Science in Society Forum 2005 (2)

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前のエントリーで紹介したScience in Society Forum 2005の主要4テーマのうち、小生の関心に最も関係する科学・技術と民主主義のセッションの報告担当者(rapporteur)、ウルリケ・フェルト氏(Ulrike Felt, ウィーン大学)のプレゼンファイル[pdf595Kb]を訳出しておこう。


  • 民主的社会の構築にとって積極的役割を果たす批判的な市民性
    • 科学技術の発展に対する反対意見は、無知や反科学的性向に基づくものではない。
    • さまざまなかたちでの公衆による「専門性のテスト」は、堅固な(robust)科学を作るのに欠かせないものであると認識しなければならない。(科学を実験室から社会に移転する際の批判的市民の中心的役割)
    • 科学に対する信頼と合意は、いかなる方法を用いても達成すべき目標として理想化されるべきではない。
  • 知識社会における知識論的市民権(epistemic citizenship)の中心的役割
    • 知識社会は、重要と見なされる知識のタイプの多様化を必要としている。(例: 専門的NGOなどの知識)
    • 公共的問題に関わる科学(public science)において「古典的」な事実と価値の分割は、専門家の知識にも価値観が含まれているため、誤解を招くものである。社会の中にある科学に関する論争は、この世界についての異なるヴィジョンや想像力に関するものなのである。
  • 科学技術の発展を形作ることに市民が貢献できるような社会的空間と局面を多様化させること。
    • 技術革新や医療化は、民主的な「実験的」な――つまり、プロセスのより上流で問題化を行う――実践となるべきである。
    • 公衆の関心は、研究開発がもたらす影響と同じくらい、それを牽引・駆動する目的にも向かっている。したがって、研究開発の私的所有は公共的問題である。
    • ヨーロッパにおける研究は、その課題設定においてより大きな市民社会の役割を必要としている。
  • 民主主義の古典的な利害関係者モデルの批判
    • 公衆(the public)は、自己利益追求型アクターのみに基づいたモデルは、不適切なものだと考えている。
    • さまざまなディスコースや状況で機能する「パブリック(the public)」の複数のモデルを特定し、テストする必要がある。(教条的な答えを期待することなく、この概念を問題化しながら)
  • STSの研究を政策形成によりよく役立てるには?
    • 社会における堅固な科学の条件を特定するSTS。(科学の相対化ではなく。)
    • 科学と社会に関する研究コミュニティは、政策アクターとのより効果的な相互作用を学習する必要がある。
    • 政策機関は、この種の知識をより受け容れやすい文化を作り上げる必要がある。

ちなみにフェルトさんは一昨年末、科学技術振興機構・社会技術研究システムワークショップへの招きで来日している。小生も参加していたプロジェクトのワークショップを一緒にやった後、渋谷のとある豆腐料理店で、「本物の豆腐」をはじめて食べて、いたく感激されていた。ウィーンでも食べたことがあったそうだが、不味くて、最初は「豆腐なんて・・」とか言ってたのだが、美味しそうにたくさん食べていた。

 

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1件のコメント

  1. ウィーンから,知識論的市民権

    ICUの大先輩でもある平川さんのブログ(いつも拝見させていただいています)に初トラックバック.
    ここで言われている,知識論的市民権(epistemic citizenship)は,まさに,前回エントリーのスモール・トークの実践なんかが想定する市民の理念型なのかもしれない.し…

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