないとすれば、たとえば、刑事事件で容疑者の身内ばかりに話を聞いて、事件の目撃者の話を一切無視しているようなものだ。「問題を見つけないように調査した」といわれても仕方ないんじゃないか?
こんな報告を受け取る食品安全委員の先生たち、いったいどんな反応をするのだろうか?ぜひ、「子どもの使いじゃないだろ!?」、「こんなんでリスク評価できるか!」といって、つき返して欲しいものだ。
<追記>
別件で18日の衆議院農林水産委員会のビデオを見てたら、民主党の山田正彦議員の質問に対する答弁の中で、島村農相が「米国では変異型クロイツフェルト病の患者が見つかったという報告はないと聞いている」と言っていたが、これも「子どもの使い」の一種かも。なにしろ米国では、病理解剖によるCJDのチェックをまともに行っていないからだ。検査してなけりゃ、報告がないのは当たり前である。
参考: Speak Easyさんより

また、人のプリオンたんぱく質遺伝子を組み込んだマウスの実験で、BSEプリオンの摂取によって変異型CJDと散発型CJDの両方が発生するという実験結果もあったりする。

BSE prions propagate as either variant CJD-like or sporadic CJD-like prion strains in transgenic mice expressing human prion protein

それと忘れちゃいけないのが、アルツハイマー病や痴呆症と診断された人々のなかにvCJDが埋もれている可能性。有名なところでは、アルツハイマーと診断された患者46人の死後の病理解剖で6人(13%)がCJDだったことを明らかにした次の論文がある。

Manuelidis, Elias E. and Laura Manuelidis, “Suggested Links between Different Types of Dementias: Creutzfeldt-Jakob Disease, Alzheimer Disease, and Retroviral CNS Infections” Alzheimer Disease and Associated Disorders_ 3 (1989): 100-109

これは89年なので、見つかったCJDがvCJDであるかどうかは分らない(当時はvCJDは未発見)。他にもいろいろあるみたいで、こんなページもあった。

ちなみに米国のアルツハイマー患者数は400万人。仮にそのうちの1%がCJDだとしても4万人もいることになる。自然発生する孤発型(散発型)のCJD(sCJD)は、世界的に人口100万人あたり1人の発生率なので、人口2億8000万人の米国ではsCJD患者は280人程度のはず。上のManuelidisらの調査がたまたま「濃い」のを当てちゃったのか(その確率ってどれくらいだろう?)、それ自体も誤診だったのか?そうでないとすれば、異様に多いCJD患者の数は一体何が原因なのだろう?
それと、トラックバックを頂いておりますが、この件についてはSpeak Easyの真名さんが情報を集めておられます。

Speak Easyうげっ、これが国内のヒト狂牛病診断対策

 

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4件のコメント

  1. 「牛」から「肉」へ

    『隠された風景?死の現場を歩く』福岡賢正著
    食肉処理場がひとつのテーマになっているというこの本、
    私は読んだことありませんが、
    この機会に、以前からいつかは書こうと思っていたことを書くことにします。
    私は食品流通に関わる仕事をしており、
    以前は食…

  2. あきれてものも言えません。
    単なる流通業の食肉担当だった私の、拙い現場の報告をトラックバックさせていただきました。屠場はBSE発生後の体験でした。
    飼料工場は書いていませんが、素人眼に見ても交差汚染はあり得ると思いました(こちらはBSE発生のずいぶん前の体験でした)

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