EU科学技術政策に対する嘆願書

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国際サイエンスショップ・ネットワークLiving Knowledgeのメーリングリストで、EU科学技術政策に対する嘆願書(petition)への署名のお願いが回ってきた。発信者は、同ネットワークのコアメンバーであるフランス市民科学基金(Fondation Sciences Citoyennes, France)代表のClaudia Neubauerさん。
フレームワーク・プログラム(FP)とは、欧州委員会研究総局(DG Research)が担当している欧州連合の科学技術政策の研究助成プログラム。現在進行中の第6次FPのもとでは、まだまだ不十分とはいえ、科学技術や持続可能な開発に関わる政策決定への市民参加や、リスクガバナンスも含めて、科学技術と社会のよりよい関係構築に関する研究や実践が積極的に進められてきている。その成果は、小生ら日本のSTS研究者にとっても有益であるだけでなく、多かれ少なかれ、日本の科学技術政策にもプラスの影響を直接・間接に及ぼしているといえる。そのFPが、2006年からスタートするFP7(第7次)で、「先祖返り」というか、産業競争力増強や軍事力関係にかなり偏ったものに――もちろん今までもそうだが、それ以上に――なり、科学と社会関係に予算が大幅に減ってしまうらしい。嘆願書はこれに対抗し、科学技術の開発や利用を、持続可能性や社会正義をより重視したものにすべきことを求めるものだ。
Claudiaさんに問い合わせたところ、EU諸国以外からの署名も大歓迎とのこと。いうまでもなくEUは巨大な経済ブロックであり、その科学技術政策や産業政策の動向は、日本やその他世界の動向に大きく影響を及ぼします。趣旨にご賛同の皆さん、ぜひどうぞ。(署名は個人または組織としてできます。)

署名キャンペーンのサイト http://www.essfnetwork.org/campaigns.html

以下はClaudiaさんの呼びかけメールと、嘆願書趣旨のショート・バージョンの訳です。


親愛なる皆さん
私たちは、最近、NGOの非公式のネットワークとして設立された「ヨーロッパ科学社会フォーラム(European Science Social Forum)」です。現在、第7次フレームワーク・プログラムについてキャンペーンを行っています。
欧州委員会の研究開発プログラムである第7次フレームワーク・プログラムは、2007年1月からスタートし、おそらく7年間(現在のものよりずっと長い期間)続き、予算額はおそらく400億ユーロ(約5兆4000億円)になります。
欧州委員会や欧州議会からのFP7に関するあらゆる通達や報告書が示唆するところによれば、科学と社会に関する問題、あるいは持続可能な開発に直接関係する問題(たとえば、低投入の持続可能な食糧生産、責任ある資源利用、紛争と社会過程、社会的責任のある研究プロセス、疾病に対する統合的アプローチなど)に対する予算は非常に小額なものになりそうです。大部分の予算は、ゲノム研究/バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、宇宙開発、安全保障、原子力研究、ITに振り向けられています。
このため私たちは、将来の研究の優先順位付けとそれらが描く社会ヴィジョンを批判的に分析し、それに代わるプログラムとヴィジョンを提案すべく、欧州全体に嘆願を呼びかけています。
私たちが皆さんにしていただきたいのは、次のことです。
1. できるだけ早く、嘆願書に署名してください。
2. 皆さんの周りにできるだけ広く情報を広めてください。

  • 組織としても個人としても署名できます。
  • 嘆願書と署名フォームはwww.essfnetwork.orgにあります。

私たちは、欧州議会と欧州委員会研究総局のコミッショナーPotocnik氏に、委員会がFP7の最初の公式ドラフトを提出する4月6日より前に、手紙を送ります。
ご関心とご支援、ありがとうございます。
敬具
Claudia Neubauer, coordinator Fondation Sciences Citoyennes, France


第7次フレームワーク・プログラムを、より持続可能性と社会正義に関与させるためのキャンペーン
嘆願書全文(英文)はこちら
 
欧州連合(EU)のフレームワーク・プログラム(FP)は、4-6年間にわたって、さまざまな研究分野に予算分配をするガイドライン文書であり、EUによって優先的に助成されるテーマや重要テクノロジーを定めるものである。
 現在EUは、2007年から2013年までの第7次FPを起草中である。FP7はまだ公表されていないが、明らかに、産業競争力や企業の利害に大きく影響を受けたFP6の精神を継ぐものになるだろう。それに加えてFP7では、「欧州の安全保障」という新しいコンセプトを反映して、軍事的関心が影響してくるだろう。
 ヨーロッパ科学社会フォーラム(ESSF)は、欧州は、より良い、もう一つの研究アジェンダが可能だと考えている。それゆえ、社会福祉と環境の持続可能性、世界正義を達成する科学技術の進歩のもう一つのモデルを表すガイドラインを提案する。

 

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