障害者自立支援(?)法案

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まーたまたロクでもない法律が準備されているらしい。
LIVE2005ニュースJAPANの特集「揺れる障害者介護(1)-(3)」で取り上げられていた「障害者自立支援法案」。こっちの話題は全然専門外なんだが、いつ自分も障害者になるかわかんないし、気になる話題として、ちょっとリンクをいくつかメモ。ただでさえ収入が少ない障害者に、介護の自己負担を求めるそうで、自立支援というよりは「自立阻害」法になりそうなシロモノらしい。


法案提出の背景には、いまや黄門様の印籠のようなものになりつつある「国の財政難」があるらしい。そのうち、医療保健も自己負担5割、7割とあがり、ついには年金、保険ともにすべて「民営化」されてしまうかもしれないな(で、引き受ける会社はほとんど外資か?)。どっかの国のように、日本でも、収入が少なくて保険に入れず、医者にも行けない人口が全体の2割近くになる日も近い?
ちなみにニュースJAPANでは、法案の問題点の一つに、介護の内容や負担額などの決定が、非介護者(当事者)の細かい事情を無視して、一律かつ機械的にコンピューターに仕込まれたプログラムによる診断で行われてしまうことが指摘されていた。この手の「当事者無視」、「自己決定権無視」の問題の考え方については、次の本がオススメ。

中西正司 ・上野千鶴子『当事者主権』、岩波新書(新赤版860)、2003年

同書の一番のポイントは「自立」という概念の再定義。普通、自立というと、「だれにも迷惑をかけずに、ひとりで生きて行くこと」だと考えられている。これに対し筆者たちは、「自分のニーズは自分で決める」ということこそが「自立」であり、それができている限り、「そのニーズを満たすために他人の力を借りなければならないからといって『自立』していないとは言えない」と主張する。そもそも、誰の助けも借りずに生きている人など、実はこの世にいない。誰もが、多かれ少なかれ他の誰かによってニーズを満たしてもらって生きている「相互依存」が現実なわけだ。この現実から考えれば、「だれからも助けを得ない人は、豊かな人生を送っているとはいえない」と筆者らはいう。そして、次のように書いている。

障害を持った人が、必要な助けを必要なだけ得られる社会は、どんな人も安心して生きていける社会だ。それは、障害の有無にかかわらず、私が私の人生の主人公であることを貫くためである。障害者運動から生まれた「自立」の概念は、非障害者を標準にできあがった、それまでの「自立」観を、大きく変えた。

ちなみにこの自立についての考え方は、以前にここでも紹介したジェレミー・リフキンのEuropean Dream: How Europe’s Vision of the Future is Quietly Eclipsing the American Dream(抜粋要約: Daring to dream by Guardian)で「アメリカン・ドリーム」に対置された「ヨーロピアン・ドリーム」に似ているかもしれない。リフキンによれば、二つの夢の違いで最も際立っているのは「個人の自由」についての考え方である。アメリカ人にとって自由とは、伝統的に「自立性(autonomy)」と結びついていて、「より多くの富を持つようになれば、世界の中でより独立できるようなる」、「独り立ちできればできるほど自由である」というものである。そして「富は排他性をもたらし、排他性は安全をもたらす」。これに対しヨーロッパ人にとっての自由は、自立性ではなく共同性にあり、「所有物(belongings)」ではなく「属していること(belonging)」に関するものだという。そして、こうも述べている。(もちろんリフキンは、ヨーロッパはそれ自身多くの問題を抱えていて、決して理想郷なんかではないということを認識したうえで書いている。)

アメリカ人は、重要な利益と考えるものを守るために、より軍事力に頼ろうとするのに対しヨーロッパ人は、秩序を維持するために外交を好み、経済援助や平和維持活動を好む。アメリカン・ドリームは深く個人的であり、他の人間たちにほとんど関心がない。ヨーロピアン・ドリームは、より体系的で、この惑星の福祉と結びついている。

さてさて、「ジャパン・ドリーム」はいったいどっちに向かっているのだろう?

 

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2件のコメント

  1. 民主党修正案の動向

    ●民主党ホームページ ニュースより
    2005-06-08   当事者の声に真摯に応えるべく「障害者自立支援法案」修正協議へ
    横路孝弘『次の内閣』ネクスト厚生労働大臣は8日、厚生労働省内で記者会見し、同日行われた民主党『次の内閣』閣議を経て決定した「与党と修タ…

  2. 【転載歓迎】<私たちの魂の叫びを聞け!! “1人ひとりの声” プロジェクト>開始しました!

    精神保健福祉法「32条制度」の改悪を含む「障害者自立支援法」は、ついに7月13日、傍聴席からはげしい怒号が飛び交う中、与党(自民・公明)の賛成多数により衆議院厚生労働委員会で可決されました。法案は、15日に衆議院を通過、参議院へ送付されました。
    しかし…

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