ぜひとも英語で世界発信を―民間憲法臨調提言

投稿者:

これもPCトラブル中に見つけて気になっていたニュースですが、いやー、さすが「有識者」というべきスンバラシイ提言です。

憲法3原則の再検討を(共同通信)
 憲法論議の活発化などを目的とした「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(民間憲法臨調、三浦朱門代表世話人)は3日、提言を発表した。憲法3原則の国民主権と平和主義、基本的人権の尊重などに関し「憲法の目的がより良き国家の形成にあり、諸原則はその実現のための手段である以上、いたずらに聖域視することなく、正しい把握と再検討が必要だ」と主張している。[共同通信社:2005年05月03日 19時30分]


このスンバラシイ提言「国家のグランド・デザインを描くなかから新憲法の創出を」は同懇談会のHPにアップされています。
--> www.k3.dion.ne.jp/~keporin/katudou/teigen02/f-170503.htm
この提言のスンバラシさは、その最初のセクション「新しい憲法概念の確立を」の冒頭(下記参照)にも現われています。(あふれでる痴、もとい知性ってやつ?)

① 近代立憲主義の憲法観においては、憲法を国家対国民の対立関係を前提にして、国家の行動を規制するものと概念づけてきたものが少なくない。発表されている諸憲法試案のなかにも、このような憲法概念にとらわれているものが見受けられる。しかし、まず国家には、統治機構としての国家、すなわち政府という意味だけではなく、歴史的文化的共同体としての意味もあり、この両者は明確に区別されなければならない。わが国には、代議制民主主義のもと、政府が国民の代表によって組織されており、両者は、ともによりよき国家を形成するための協働関係にある、とみるべきである。
 具体的には、国家とそれを構成している個人、家族、共同社会(コミュニティ)、地方自治体、および政府が、よりよき国家の形成を目指して、それぞれの役割を演ずるための基本的な法的文書と概念づけるべきである。新しい酒は、新しい酒袋に入れられなければならない。

あいや~、まことにスンバラシイ。現行憲法99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」に体現された立憲主義のイロハを真っ向から否定してみせて下さるとは。ちなみに、その立憲主義から言えば、憲法によって縛られるべき対象は「統治機構としての国家」のはずなんだけど、有識者さんたちは、「国家には、統治機構としての国家、すなわち政府という意味だけではなく、歴史的文化的共同体としての意味もあり、この両者は明確に区別されなければならない」と書きつつ、両者を見事に混同させることで立憲主義をひっくりかえそうとなさっているわけだ。すごいよ、さすが「有識者」さん!政府と国民が「よりよき国家を形成するための協働関係にある」というのは、ありうべき理想。ところが実際には、その理想は、統治権力の逸脱・腐敗・暴走の可能性によって常に脅かされているから、憲法という最高法規によって権力を縛るのが立憲主義なんだけど、逆に国民の側を統治権力に合うよう縛ることで、理想を実現しちゃおうというわけね。うーん、さすが「有識者」さんたちだ。逆転の発想、コロンブスの卵、ってやつ?
ちなみに先日公開された衆議院憲法調査会報告書にも示されているように、同調査会でも99条が定める「憲法尊重義務」をめぐって、公務員だけでなく国民一般も含めるべきか否かで意見が対立している。有識者さんたちだけでなく、自民党改憲派の議員の皆さんたちは、当然、国民も憲法で縛る対象にしようと考えていらっしゃる。それどころか、さらに一歩踏み込んで、99条を含む憲法「第10章 最高規範」そのものをごっそり削除して、憲法概念の大革命を提言されている。スゴイとしかいいようがないね!なんてステキな頭脳なんだろうとウットリしちゃうぞ。(参考:「寝言ならいいけど・・自民憲法改正案つづき」「茶色い憲法―自民党憲法改正・論点整理案の全文」
それにしても、そのスンバラシイ有識者さんたちが集っていらっしゃる民間憲法臨調さんのHPって、英語ページが見当たらない。これって、すごくもったいないのでは?「有識者」さんなんだから、英語くらいサラサラーっと書けますよね(ね?)。たくさんの人に支持されて、資金も潤沢でしょうから、翻訳会社に外注することもできるでしょうし。ぜひとも、有識者さんたちのスンバラシイ「提言」を英語に翻訳して、堂々と世界に発信していただきたいものです。有識者さんの中には、政治学者の方々もいるようですし、ぜひぜひ堂々と、政治学や憲法学の国際学会でも披露していただきたいです。
同じ日本人として、一緒に、世界の嘲笑と侮蔑の屈辱を味わってさしあげるから。
<追記1>
最初、上記の部分は正面からコキおろしてたんだけど、ちょっとそれだと面白くないんで、ホメ殺しに書き変えました。
 それと、Googleの自動翻訳というのがあったのを思い出した。http://www.google.com(英語版)で”「21世紀の憲法と日本」有識者懇談会”を検索して、”Translate this page”をクリックすれば、すぐに英語版の出来上がり。(機械翻訳だから変な英語になっちゃうけど。)
http://216.239.37.104/translate_c?hl=en&u=http://www.k3.dion.ne.jp/~keporin/katudou/teigen02/(以下略)
<追記2>
痔民党改憲案では、「国民は家庭の保護に努めねばならない」なんて、余計なお世話のことまで盛り込まれてるようだが、それを書いている同党の憲法調査会憲法改正案起草委員会には、政界失楽園の片割れやバツ2元学者の方もいらっしゃるのは片腹痛しだな。
これと同様に、「基本的人権の尊重という語が一人歩きし、利己主義の横行を産み落とし、個人の尊重が絶対視され、社会の秩序や家族の和および絆が消失されようとしている」(上記提言より)なんて言ってる側こそ、公共性に寄生し、それを蝕んできた張本人じゃないのか?

 

1つ星 (まだ評価がありません)
読み込み中...

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください