日本の国際貢献と小泉首相の国連演説

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ここ数日、国連総会や飢餓貧困撲滅会議の話題をめぐって、日本政府の態度に批判的なエントリーを書いてきたが、それだけだと一面的なので、自分自身の考察のためにも、日本政府の国際貢献、とくに途上国支援に関する外務省の「外交政策」のページにある情報へのリンクを記しておきたい。

  • 国連: 貿易や食糧の問題は、途上国支援や途上国と日本の関係を考えるうえで最重要課題なので注目。
  • 経済: ここには世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力(APEC)など、貿易や国際協力に関するものがある。
  • 難民: 先進国で最も難民受け入れが厳しいといわれる日本政府のポジションはいかに?
  • 人間の安全保障: 日本は、外交政策の柱の一つとしても人間の安全保障を掲げ、故・小渕元総理、森前総理がイニシアティヴを取り、「人間の安全保障基金」を99年に設置。(そういえば小渕さんは対人地雷全面禁止条約への取り組みをライフワークとして尽力されたんだっけ。)
  • ODA: ODA(政府開発援助)は、日本の途上国支援の主軸である一方で、国内の公共事業にも共通するいろいろ深刻な問題点が、開発NGOなどからは指摘され、インドネシア住民によるコトパンジャン・ダム訴訟のようなことも起きている。また借款型の援助では、途上国債務が増え、IMFや世銀の政策とあいまって、逆に被援助国の自立的発展を妨げ、余計に債務を増やす悪循環の問題も指摘されている。また借款であるかに否かにかかわらず、これは国家財政からの出費であり、国内財政とのからみの問題も大きい。
  • 環境: 環境問題も途上国関連では大きな問題。地球温暖化問題では、NGOサイドからは日本はアメリカ、カナダ、オーストラリア、産油国とならぶ抵抗勢力として度々非難されている。小生としては、関連する各省庁の審議会等の議論の分析も含めて、日本政府のポジションや展望をちゃんと分析したいところ。

とりあえずこんなところだが、今後も、関連する省庁や機関、資料などへのリンクを集めてみたい。
ところで、人間の安全保障やODAにしても、日本としてかなり力を入れているわけだが、その一方で、たとえば、森前総理が人間の安全保障基金を提案した2000年の国連ミレニアム・サミットでは、アメリカとともに通貨取引税(トービン税等)の提案に反対している。通貨取引税は、通常の金融取引市場から税収を得るもので、国家財政からの支出をしなくていい制度だ。しかも税率は0.1%とか、あるいは今年7月にベルギーの下院を通過した法案では0.02%という超低率で、為替相場へのインパクトを少なくすることも意図されている(同法案はその後上院に上程されている→ベルギー議会の法案審議状況と上程された法案テキスト(PDF))。また、ある種の「飴」として、先進国であっても、税収の一部を財政補填に使ってもいいのではないかという議論もある。途上国の累積債務解消に使えば、多大なODA支出している日本にもお金が戻ってくることになる(まぁ、そうでなくてもODA事業を受注する日本企業には還流してるという話もあるが)。国家財政逼迫の中、日本としても乗れる話だと思うのだが、どうなんだろう?電子政府の総合窓口でいろいろ関連するページを検索してみても、技術的な問題点が上げられている程度で、それ以上のことはわからない。
ちなみに、先日の国連総会での小泉首相の演説も外務省のサイトで見つけた。

第59回国連総会における小泉総理大臣一般討論演説: 新しい時代に向けた新しい国連(「国連新時代」)(仮訳)(英語版)

読んでみると、安保理改革や常任理事国入り、テロ対策云々ばかりでなく、ミレニアム開発目標や上記の人間安全保障への取り組みのことや、アフリカ開発会議(TICAD)のこともちゃんとアピールしてる。これを被援助国側、とくにその一般民衆がどう受け止めるかは分からないが、アピールすべきことはしている(この期に及んでなお、イラク戦争支持は正しかったなんて言ってるのは噴飯物だが)。でも、それならば、飢餓貧困会議や「グローバリゼーションの社会的次元」の会議にも、せめて川口外務大臣を出席させて欲しかったし、さらにいえば、この方面(国際税の導入など)でも日本がちゃんと貢献していって欲しいなと、一有権者としては思うのである。国家財政出動を要する人間の安全保障基金の設立までやっているんだから、国際税なんか、もっとたやすくできるように思うのだが、詳しい背景をぜひ知りたいと思う。

 

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