米国BSE飼料規制―産経新聞の大誤報

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昨日、ちらっと見かけて、「何、血迷ってんの?」と目が丸くなった産経新聞の記事。米国BSEオタの人にはすぐ分かる事実誤認です。

BSE対策を米が強化へ 家畜のエサ規制ミラー
【ワシントン=気仙英郎】ジョハンズ米農務長官は三十日の電話会見で、米国のBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の追加対策として、家畜のエサに関する規制を強化し、牛の危険部位を含まない肉骨粉についても、豚や家禽(かきん)類のエサに使用しない方針を明らかにした。今後、一、二カ月中に実施する。
 米国は一昨年十二月に米国初のBSE感染牛が発見された後、牛の脳や脊髄(せきずい)など感染源の恐れのある特定危険部位を、すべての動物の飼料やペットフードに使うことを禁じた。今年六月に二例目のBSE感染牛が見つかったことで、一段と強化する。・・・(強調引用者)


問題の記述は太字部分。「・・・すべての動物の飼料やペットフードに使うことを禁じた」って、それはウソです。昨年7月にFDA(食品医薬品管理局)が提案したけど、飼料業界の反発もあって、まだ実施されていない話。「一昨年十二月」に決められ、現在行われてる規制の中身については、日本の食品安全委員会プリオン専門調査会の過去の資料にも、EUや日本と比較しながら、ちゃんと書いてある。

第5回プリオン専門調査会
資料2:国際専門家による米国に対する勧告と各国のBSE対策の比較[PDF]

これに書いてあるように、米国では、「動物から反すう動物(牛、羊、山羊など)への給与禁止」としかなっていないので、反すう動物以外の鳥や豚、ペット類には与えてもいいことになってる。だから、昨年の日米専門家及び実務担当者会合(WG)の報告書でも、牛の肉骨粉を含んだ鳥・豚用のエサが、牛のエサに混じる交差汚染が問題になっていたわけだ。
ちなみに、この件についてはもっと詳しく、北林さん@農業情報研究所が書かれているので、そちらをどうぞ。

農業情報研究所
米農務長官が肉骨粉全面禁止の方針表明とマスコミ報道 大新聞は不明を恥じよ

 

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4件のコメント

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    ==============
    ■標題 : BSE・CWD問題について ソ…

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    http://www.fsc.go.jp/senmon/prion/index.html
    それがUPされるまでということで、簡単な感想を書こうと思います。今回は、たたき台案がいくらか進行していました。トピ…

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