ガスパールで久々に贅沢を愉しんで帰ってきたら、ちょうどやってたニュース。
ちくしょう、なんてこった!まさに世界に悪名とどろく「難民鎖国国家ニッポン」。つくづく情けない国だな。
法務省、クルド人親子を強制送還 UNHCRなど抗議(朝日新聞)
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民(マンデート難民)と認められる一方、日本政府には認定されずに支援を求めていたトルコ国籍のクルド人、アハメッド・カザンキランさん(49)と長男ラマザンさん(20)が18日、法務省入国管理局によって母国に強制送還された。日本にいたマンデート難民が本人の意思に反して強制送還されたのは初めて。UNHCRなどが抗議している。
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マンデート難民はUNHCRが、難民条約上の難民にあたると判断した人。UNHCR駐日地域事務所のナタリー・カーセンティ首席法務官は「送還は難民条約に反する。遺憾だ」と話した。
法務省入国管理局は「UNHCRとは難民の解釈や認定の目的も違う。手続き過程で虚偽の申請もあり、送還が相当と判断した」としている。(2005年1月18日)
ここで注目すべきは、最後にある法務省入国管理局の発言。おいおい、日本も難民条約を批准してるんじゃないのか?法律のことはよく分からんが、条約を批准してたらフツー、国内法も条約担保法として立法ないし改正して、条約と整合的なものにするんじゃないのか?「UNHCRとは難民の解釈や認定の目的も違う」とか言ってたら、条約を批准してる意味がないじゃないか。もちろん各国の裁量権の余地というのもあるんだろうけど、いったいどういうことになってるんだろう?
他方、UNHCRは、こうした日本政府の立場を、難民条約の不履行行為、国際法違反とはっきり見なしているようだ。以下はUNHCRのプレスリリース。(太字強調は筆者)
UNHCR、前例のない難民の強制送還に懸念 (2005年 1月18日)
国連の難民援助機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官)事務所は、「UNHCR事務所規程」によって難民と認定されたクルド系トルコ人2名の、前例のない送還について憂慮している。日本政府は、1月18日、UNHCRおよび人権団体からの最後の要請にもかかわらず2名の難民をトルコに送還した。
UNHCRは火曜日、法務大臣に送付した口上書の中で、日本政府に対して難民を送り返さないよう要請するとともに、このような措置は国際難民法上で禁止されている「ルフールマン(迫害を受ける危険性のある領域に人を送り返すこと)」の行為にあたると指摘した。
UNHCRはこれらの難民の第三国定住を求めて方策を講じていると述べてきた。送還されたのは、クルド系トルコ人とその21歳の息子である。妻と他の3人の子どもも同じ処遇に直面しつつある。UNHCRは、送還は国際法上、日本政府に課された義務に反するものであると見なしている。また、今回の送還は、前例がなく、海外にいる難民や災害被災者に対する日本の人道援助とは相容れないものである。
送還された2人には、日本に滞在するための法的な救済措置はすべて尽きてしまっていたが、UNHCRは難民であると見なしていた。UNHCRはこれまで彼らのために介入を行っていた。
今日まで日本政府は、このような難民に対しては、UNHCRの任務に従った日本での定住かケースによっては第三国定住などの恒久的な解決策を追求する可能性をUNHCRに提供してきた。執行された「ルフールマン」は、この慣行からの憂慮すべき逸脱にあたる。
ちなみにUNHCRの日本語サイトには、2002年5月現在の日本の難民保護の状況に関する分析結果がある。近年改善が見られるものの、問題が山積みであることが指摘されている。
それにしても、こうした法務省や入国管理局の中の人たちは、国際法違反ですらあるこういう情け容赦のない行為をいったいどんな考えでやってるのだろうか。強制送還される人たちが本国でどう扱われるかを知った上でなお、「難民なんて絶対受け容れないぞ」という政策上の明確な意思を一人一人がもってやっているのか。それとも、そんな難民の苦境――殺されるという最悪のケースもしばしばある――なんて微塵も考えたり感じたりせず、それが日本の政策だからというだけで、ただ淡々と業務として遂行しているのだろうか。彼らの「決定」が、送還される2人の命を奪うことにつながるかもしれないなどという想像力は、一片もないのだろうか。そうだとすれば、それは、自らに課された職務として、絶滅収容所で、罪悪感など一切感じたりせず、日々淡々とユダヤ人収容者たちをガス室に送っていたナチス高官オットー・アドルフ・アイヒマンのような「思考欠如(thoughtlessness)」(ハンナ・アレント『イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告』)が、彼らを支配しているということだろう。
最後に、上記のUNHCRによる日本の難民保護の状況分析から、UNHCRへの世界第2の拠出国でありながらも、他の先進国と比べて著しく低い日本の難民認定の実態――この国の政府が口にする「人道支援」や「国際貢献」、「国際社会に対する責任」の薄っぺらさとご都合主義的な偏り――を示す数字を引用しておく。
世界150カ国のうち日本の難民数は
対GDP比で136位
対人口比で125位
1000平方Kmあたりで90位
G7諸国における1951年難民条約の適用 2001年の難民認定数
アメリカ 28,300
ドイツ 22,720
イギリス 19,100
カナダ 13,340
フランス 9,700
イタリア 2,100
日本 26
<追記>
私的スクラップ帳さんの「難民クルド人強制送還:国際法にも判例にも反した決定」によると、日本政府の今回の行いは、難民条約のノン・ルフールマン原則(迫害を受ける危険性のある領域に人を送り返してはならないという原則)と、同条約35条(協力義務)に反している点で国際法に背いているだけでなく、さらには、日本国内の判例にも違反してるらしい。該当部分を引用させていただきます。
H15. 4. 9 東京地方裁判所 平成14年(行ウ)第116号 国家賠償請求 判決文(最高裁判所ホームページより)
我が国は、難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書(中略)を批准しており、難民を庇護すべき国際的な義務を負っている。法の難民認定に関する規定等は、このような国際的な義務を果たすために制定されたものなのであるから、その解釈に当たっては、難民条約等の定めの趣旨に適合するような解釈が要求される
(中略)
難民の意義については、難民条約1条A及び難民議定書1条2項が明確に定めているところであり、難民条約等の締約国は、上記規定の定める難民に該当する者に対しては、庇護をすべき義務を負う
(「難民該当性の認定のあり方について」の項より)
第35条 締約国の機関と国際連合との協力
1 締約国は、国際連合難民高等弁務官事務所又はこれを承継する国際連合の他の機関の任務の遂行に際し、これらの機関と協力することを約束するものとし、特に、これらの機関のこの条約の適用を監督する責務の遂行に際し、これらの機関に便宜を与える。
2 締約国は、国際連合難民高等弁務官事務所又はこれを承継する国際連合の他の機関が国際連合の権限のある機関に報告することのできるよう、要請に応じ、次の事項に関する情報及び統計を適当な様式で提供することを約束する。
(a)難民の状態
(b)この条約の実施状況
(c)難民に関する現行法令及び難民に関して将来施行される法令
クルド人親子を強制送還
日本政府は、外国人に対して冷たい対応を取ることがある。今回のこともそうなのか?クルド人親子を強制送還 国連の難民認定者で初(河北新報社 2005年01月18日火曜日)日本政府に難民認定を求めたが不認定とされ、東京入国管理局に収容されたトルコの少数民族クルド人の…
難民クルド人強制送還:国際法にも判例にも反した決定
昨年夏、このブログでも紹介した難民申請中のクルド人のうちカザンキランさんら2名が、トルコに強制送還された。2人は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民として認定されていた、いわゆるマンデート難民にもかかわらず、である。 難民クルド人親子:トルコへ強制送…
さらにマンデート難民在留を認められず イラン人シェイダさん
クルド難民家族の強制送還に続いて、20日、東京高裁がイラン人ゲイ難民のシェイダさんに対して、控訴を棄却し、シェイダさんの在留権を認めず、シェイダさんの退去強制処分を妥当とする判決を言い渡したことを知った。
Refuee vs Immigration Authorities/偉大なる入管
TB失礼します。この議論が深まり、人道的に正しい判断が下されることを願います。
クルド人送還「何ら違反ない」※(修正)
「『トルコで迫害された』と虚偽の申請をしたことを自ら法廷で認めた」ってのが本当なら・・・マスコミの報道は何なのだろう?トルコにいなかったんだってね。日本第一希望じゃないんだね。
強制送還したってのを悪く書いて、政府を叩いてるだけじゃないか。
難民にいくら…
難民支援協会・緊急レクチャー告知
昨日お知らせした緊急レクチャー開催決定です。講師は当協会の事務局長の筒井、私は当会の進行役を務めます。詳細下記。よろしくお願いします。
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難民支援協会緊急レクチャー
?クルド人強制送還はなにが問題か??
1月18日にお…