今度は家族会バッシングですか・・気分はもう全体主義!

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先週末のコイズミ首相の北朝鮮訪問を「予想した中で最悪の結果」と評した拉致被害者家族会のもとに批判が殺到しているという。
「子供たちが帰ってきたのに首相に対する感謝がない」とか、4月の人質家族に対するのと同様の反応。まったく、何なんでしょうね、この国は。


ちなみに家族会の側は、「5人の帰国への祝福や、首相へのねぎらいも申し上げた。テレビでは批判している場面しか印象に残らなかったのが残念」と説明しているという。そうだとすれば、マスコミの責任が大きいんじゃないだろうか?人質事件での被害者家族に対するあのバッシングを見れば、今回の家族会の人たちが同じような目に遭うことくらい、予想がつかなかったのだろうか?小生でさえ、22日の夜、家族会の会見を見たとたんに「こりゃヤバイかも」と思ったぞ。それで早速2ちゃんねるを見てみれば、案の定、家族会批判スレがいくつも立ち上がっていた。(ゲッソリ)
マスコミの立場からすれば、事実として明らかに失策であった今回の訪朝を報道するにあたって、家族会による首相批判は格好の材料だったのだろう。
後日追記:週刊ポスト6月11日号の記事「拉致家族会バッシングは仕組まれた」は、今回のバッシングは官邸側の仕掛けだったと指摘している。拉致家族会と首相との対面は、当初は最初の5分間だけ――つまり家族会側が首相にねぎらい等の挨拶をした場面――マスコミ公開の予定だったのが、直前になって全面公開となったのだが、その理由は、イラク人質事件で味をしめた官邸サイドが、家族会が今回の訪朝に大変不満を持っていることを知り、「今回もこれでいこー!」と考えてやったのだという。激しい首相批判のシーンを見れば、「小泉さんいじめられてカワイそ~」とか「そこまで言わなくても・・」とか国民の同情論を引き出すことができるだろうという計算である。そんな仕掛けをした官邸サイドの姑息さと、権力を持った人間が「素人さん」を虐めるというエゲツなさもひどいが、まんまと利用されたマスコミも、乗せられた一部国民(コイズミ厨?)の側も大アホである。
また、やたら帰ってきた(というのは精確ではないが)子供たちにスポット当てたワイドショー的取り上げ方もやめて欲しい。確かに家族が一緒になってほんとに良かったのだが、もう少しそっとしておいてやれないのか?いろいろ精神的にも大変だろうし。それと、そういうワイドショー的取り上げの裏に、肝心の訪朝の政治的成果というか損失の部分についての報道が宙に浮いてしまった感じになっている。サッカーでいえば、格下相手に7対1くらいでボロ負けしたのに、一つだけ入ったゴールシーンでわき上がっているようなものだ。「情」もマスコミ的には美味しいネタなんだろうけど、ちゃんと「理」を切り分け、とくに今回のような重大な政治的テーマ――「訪朝ショー」でうやむやにされた小泉首相の年金未納問題とか厚生年金詐欺疑惑とかも含めて――が控えている場合には、情は押さえて理を1:9くらいの割合で優先すべきではないのだろうか?モーニングショーやワイドショーも含めて。
しかしその一方で、家族会を批判し、コイズミを支持しちゃうのって、いったい何なのだろう?ファシズム一歩手前のポピュリズムそのまんまじゃないかという気がしてくるぞ。「首相に対する暴言があった」なんてことで怒ってたりするのもいるらしいが、それじゃまるで将軍様の国みたいじゃないか。政府(つーかコイズミ?)を批判するやつは、国民自らが誰であろうと叩いてつぶす。明日は我が身かもしれないのに、というより、明日は我が身かもしれないと恐れるからこそ、「自分はそうではない」という証としてそんなことをしてしまうのかもしれない。それはもう立派なテロルであり、気分はもう全体主義!ってか?「感謝の言葉がない」とか言ってるから、それはある種の道徳観、「日本的道徳観」ってやつが絡んではいるのだろう。まぁ確かに、「礼節を重んじる」というのは、われわれ日本人にとって決して悪くはない価値観ではある。いや、むしろ誇るべき財産だと思う。美しき日本のこころ、ってやつだ。けれども、それが、傷ついている個人に対する攻撃性という醜悪なものと、いとも簡単に同居しているというのは、とても不可解だし、怖しい。
ちなみに今回の訪朝についての評価を尋ねた各社の世論調査では、「全体的に評価する」というのが6~7割もいる一方で、食糧支援などしたのはどうかとか、各論になると評価は低くなっている。これは、調査の設問の仕方――たとえば各論の評価をしたあとで総論の評価をさせるとかしてたらどうだったろう?――が悪いのかもしれないけど、それでも確かに各論では評価が低いという事実は大して変わらないだろう。だとすれば、そのあたりからコイズミ批判が出てきてもいいものだが、そんなことには決してならない。要は、何の権力もない個人に対しては、ちょっとカチンと来ただけで、電話やメールで罵詈雑言を浴びせるエネルギーはあっても、決してそのエネルギーは「お上」には向かわないのだ。
そこにあるのは、要するに政治に対する徹底した「あきらめ」「無力感」なのかもしれない。何をしても国は変わらない。コイズミも変わらない。コイズミは決してこの国を良くしてくれはしないかもしれないけど、場合によっては自分たちは切り捨てられる側かもしれないけど、自分が文句言ったって何も変わらないでしょ?変わるというなら、誰が首相になればいいのか、そんな人いないでしょ?という感じだろうか。コイズミの支持率の高さというのは、そういう徹底した、絶対零度の無力感の裏返しなのかもしれない。「他にいないじゃないか」というのは、コイズミがよりマシだということではなく、現在の悪い状況を自分は決して変えられないという思いっ切りネガティヴな絶望を自覚したくないというある種の退行現象なのかもしれない。
まぁ中には、本気でコイズミ政権に期待している人もいるのかもしれないが、それはあまりにオメデタい類の人たちだろう。
ちなみに、こんなふうに思ったのは、実は、先日研究室に尋ねてきた学生が、まさにこのパターンだったからだ。「小泉さん以外に誰がいるんですか?」という言葉は、「何やったって変わらないでしょ」というあきらめの言葉と並んで出てくるのである。
それで、その学生さんにも言ったのだが、僕らはちょっと考え直してみなくちゃいけないんじゃないだろうか。「本当に小泉以外にいないのか?」「何やっても変わらないのか?」それって、何もしないことの「理由」じゃなくて「言い訳」なんじゃないだろうか?ほんとは居心地悪いのに「ドアの外には何にもないよ、ここが一番だよ」と思いこむことによって、外に出ないことの言い訳にしているだけなんじゃないか?(心理学で言うところの「甘いレモン機制」ってやつだね。)
別に、「理想を追求しよう」なんて高邁なことをいっているわけではない。まぁ、むしろその反対かもしれない。理想はもってたほうがいいだろうが、だからといって高望みはよくない。
つまりこういうことだ。コイズミ以外の政治家を選んだとしても、その人はその人でやはりたくさん問題があるだろう。問題の数で競えば、もしかしたらコイズミ以上かもしれない。けれども、その問題点が日本社会にとって、僕らの暮らしにとってそれほど悪くはなかったり、逆に、現状を良くする方向で良いところがあるという人もいるかもしれない。ここの良いところのために、こっちの悪いところは我慢しよう、この悪さはあっち(コイズミ政権)の悪さよりはマシだろうというような具合に、よりマシ、あるいは「より悪くない」選択というのありえるんじゃないのか?たとえばの話として、同じ自民党でも「抵抗勢力」と呼ばれている人たちの中にだって、より悪くない人はいるかもしれない。逆にいうと、何から何まで理想通りなんていうことは絶対ないし、2割か3割いいところがあれば、それで十分なんじゃないか、そのくらい期待値を下げて見渡せば、少しは明るい方角も見えてくるかもしれない。要はみんな期待しすぎなんじゃないか?「自民党をぶっ潰す」なんていうヒーローは所詮はハッタリ野郎だというのはよく分かったのだから、シンデレラはもうやめて、ここはひとつ、大人になってみるのがいいんじゃないだろうか?
そんなわけで、約1ヶ月半後に近づいた参院選、今回も性懲りなく私は投票に行きます。あまり期待はせず、だけど何かが変わるかもという可能性は信じて。
(追記)
上記の学生さんと(だけではないが)話していてもう一つ興味深かったのは、彼女(ら)が世界で何が起きているかを全然知らないし、知るための方法も知らないことだ。あるいは反核市民運動から始まり、今や与党の一角となった――そのことで不自由度も増したけど――ドイツの緑の党という、いわば「政治は変わりうる」ということも知らない。(まぁ、そういうのを教えるのが大学なわけだが。。)
なんというか、今の日本って、ベルリンの壁があった頃の東欧社会、あるいは北の某国みたいなものかもしれない。果たしてインターネット、とくにblogカルチャーの広がりは、日本人の頭の中にあるベルリンの壁を壊すエナジーを生み出すや否や?

 

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1件のコメント

  1. 小泉首相訪朝の影響

    家族会が小泉首相を批判したことでバッシングされているらしい。これは僕には意外だった。この前の人質家族のバッシングでは、いわゆる「左翼」ということがバッシングの原因の一つになっていたから、今回はどう考えても「左翼」ではない家族会に対しては、それほどのバッシ

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