今日は朝、京都を発ち、昼頃から夜までずっと資料漁り、その後外食して帰ってきたので、さっき知ったばかりのニュースです。
プリオン調、委員の半数が辞任「牛肉輸入再開に責任」
米国産牛肉の輸入再開条件などを審議してきた内閣府食品安全委員会のプリオン専門調査会の専門委員12人中、半数にあたる6人が3月末で辞任していたことがわかった。
辞任したのは、座長代理だった金子清俊・東京医大教授、山内一也・東大名誉教授ら。いずれも任期は設けられていなかったため、委員会事務局では、年齢制限にあたる委員らをのぞく4人について再任を要望したが、受け入れられなかったという。
辞任した金子教授は「国民に食品安全委員会の審議について説明する場で、私自身が『米国などからの輸入再開については、国内規制の見直し同様、厳格に評価する』と説明していたのに、米国で特定危険部位の除去などが適正に行われるという前提付きの不十分な審議しかできなかった。吉川泰弘座長(東大教授)から再任を依頼されたが、責任を感じたので辞任した」と話している。
また、6人の辞任について、松田食品安全担当相は4日の閣議後会見で「4月1日にプリオン専門調査会の委員の再任を行った。当人の意向をうかがったところ、これまで十分働かせてもらったということで代わる方がおられた。(抗議の意思でやめたとは)私は受け止めていない」と話した。・・・・(読売新聞) – 4月4日14時8分更新
これについて食品安全委員会のHPには、4月3日付けで次の記事がある。
食品安全委員会専門委員の改選について
食品安全委員会では、別添「農薬専門調査会及びプリオン専門調査会専門委員の任免について」[PDF](平成18年3月9日食品安全委員会決定)に基づき、4月1日付けで農薬専門調査会及びプリオン専門調査会の専門委員の改選を行い、別紙[PDF]のとおり発令されましたのでお知らせいたします。
ニュース23では、読売の記事にもコメントしている金子さんのインタヴューがあり、「諮問の内容も[リスク評価者の側で:筆者補足]検討できないようでは、委員会の独立性が脅かされる」というようなことをおっしゃっていた。これは、このブログでも何度か指摘した問題で、以前に研究会で金子先生にお話いただいたときにも話題になった。またプリオン専門調査会でも、米国牛肉のリスク評価を行う最初の会合で議論になっている。
要するに、「問い方」次第で科学の「答え」は変わってくるということ。とくに「もしもアメリカが輸出プログラムをきちんと守ったら、日本の牛肉と米国牛肉のリスクの差はどれくらいか」という今回の諮問は、「青信号なら渡っても平気か?」――信号無視する乱暴運転の車はいないという付帯条件をつければ、答えは原則「イエス」となる問い――と尋ねるのに等しい「誘導尋問」になってしまってる点で大いに問題がある。そんなわけで、食品安全の国際規格を決めているコーデックス委員会では、「問い方」を決める「リスク評価方針(risk assessment policy)」を、リスク管理者(行政)だけでなく、リスク評価者(科学者)や利害関係者と協議しながら作成することを推奨している。
実を言えば、食品安全のリスク管理機関である農水省と厚労省は、昨年8月に「農林水産省及び厚生労働省における食品の安全性に関するリスク管理の標準手順書」を作成し、その4章「リスク管理の初期作業」では、リスクアセスメントポリシー(=リスク評価方針)の作成について次のように述べている。
4.4 リスクアセスメントポリシーの検討・作成
リスク管理者は、リスク評価が系統的で欠けたところがなく、公正であって透明性の保たれたものとなるよう保証するため、以下の手順に従い、リスク評価機関や「関係者」の協力を得て、食品健康影響評価を依頼する前にリスクアセスメントポリシーを作成する。リスク評価機関への諮問は、可能な限り明確でなければならない。
プリオン専門調査会での米国牛肉のリスク評価の諮問は、これより3ヶ月ほど前だったわけだが、これを見る限り、農水・厚労省は、コーデックスの推奨に明確に従うことを意図している。それが所詮は「建前」で、「本音」の部分はそんなにきれいにいかないとしても、世の中には命がけで守らなくてはならない建前というのがあるはずだ。(ちなみに米国は、「民主主義」など建前を命がけで守ることを美徳とする伝統があったと思うが、今はすっかり建前をかなぐり捨てて、本音むき出しに成り下がってる。)
それにしても、今回の改選で退任(再任拒否)された委員は、みなさん「慎重派」だとのこと。その一方で米国通商代表部(USTR)は31日、貿易相手国・地域の問題点を指摘する「外国貿易障壁報告」2006年版(2006 National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers)を発表し、早期の輸入再開とともに、次段階として国際標準に基づいた輸入基準の採用、つまり輸入対象の牛を現在合意されている「生後20か月以下」から「30か月以下」に緩和するよう求めてきている。日本の措置を「貿易障壁」と呼ぶ以前に、自分の国の杜撰さこそ「内なる貿易障壁」として認識しろよといいたくなるゴーマンさだが、今回のプリオン専門調査会改選で、こちらのハードルがますます低くならないといいのだけど。。。新しい委員の皆様、がんばってくださいよ。
春の改選?
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