こういうの知ると、日本も捨てたもんじゃないなと元気が出てくる。
面白いのは、その手法。意見投票自体は、「賛成」「反対」「わからない」と三分割されたパネルに、シールを張っていく、よくテレビで見る「シール投票」だが、その際に、選択の理由も一緒に聞いているところがポイント。テレビや新聞で見かける賛成かどうかの数字ではなく、その裏に秘められたいろんな人々の意見や思いをすくいあげ、それをネットで公開することで、いわば「公論化」することに主眼が置かれているようだ。これについて東京新聞の特報「イラク派遣延長と世論 都合の悪い声は『衆愚』」は、呼びかけ人となった金沢の主婦、小原美由紀さんの次のような言葉を拾っている。
小原さんが投票で初めて気づかされた事実もある。「『どうせ政府が決めるんだから』という政治への無力感、無関心がよく言われるが、実は直接聞くと、賛成、反対理由にもさまざまな意見が含まれている。『分からない』という回答も、一般的にはものを考えない人ととらえられがちだが、実際には『熟慮しているが判断がつかない』という人が半数以上だった」
これって、ブログ巡りが面白いのとおんなじ感覚かもしれない。
まぁ、こういう投票の呼びかけに街頭で応じるかどうかで、ある程度意見分布に偏りが生じてはいるのだろうけど、とりあえずいろいろな意見があって面白い。
あと、これは新聞記事や投票ホームページからは分らないけど、ほんとうにフツーの、つまり政党やその他既存の市民運動の中の人じゃない「一市民」が始めたことだとしたら、とても素敵だと思う。
こうやって、テレビや新聞では分らない一人一人の一筋縄ではいかない賛成、反対、わからないの声が結ばれていく一方で、政府は自衛隊派遣をあと1年(も)続ける意向を固めたようだ。
ちなみにさっきニュース23で、公明党の神崎氏が出ていたが、なんともマヌケなことを言っていた。「イラクのほかの地域は大変危険になってますが、サマワでは、迫撃砲が打ち込まれたといっても、信管が抜かれたものでしたし・・・。」
おいおい、「信管が抜かれていたから」って、そんな相手任せのことで「安全です」って判断していいのか?これからも信管を抜いてくれているとは限らないぞ?善意に解釈すると、それは、「日本人、アジアの英雄、いい人たち。自衛隊もいい人たち。できれば殺したくないよ。だから、殺さなきゃならなくなる前に出て行ってくれ」という警告なんじゃないのか?今後、イラク全土の状況がもっと悪化して、サマワにも威勢のいい連中がやってきたら、どうなるかわからんぞ。とくに来年3月、オランダ軍が撤退した後、どうやらイギリス軍が自衛隊の護衛役になるらしいが、イギリス軍といえば米軍と並ぶ占領軍の一味。そんな、抵抗勢力からすれば「標的」に護ってもらうのは、自衛隊を名実ともに占領軍の一味、標的の一部にしてしまうことになるだろう。そうなったら飛んでくるのは、信管入りの弾だ。
それでも、そんなことはおかまいなしに、自衛隊派遣は延長される。コイズミ首相は、「何時何分何十秒~?」のような子供の口ゲンカ並みの低脳答弁――青木さやかなら芸になるかもしれんが――で説明責任を回避しまくり、政治という言葉の営みを骨抜きにし、法治主義もかなぐりすてたデタラメが続くのだろう。そして、それをマスコミはガス抜き程度にしか批判せず流されていく。。。
けれども、その一方で市民の側は、確かに今のところ政治に対して無力ではあるけれど、それぞれいろいろ考えている。それはきっと無駄にはならない。じっとじっと、あきらめず考え、悩み、感じつづける人たちがいる――たとえば東京新聞の記事で紹介されている「奇抜なファッションに身を包んだ、横浜市内の中学二年生の少女(14)」は、「香田証生さんが首切られて殺されたけど、三日間くらい寝られなかった」と言っている。もちろん集められている意見は、賛成・反対・わからないのいずれの場合でも、玉石混合だし、思考停止(=あきらめ)しちゃってるようなのもあるけど、みんなが無感覚、思考停止しているわけじゃない。(むしろ思考停止してるのは、経済でも政治でも「アメリカ様についていけば大丈夫」なんて考えてる自称愛国者どものほうだろう。)見えないところ、聞こえないところで、いろいろ考えている人たちがたくさんいる。それを知ることができるっていうのは、暗い時代における希望に少しはつながるんじゃないだろうか。
今回の意見投票アクションの一番の意義は、そういうところにあるように思う。
最後に参考図書。これにつづられているのは、歴史に名を残した有名人たちだが、大きな歴史の舞台には現われず各々の歴史をつむぐだけの人々も、その精神をわかち合っているのだろう。
ハンナ・アレント『暗い時代の人々』(河出書房新社)
人は何のために生きるのか。時代が押しつける巧妙な虚偽の意識に抵抗し、自ら燃え尽きることで暗い時代に光芒を放った人々-ローザ、ヤスパース、ベンヤミン、ブレヒト、ブロッホ等を通じて描く哲学的人間論の白眉。
平川さん、こんにちは。小原美由紀@ほんとの一市民です。
WEBで検索していてこのブログを見つけました。東京新聞の記事を取り上げてくださってありがとうございます。大変うれしく拝見しました。
まさに私たちのはじめたシール投票の本質を捉えてくださっていると感じました。おまけに平川さんは私の母校で教鞭をとっていらっしゃるようで、うれしいご縁です。
また時々のぞかせていただきます。
この市民投票、NYの坂本龍一さんのご助言でネット投票もはじめましたので、ぜひ多くの方に投票していただきたいと思っています。どうぞみなさんにおすすめくださいませ。(今ちょっと賛成派に押されています(;^_^A )
▼///// ネット投票 ///// はじめました。////////▲
自衛隊のイラク派遣延長どう思う?
アナタの意見を聞かせてください。
http://peacefamily.or.tv/vote/
▼////▼////▼//// ~2004・12・14 ▲/////▲/////▲
イラク意見広告の会
今日の毎日新聞の意見広告に、
大きく
「自衛隊のイラク派遣を打ち切るよう求めます」
というのが載っていました。
この広告では、天木直人氏や高遠菜穂子さんのコメントも載っていました。
募金で集まったお金でこの広告は載ったそうです。
自衛隊のイラク派遣の…
小原さん、はじめまして。
ご本人からコメントいただけるなんて、とても嬉しいです。そのうえ、京女OGとは!!(金沢出身の今京女生は確かに多いですが。)
それにしても、ネット投票と街頭投票とで、ずいぶんと結果が対照的で興味深いですね。(2ちゃんあたりに、きっとリンクが貼られてるんでしょうね。)でも、賛成、反対どちらが多くても、それぞれの意見の持ち主がどんな考えを持っているか(あるいはいないか)がお互い分るのは、意義深いですね。
そういえば街頭投票の結果を読ませて頂いて気づいたのですが、「反対」に投票した少なからずの人たちが、香田証生さんの事件のことに触れてましたね。サヨクのお仕着せなんかじゃなく、自分自身の気持ちとして彼のことに思いを寄せてる人たちが確かにいるんだなぁと思って、少し救われた気持ちになりました。(ここもそんなメッセージが寄せられてます→http://www.ac-net.org/appeal/8/)
これからもどうぞよろしく。
誰のための、何のための「自衛隊イラク派遣延長」かについて
世界の指導者にとって自らの軍隊を閲覧するほど晴れがましい舞台はない。日本の小泉純一郎首相も例外ではなかった。 11月7日、自衛隊発足50周年記念の閲覧式に出席した小泉は、秋晴れの下、4000人以上の
誰のための、何のための「自衛隊イラク派遣延長」かについて
世界の指導者にとって自らの軍隊を閲覧するほど晴れがましい舞台はない。日本の小泉純一郎首相も例外ではなかった。 11月7日、自衛隊発足50周年記念の閲覧式に出席した小泉は、秋晴れの下、4000人以上の