恐怖心か希望か―米大統領選まで1週間

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先月はじめに心臓バイパス手術をしたばかりのクリントン前大統領が、ケリー候補の応援で演説した言葉。

「一人の候補者は皆さんを恐がらせようとし、もう一人は皆さんに考えさせようとしている。一人が皆さんの恐怖心に訴え、もう一人は皆さんの希望に訴えている。ならば、皆さんに考えることと希望を与えようとする者に投票すべきじゃないだろうか。」(”If one candidate is trying to scare you, and the other’s trying to get you to think; if one is appealing to your fears, and the other is appealing to your hopes – it seems to me you ought to vote for the person who wants you to think and hope.”

相変わらず上手い演説だが、この言葉は今のアメリカ、あるいは世界の本質を見事に突いている。
テロリズムの本質は恐怖(terror)による支配である。そしてテロと対決するという国家の側は、テロへの恐怖心をあおることで国民を戦時体制・非常事態体制へと統合し、自由を侵害する。平時なら明らかに不当で違法とされる国家の行為が、「テロとの対決」の一言ですべて正当化される。「やられたらどうするんだ」という恫喝によって、人々の思考力と想像力が麻痺し、他者の痛みも、自分たちが手放しつつあるものの重さもきにならなくなる。「テロとの戦い」が護ると豪語するそのものが、まさに破壊されるのだ。恐怖心はテロリストと国家の共通のカードであり、両者は「タナトクラシー(死による支配)」の共犯関係を結ぶ。「テロとの戦い(war against terrorism)」は、「自由に対するテロとの/による戦い(war with terrorism against liberty)」に転化する。
この死の支配、恐怖心の支配から人々を解き放つのは、恐れないこと、思考と想像力を畏縮させないこと、「和解」と「連帯」、「解決」、「未来」への希望をもつこと。
ケリーが勝っても、何かが劇的に変わることはないかもしれない。けれどブッシュよりはマシだろう。
大統領選まであと1週間。希望を選べ!アメリカ市民!

 

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