しばらく前にここでも触れたBSEの国際基準である国際獣疫事務局(OIE)の新基準で、これまで多数の感染例を抱える高リスク国以外は、腸の一部だけの除去で良かったものが、感染例が少ない中リスク国を含め、月齢を問わず腸全体が「危険」指定されることになった。一部だけの除去は、技術的に手間がかかり難しいからというリスク管理上の理由かららしい。
BSE安全基準の「危険」指定拡大 国際獣疫事務局
動物衛生に関する貿易ルールを決める国際獣疫事務局(OIE、本部パリ)の年次総会は27日、牛海綿状脳症(BSE)の安全基準の見直しで合意した。新基準では、感染例を抱える国が輸出品から取り除くべき特定危険部位のうち、「腸全体」の適用範囲が大幅に拡大される。牛腸の国内消費の半分を輸入に頼る日本は、米国からの輸入停止に続いて影響を受けそうだ。新基準は28日の採択を経て発効する。
いまの安全基準で腸全体を除去しなければならないのは、多数の感染例を抱える高リスク国だけで、それも月齢6カ月以上の牛が対象だった。新基準では、感染例が少ない中リスク国を含め、月齢を問わず腸全体が「危険」指定される。
<BSE>感染危険国からの牛小腸の輸出入を原則禁止に
国際獣疫事務局(OIE)が27日、BSE(牛海綿状脳症)の国際安全基準を見直し、感染の危険がある国からの牛の小腸の輸出入を原則禁止にすることを決めた。OIE基準は2国間の合意に基づく貿易まで拘束できないが、日米政府が進めている米国産牛肉の輸入再開協議の進展次第では、牛肉輸入が再開されても、小腸の禁輸が続く可能性が浮上してきた。もつ料理やホルモン焼きを抱える外食産業界は「輸入再開後も小腸禁輸が続けば、品不足は避けられない」と警戒を強めている。
ところでOIE基準は、世界貿易機関(WTO)が、加盟各国の規制が準拠すべき国際基準として指定しており、これを上回る水準の規制をもうける場合には、その正当性を科学的に立証しなければならない。自由貿易の推進機関WTOの立場では、規制は何であれかどに貿易制限的であってはならないからだ。記事では「OIE基準は2国間の合意に基づく貿易まで拘束できない」となっているが、たとえばアメリカが日本の禁輸措置をWTOに訴えた場合、どうなるのだろうか?
それから一つめの記事によれば、他の特定部位については次のようになったという。
中・高リスク国が月齢6カ月以上の牛から除去すべき部位とされていた脳、眼球、脊髄(せきずい)などについては、新基準で対象牛の月齢が「12カ月以上」に引き上げられ、規制が緩められた。月齢を問わず全頭からこれらを除去している日本は反対したが、押し切られた。
おそらく、12カ月未満ならリスクはまず無視できるというこれまでの経験から得られた科学的知見と、過度に貿易制限的でないことという貿易問題上の観点から下されたものだと考えられるが、日本政府としてはどうするのだろう。国内的には今まで通り全頭対象の除去を実施するという選択もあるかもしれないが、これまたWTOが絡んでくると、国内産と輸入品のあいだに過度に貿易制限的な「不当」な差別をしていると文句つけられるかもしれない。