SPRU訪問(続)―アクリルアミド

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昨日の夕方モブログしたエントリーで書いたアクリルアミドの話。
厚生労働省の

加工食品中アクリルアミドに関するQ&A

にもあるように、アクリルアミドは、主に紙力増強剤、合成樹脂、合成繊維、排水中等の沈殿物凝集剤、土壌改良剤、接着剤、塗料、土壌安定剤らの原料として用いられているものだが、これが今、各国で話題になってるのは、それが、イモ類など炭水化物を多く含むものを油で揚げたときにも副生成物として発生してしまうことが、昨年4月にスウェーデン食品庁とストックホルム大学の共同研究で明らかになったからだ。上記のような産業用とのモノに暴露されなくても、フライドポテトなどで日常的に摂取してしまうというわけだ。その健康影響としては現在のところ、次のようなことが考えられている。

  • 短期暴露影響
    • 眼、皮膚、気道を刺激する。
    • 中枢神経系に影響を与えることがある。
  • 長期又は反復暴露影響
    • 神経系に影響を与え、末梢神経を損傷することがある。
    • 人でおそらく発がん性を示す。
    • 人で遺伝性の遺伝子損傷を引き起こすことがある。

このようなリスクを持つアクリルアミドについて、昨日のSPRUでのErik Millstone氏との打合わせでは、次の二つのことが興味深い話題として持ち上がった。
一つは、アクリルアミドの遺伝子傷害性(遺伝毒性)発がん物質 (genotoxic carcinogen)としてのリスクについては、今のところ定量的なリスク評価の方法が確立されていない――複数の方法が提案されているが、どれがもっとも現実的な方法かを判別する基準がない――のだそうだ。特に、この遺伝毒性の場合は、「これ以下の摂取量なら悪影響はない」という閾値が存在せず、耐用一日摂取量(ADI)が決められないという問題があるそうで、ゼロリスクにならず、いずれかのレベルを「受け入れ可能なリスクレベル」として許容するというやり方しかできない。しかし、それを決めるにも、現実的なリスク評価の方法がまだ定まっておらず、Millstone氏が関わっているWHO(世界保健機関)でも困っているそうだ。
もう一つ興味深い話は、食品中に含まれるアクリルアミドの「起源」に関するもの。上記の厚労省の説明や、そこにリンクされているスウェーデン食品庁、英国食品基準庁などの説明でも、食品中のアクリルアミドは、高温の油で揚げることで発生するとされているのだが、Millstone氏はこれに疑問を投げかけている。そういう食品加工によるものもあるだろうが、それとともに無視してならないのは、土壌改良剤として農地で使用されている「ポリアクリルアミド」(アクリルアミドの分子がいっぱいつながって高分子化したもの)が、分解してアクリルアミドになり、農作物に吸収されている可能性だというのだ。ポリアクリルアミドは、吸収・保水力が高いため、紙おむつや生理ナプキンでも使われており、また浄水用にも使われている非常に身近な物質だそうだ。農業でも、化学肥料の多用で疲弊した土の保水力を高めるための土壌改良剤として使われていたり、農薬の成分としても使われているという。ポリアクリルアミドといっても、そのなかに単体のアクリルアミドがある程度混ざっているものだし、分解して単体化することもある。それが作物を汚染しているかもしれないわけだ。(食品中にポリアクリルアミドのまま残留していたものが調理熱で分解することもありうる。)
しかしながらこの可能性は、非常にありえそうな話であるにもかかわらず、どこの国でもまだ言及されていないのだそうだ。その理由としてMillstone氏は、もしも規制すれば、農業や、さらには水道水、生活・医療廃棄物にも影響が波及するのを恐れて、規制当局が自制してる可能性もあることを指摘していた。データとしても、調理済みの食品中のアクリルアミドを測定したものはあっても、調理前の、畑からの残留可能性があるものについてはない(少なくとも、公表されていない)のだそうだ。
まだ定量的なリスク評価が確立していないため、どれくらい危険なのかは不明だが、利害関係の範囲が大きいだけに、思わぬ「パンドラの箱」になりそうな気配が、アクリルアミド問題には漂っている。
<追記:3月10日>
アクリルアミドについては、下記のエントリーも参照してください。
アクリルアミド毒性についての国連報告(2005.3.8, 追記3.10)
アクリルアミドの情報サイト(2005.3.10)

 

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1件のコメント

  1. 牛乳の話(最後)

    なんかここんとこ、異常に堅苦しい話になっていて恐縮だが、
    ま、そーゆーこともあるさ、ってことで。
    乳牛のエサには硝酸態窒素が含まれているからありがたくない
    と昨日書いたが、実はこれは輸入飼料に限った話ではないし、
    牛のエサに限った話でもない。
    日本国中の…

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