「人間の豊かさ」指数下落と政府統計情報操作の疑い

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昨日拾ったニュース。

「人間の豊かさ」指数、日本はベスト10から転落 2005年09月07日22時40分
 国連開発計画(UNDP)は7日、世界各国の開発の現状をまとめた05年版「人間開発報告書」を発表した。日本は健康、教育など「人間の豊かさ」を測る人間開発指数で177カ国・地域中11位(前年は9位)と、初めてベスト10から転落した。女性の政治・経済分野への進出度を示すジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)は43位と、先進国では極端に低かった。
 人間開発指数は平均寿命や就学率、1人あたり国内総生産(GDP)などをもとに測定。日本は調査が始まった90年と91、93年は1位だったが、バブル崩壊による経済の低迷で徐々に順位を下げ、00~04年は9位だった。1位は92年と94~00年がカナダ、01年からは5年連続でノルウェーが占めている。 ・・・

報告書本体は、UNDPのサイトからダウンロードできる。
今回下がったのは、記事によると、「日本は他の先進国に比べ、社会人が大学に戻る例が少ないなど生涯教育で得点が少ないこと」が要因だという。でも長期的には、やはりバブル崩壊以降の景気低迷が原因になっているようだ。
ところで、景気に関しては、折りよく衆院解散翌日に、竹中経済財政担当相が「景気は踊り場的状況を脱却した」と記者会見で発表したわけだけど、これに関連して、選挙の争点隠しを狙った「情報操作」と思われかねない動きがある。


「小泉マニフェストは『官僚の作文』だった『丸投げ指示文書』スクープ入手!『官から民へ』は真っ赤なウソ!」という見出しに釣られて買った今週の『週刊ポスト』に、こんな記事があった。

「選挙前にはとても明かせない」と発表延期へ
内閣府が封印した「日本経済崖っぷち」データ

記事によれば、各省庁調査部門で、選挙戦のさなか、「景気回復」に辻褄を合わせるために、ひそかに経済統計データの見直し作業が行われたのだという。

「内閣府の上層部から、選挙の投票日までに公表を予定している経済指標がどんな結果になるかのチェックを急ぐよう指示が出た。景気好転を示す明るいデータだけならいいが、悪化を示すデータが選挙直前に出るのはまずい、ということのようだ。発表を遅らせろという内々の指示もあった。」(内閣府幹部)

以下、「疑惑」の統計データに関する部分の要約+補足です。

  • 内閣府経済社会総合研究所景気統計部が、8月10日と9月9日に発表予定だった消費動向調査の公表を延期。(※同研究所のサイトで確認したところ、8月10日分に関しては、一昨日6日に公表されたが、9日公表予定だった8月実施調査結果は公表延期となっている。)
  • 投票日直前にまとめる予定だった4-6月期のGDP成長率2次速報値の公表延期。8月12日に公表されている1次速報値によれば、年率換算した4-6月期のGDP成長率は実質1.1%名目0.0%だが、「GDPの大幅な下方修正が必要だとわかった。4-6月期は名目でマイナス成長になりそうで、7-9月期も原油高騰が響いて大きく落ち込むのは確実。それがわかると竹中さんの景気回復宣言が間違いとなり、選挙に影響が出るため投票日直前にはとても明かせない、と、これね先送りすることになった」のだそうだ。
  • 日本経済研究センター第124回四半期経済予測(2005年7-9月期~2007年1-3月期)でも、輸出減速や原油価格上昇、小泉内閣の定率県税縮小などを理由に、以下のように、06年度のマイナス成長を予測。
    • 景気は06年度にかけて減速に向かう可能性が高い
    • デフレ解消の目処はつかないままである
      (※以下は同予測の要約からの抜粋。強調引用者) 「2005 年4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率換算で1.1%となった。1~3月期の高成長(同5.4%)には、2004 年10~12月期の成長率が自然災害などの影響で下振れしたことの反動が含まれていた点も考慮すれば、実勢としては底堅い成長が続いたと言える。こうした中で「景気は踊り場を脱却した」との見方が広がりつつあるが、今回(第124 回)の四半期経済予測の結論としては、足元の堅調な成長率は長続きせず、景気は06 年度にかけて減速に向かうとのシナリオを得た。成長率の予測値は05 年度1.7%、06 年度0.9%となった。・・・こうしたことから、景気は06 年度にかけて減速に向かう可能性が高い。このため、足元ゼロ近傍まで縮小しているGDPギャップは、06 年度にかけては再びマイナス幅を拡大させる。消費者物価指数(全国、食品を除く総合)も、05 年度後半には石油製品価格の上昇などから一時的にプラスに転ずるが、06 年度は再びマイナスとなる見込みで、デフレ解消の目処はつかないままである。06 年度の名目成長率はマイナス0.1%と予測した。」

ちなみに、消費動向調査の公表延期の理由としては、先日報じられた調査委託先の会社「(社)新情報センター」の不正が指摘されている。そういう意味で、選挙対策として公表延期したのではないと見ることもできるが、上記のような「内閣府幹部」の話が事実だとすれば、それも後づけの理屈のように見えなくもない。
また、新情報センターは、総務省統計局から委託の家計消費状況調査も受け持っていて、こちらも、不正がなかったかどうか調査するという理由で、6月分確報、7月分速報、7月分確報の公表が延期されている。(参照: 総務省統計局「家計消費状況調査及び家計消費指数の公表延期について(2005/9/1)」)ちなみに、この新情報センター、「社団法人」ということで、総務省統計局からの天下り先のようである(参照: kitanoのアレ: 総務省不祥事:家計消費状況調査公表先送り:選挙の争点隠し?)。委託元と天下り先の団体が共謀しているのか??なんて想像がムクムク沸いてくる構図だ。
なお、内閣府による監査では、消費動向調査には不正はなかったとのこと。その結果6日に公表された平成17年7月実施調査結果では、一般世帯、単身世帯ともに、消費者態度指数が前月と比べて上昇しているとされている。

平成17年7月の一般世帯の消費者態度指数は、前月差1.5ポイント上昇し48.1であった。これは、「収入の増え方」が前月差で上昇したのを始め、「暮らし向き」、「雇用環境」及び「耐久消費財の買い時判断」の全ての意識指標が上昇したことによるものである(第1表、第3表-1参照)。
また、単身世帯の消費者態度指数は、前月差1.2ポイント上昇し48.4となり、総世帯でも前月差1.4ポイント上昇し48.2となった(第1表参照)。
なお、東京都の消費者態度指数は前月差0.9ポイント上昇し48.4となった。これは、「暮らし向き」が前月差で上昇したのを始め、「収入の増え方」、「耐久消費財の買い時判断」及び「雇用環境」の全ての意識指標が上昇したことによるものである(第1表-参考、第8表、第9表参照)。

これ見ると、「お、消費者の状況もよくなってるんじゃん」という気がしてくるが、しかし、ここで使われている消費者態度指数の「上昇」という表現は、kitanoのアレさんも指摘されているが、実はけっこうクセモノだったりする。よくわかる!金 融 用 語 辞 典によれば、消費者態度指数とはこんな数値だ(強調引用者)。

消費者態度指数とは、今後半年間における消費者の意識を表す指標です。「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の4項目が今後半年間にどう変化するのか、消費者の考え(意識)を調査します。
 「良くなる(1点)」、「やや良くなる(0.75点)」、「変わらない(0.5点)」、「やや悪くなる(0.25点)」、「悪くなる(0点)」の5段階評価で回答してもらい、点数を加重平均して指数にします。指数が50以上なら今後半年間の見通しは良く、50以下なら見通しは悪いということになります。

つまり、「前月差1.5ポイント上昇し48.1」という結果が意味しているのは、「今後半年間の見通しの悪さが1.5ポイント改善されたとはいえ、見通しが悪いというのは相変わらずである」ということだ。また、同じく統計局の家計調査平成17年4~6月期平均速報(8/12発表)を見ても消費支出は減少気味。竹中大臣が「踊り場脱出」を宣言した8月の月例経済報告では、この理由を「これは贈与金や仕送り金といったその他の消費支出の減少による影響が大きいためと考えられる」とし、「先行きについては、雇用情勢の改善が家計の所得改善につながっていることから、個人消費の増加が続くことが期待される」としているが、どこまでこの解釈は正しいのだろう?上記の日本経済研究センターの経済予測を考慮すると、けっこう危うい予測であるように見えてしまう。
まぁ、情報操作疑惑は置いておいたとしても、どうも信じられないんだよなぁ。。

 

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2件のコメント

  1. まるで旧ソビエトってことですね。まあ、ソビエトよりずっと巧妙だけれど。

  2. ryoさん、こんばんは
    実は、私も書きながら「プラウダ」という言葉が頭をよぎりました。

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