今回の参院選結果には、かな~りガックリしてしまいました。結局、民主50に対し、自民49、公明11。おいおい、ナニ考えてんだよ、と思うような結果。このままいくと、あと3年も選挙がないと思うと気が遠くなりそうですが、こうなったらあとは、とりあえず公明党支持者のお友達を作って、事実を伝え、政権の内側から揺さぶりをかけるのが第一歩でしょうか(笑)。実際、自民党自体の基礎体力はガタガタ、公明党という生命維持装置なしにはやってけないことがますますはっきりしてきましたから。
ところで日本の政治がこんな状況にある一方、海の向こう、ベルギーでは、実に画期的な法律が今月1日に下院を通過したようです。
発案者の名をとって通称「トービン税」とも呼ばれる為替取引税(CTT)を、他のユーロ圏諸国も導入するならばという条件つきながらも導入するという法律です。詳しくは、下記に引用した英紙Guardianの記事にありますが、為替取引きに非常に低率ながらも課税することによって、時に一国の経済を破壊しかねない為替の急変動を抑制すると同時に、その税収を、世界、とくに途上国の貧困問題や環境問題の解決に役立てようというものです。ATTAC(市民の助けのために為替取引に課税を求める協会)をはじめとする世界のNGOだけでなく、「トービン税を求める世界議員(World Parliamentarians Call for Tobin Tax)」という欧州を中心に33ヶ国から800人以上の国会議員が署名している組織も求めてきたものです。欧州連合(EU)の欧州議会でも法案提出への努力が進められているそうです。
まだまだ世界に目を向けない――かといって日本国内の現実も見えてない?――議員が多い日本では、このままいくと、トービン税の議論が永田町界隈で始まるのは「もしかしたら来世紀?」と思うくらい絶望的な話ですが。。まぁ、まだ「歴史を変えるゲーム」は始まったばかり。攻めてくるキナクサ・オヤジたちに対して、守りに入るのではなく、あくまで攻めの姿勢でボチボチいきましょう。
ちなみにトービン税は、それを導入する主な主体である先進国の住民にもメリットがあるように、社会保障や環境保護・改善などの目的――日本だったら年金財源や再生可能エネルギー開発資金として――に限って、税収の一部を先進国でも使えるようにするというアイデアもあるようです。途上国援助の方法としても、税金や郵便貯金の一部が投入されつつも、えてして不良債権化してしまう――しかし大部分がしっかりTokyoやOsakaの大手ゼネコンに還流するという国内公共事業と同じ仕掛けの――ODA(政府開発援助)とは違って、先進国の庶民にとっても実はオトクな方法です。
“Belgium clears path to developing world prosperity”
ベルギーが途上国の繁栄への道を切り開いた
デービッド・ヒルマン 2004年7月5日(月) ガーディアン紙
トニー・ブレアはアフリカを、世界の良心の「きずあと」と呼ぶ。ゴードン・ブラウンはそのきずあとを治す方法として、援助を倍に増やそうとしている。この大蔵大臣は国際資金支援制度(IFF: International Finance Facility)がたった一つの方法だと言うが、今のところ、このチームは楽屋で足止めをくらったままだ。先週、ベルギーはこれとは違うアプローチを試みた。何十億ドルもの税収入が世界の最も貧しい人々の利益のために使われる道を切り開く、為替取引税(CTT)のための法案を通したのだ。CTTは二つの大きな成果を達成するための青写真だ。第一に、2015年までに世界の貧困を半減させるというミレニアムの公約を果たすための重要な収入源を、各国政府がどのように確保できるかという方法を示した。第二に、しばしば貧困の原因となっている金融ショックを抑制するしくみを、CTTは含有している。この二つの目的のためには別々の税率が必要となるため、ベルギーのこの法律は初めての試みとして二層の税率からなる税を定めている。
普段の取引状況の中では、援助のための収入を創出することを目的として、CTTの税率は低い。これは0.01%の範囲で、全ての為替取引の決済がされるごとにその時点で徴収される。しかし、通貨の価値が急激に変化した時には、二つ目の税率が適用される(最大80%にもなる)。この懲罰的な税率の下では、為替取引を行っても利益が出ないため、売買遮断システムの役割を果たし、通貨の暴落を防止する。このような反投機的なしくみの必要性は、6年前のアジア危機で明らかになっている。国際労働機関によると、このとき世界中で1000万人の仕事が失われた。
為替取引は世界で最も儲かる取引だ。毎日1兆ドル分以上のドル、ポンド、ユーロ、円が取引きされている。有価証券取引税(Security Transaction Taxes)は金融システムの一部となっており、G10のうち6カ国で徴収されている。このうちの一つとしてイギリスでは、0.5%の印紙保留税(Stamp Duty Reserve Tax)が徴収されており、2001年には大蔵省の収入45億ポンドを生み出した。
CTTの二つ目の税率は、1987年の「暗黒の月曜日」の株価暴落の後に、ニューヨーク証券取引所に導入された、売買遮断システムと概念的には同じである。現代では、株価が急激に下落した場合、その会社の株式の売却は自動的に一時停止される。ベルギーのCTTの構成要素は、社会の主流の考え方に基づいているのである。
先週ベルギーで通されたこの法律の非常に重要なステップは、このような税を実行可能にするには、巨大な規模ながら薄いマージンにおいて機能する市場に合うように、十分に低い税率を設定しなければならないということが認識されたことだろう。為替市場が電子化されており、今ではほとんどの取引が集中的にCLS銀行を通して行われているため、この税の徴収は非常に少ない費用で効果的に行うことができることを、ほとんどのコメンテーターが認めている。
ベルギーにおける進展をかんがみて浮かぶ重要な疑問は、「なぜイギリスでも同じことをしないのか?」ということだ。大蔵省は、国連のミレニアム開発目標を達成する資金を得るために、新たな収入源が必要だと認めている。開発資金を創るために、最も富裕な国々がグループとなって銀行からお金を借りるというIFFを、同省は強く推進している。しかし、米国、ドイツ、北欧諸国に、このようなイニシアチブに対する意志が欠けていることは明らかだ。IFFはうまくいったとしても、部分的に成功する程度にとどまるだろう。もし世界の貧困に対する取組みについてのゴードン・ブラウンの感動的な言葉が、単なるレトリック以上のものであるのなら、少なくとも必要額の一部を準備するために、今こそ為替取引税制を導入すべきだろう。
(注)
トービン=スパーン税:トービン博士とスパーン教授の2人の名前を冠した国際税。トービン博士(02年逝去)はノーベル経済学賞受賞者であり、スパーン教授はフランクフルト大学教授で金融学の専門家である。トービン博士のアイデアは一段階の税率をかけるというものだが、これを下敷きに二段階の税をかけて南北問題に援用しようと提唱したのがスパーン教授である。
来週は、ボストンで、ATTACベルギーのメンバーでもある友人と会う予定なので、いろいろ話を聞いて期待と思います。
(追記)
ベルギー議会の同法案の審議状況データを見ると、法案は7月2日に上院に上程されている。(フランス語でのこの手の表記の解釈がよくわからないのだけど、10月11日が審議開始期限になってるのかな?)その上程された法案テキスト(PDF)の第8章8条によると、上記のガーディアンの記事で「0.01%」とある税率は0.02%(0.2 pour mille)でした。
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