水曜日からバンクーバーに来てました。北米の科学技術論の学会 Society for Social Studies of Science (4S)の年会に参加するためです。会議は明日(日曜)昼まで続きますが、火曜1限から講義があるので、明日早朝で帰国。あと4時間ほどでホテルをチェックアウトします。
今回は自分の発表はなかったのだけど、4Sは久々で、北米での研究動向が知りたかったのと、ナノテクの社会的分析に関する国際ネットワーク(International Nanotechnology and Society Network (INSN))のミーティングがあるということで参加することにしました。INSNの会合は、8月に参加したEASST (European Association for Study of Science and Technology)の会議でもあったのだけど、今回は北米方面のメンバーの集まり。
INSNも含めたナノテク関係のミーティングは3つ。一つは会議1日目(11/2)のランチタイム・ラウンドテーブルで、現在企画中のプロジェクトの紹介などが中心。2つめの会合はその日の夕食。これはほとんど顔合わせの食事会。(日本からの参加者は自分だけ。)そして3日目の今日の夕方は、米国のメンバーが計画中のナノテクに関するコンセンサス会議などのパブリック・エンゲージメントに関するもので、米国だけで閉じず、その他の国とも平行して何かできないかというもの。
ちなみに最初の会合が終わったとき、こちらが日本人と判ってか、隣にいた老紳士が話しかけてきたのだけど、なんとその方は、この業界では70年代から有名なジェローム・ラベッツ氏だった。(「老紳士」といっても、見た目はまだ60台初めに見えるくらい若々しい。)初期の彼の主著『批判的科学―産業化科学の批判のために』の邦訳が出たのが77年。90年対以降、特に近年は、「ポスト・ノーマルサイエンス」という概念を打ち出したことで有名で、今回聞いた発表の中にも、この概念を参照してるものがあった。最新著はThe No-nonsense Guide to Scienceという科学(論)入門書で、学会会場でも、著者割+著者サインつきで売っていました。(もちろんサインしてもらって買いましたよ。)おしゃべりのなかでは「非暴力の科学というのを考えてるんだ」というのが印象的でした。
ラベッツ氏は喋りだすと止まらないタイプの方のようで、今日の午前中の彼のセッションに参加した友人の話では、他の報告者が全員欠席だったため、1時間以上にわたって雑談交じりに喋り続けたとのこと。86年に日本に行ったとき、奈良で阿修羅像を見て驚いた話までしてたそうな。(これは1日目のおしゃべりのときも言ってました。)
それと今回の会議では、韓国の黄教授によるES細胞捏造事件をテーマにした韓国の研究者たちによるセッションがたくさんありました。けっこう欧米人の聴衆もたくさん参加してて、人気を集めたセッションでした。
ちなみに4Sは、2010年に日本で、日本のSTS学会と合同で会議をやることになっています。今回の会議で開かれた理事会で決定しました。場所は東京、日程は8月26日から28日まで。理事の一人である東大のF垣さんが、「その時期はめちゃくちゃ蒸し暑いよ」と散々忠告したそうですが、「せっかく日本に行くんだから、一週間はいたい。長く出張できるのはその時期しかない」と押し切られたそうです。その「一週間」には、当然「京都観光」なども含まれてるわけですが、あまりの蒸し暑さに倒れる人が出ても、知りませんよ~。
さて、そろそろ出発3時間前。一眠りすることにします。
今回の滞在期間中は初日を除いてずっと雨のバンクーバー。観光する時間はまったく取れなかったけど、食事も美味しかったし、なかなか満足できた学会出張でありました。