いろいろな意味で、アホとしか思えないこの感覚。
中学生向け英再処理施設見学 事故説明せず募集 日本原電 (朝日新聞 2005年05月26日)
日本原子力発電の原発がある福井県敦賀市と茨城県東海村の中学生計10人に今夏、英国の核燃料再処理工場などを訪問してもらうツアーを、同原電が計画している。ところが、目的地の再処理工場では4月に使用済み核燃料の溶液が大量に漏れる事故が起きたばかりで、操業停止の状態。同社や系列の財団が5月16日から市と村の教育委員会を通じて募集を始めたが、事故についての説明は一切なく、両市村教委は「事故のことは知らなかった。状況を聞いて対応を決めたい」と困惑している。
日本原電と系列の財団法人は、敦賀市と東海村の中学生を対象に、英国に約10日間派遣する事業を03年から2年に1度実施し、今年で2回目。旅費は1人30万円以上かかるとみられ、10万円は参加者が負担し、残りを日本原電が補助する。・・・・
・・・この事故について日本原電は両市村教委に一切説明していなかった。両市村教委は「事故が事実かどうかなどを確認したうえで今後の対応を検討したい」と話している。日本原電は「外部への放射能漏れはないと聞いているので問題はないと考えている。市村教委には今後説明したい」としている。
日本原電の工学者的な発想としては、放射性物質による汚染は工場の無人区域に限定されており、事態はコントロールされているという認識なんだろうが、ウラン2トン、プルトニウム160kgが混ざった50mプール半分分の溶液が漏洩した「事故」――原子力事故のINES(国際評価尺度)ではレベル3(重大な異常事象)で、97年の東海村再処理工場の火災事故と同水準の「事象」――の事実そのものを伏せたままという感覚が、信じられんな。万が一、別の不具合があって無人区域から放射性物質が外部に漏れたりする可能性だってあるわけだし。それで子供が被爆でもしたら、どうやって責任取るわけ?いくらその可能性は低いと考えられるとはいえ、そんなところに全くの素人さんの子どもを行かせるという感覚もどうかと思う。
だいたい、操業停止してるようなところに行って、何を見学させるわけ?「こんな事象(「事故」とは呼ばない)が起きても大丈夫です」とでも説明するのかな?見学なんて来られたら、先方の工場にも迷惑なんじゃないのか?
「一般の人は無知だから原子力を恐がる」とか、コミュニケーション不全を相手のせいにする前に、情報公開とか、他人様の子どもを預かることの責任とか、その「世間離れ」した自らの感覚を一度真剣に疑ったほうがいいぞ。世間では、そういう非常識な人間の言うことは(たとえ正しいことを言ってても)、とりあえず信用しないのが常識なのだから。
ちなみに昨日、「コミュニケーション」に関して、阪大CSCDに行ったら、実に興味深い文章に遭遇。あまりに興味深いので、夏に開く予定の阪大院生向けの集中セミナーの「教材」にすることにした。そんなわけで、今ここでネタばらしできないのだが、良い悪いということじゃなく、とにかく「あぁ、工学系の人はこういうふうに世界を見ているのか」というのがよく分かるうってつけの「異文化体験」テキストである。
それと、敦賀市と東海村の教育委員会が「事故が事実かどうかなどを確認したうえで今後の対応を検討したい」といってるというが、これは、「事故」の事実を隠していた日本原電だけでなく、ほとんど報道しなかったマスゴミの責任でもあるな。
原子力とは全く関係ないが、マスゴミの「無責任」とかコミュニケーション不全といえば、ここのところずっと不満を感じていることが一つある。例の「にっちゅう-やすくに産廃問題」だ(漢字でズバリ書くと、検索で、コイズミマンセーなエセうよが荒らしに来るかもしれないので、こうしておく)。あちらのデモの「異常さ」とか「非礼さ」をアピールし、開き直りとしか思えないジミン糖関係者の発言をバンバン報道する一方で、そもそも何故ちゅうごくが、執拗なまでにシュショウのやすくに産廃を批判するのか、その相手側の言い分を理解する上で絶対に明記されなくてはならない重要文書――河野太郎メルマガ「ごまめの歯ぎしり」2004年12月1日号参照――のことはまったく報道していない。この文書を念頭におけば、どちらの非がより大きいかは明らかだと思うんだけどな。
意図的にムシしているのか、単に無知なだけなのか、いったいどっちなんでしょうか?マスゴミのみなさん?
あと、こちらも興味深い。