このところ何かと忙しく、すっかり更新を怠ってしまった。見れば、あと1エントリーで、トップページはなくなってしまう寸前。そろそろ新学期も始まるし、生活ペースを立て直さなきゃ。
ところで現在開催中の国連総会では、以前にここでも書いた為替取引に対する「トービン税」などグローバル税に関する提案が、フランスのシラク大統領やブラジルのルラ大統領から出されることになっている。提案されている税には、トービン税のほか、燃料使用に対する炭素税、国際的な武器の販売に対する徴税、グローバル宝くじ、国際的な飛行機での移動に対する税があるという。
以下は、トービン税の世界的導入を求めて作られたNGO、ATTAC (Association for the Taxation of financial Transactions for the Aid of Citizens: 市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション)のフィンランド・グループの社会学者ミカエル・ブックさんのショート・レポートです。
今月後半、シラクとルラはCTT(通貨取引税)への賛意を示すのか?
-ミカエル・ブック(ATTACフィンランド)フランスのシラク大統領は、9月14日から開始される第59回国連総会でグローバル税に関する重要な新提案なるものを発表する。すでに1月、同大統領はルラ・ブラジル大統領との共同宣言で、武器売却へのグローバルな課税に対して支援を表明した。
同時に、シラク大統領は、開発への融資を増額する方法についてフランスの専門家に調査を依頼した。大統領の任命を受けて結成された調査委員会には、ATTAC フランスの学術委員会のメンバーも参加しており、同委員会は9月13日または14 日頃に調査結果を発表するとされている。
6月3日に他国の大統領60名に送った手紙の中で、仏大統領は、途上国の初等教育および健康管理、熱帯病やAIDSの継続的調査、および人道的支援事業には財源が必要であると述べた。
必要とされる融資は「同時に無償、安定および予測可能」でなければならないと主張して、担当官にグローバル課税と世界的な所得再分配システムの実現可能性について検討することを命じた。
シラク大統領の調査委員会は通貨取引税、環境税、武器売却税、およびハワード・M・ベクテルの企業利益合算税提案など、数々のグローバル課税方式について研究した。さらに同委員会はグローバル課税の政治的正当性を保証する方法について提案することが予定されている。
1月にシラク大統領は「まだうまくいっていないので、これはトービン税にはならないかもしれない」と語っており、CTTに対する大統領の態度が積極的かどうかはまだ分からない。一方、ルラ大統領としては、何度もCTTの必要性を述べている。9月20日に国連総会で同大統領はオルタナティブ案を提出するとされている。
ちなみに文中に出てくるATTACフランスの学術委員会(conseil scientifique)には、数多くのプロの政治学者や経済学者が加わっていて、トービン税その他の重要問題について研究と討論が行われている。今回のような大統領の調査委員会のメンバーにもなっている者もいる。先々月参加したScience and Democracy Networkのワークショップでは、ドイツ人の若い研究者がATTACドイツの学術委員会の役割について報告していたが、それによれば同委員会の300人以上のメンバーの半分以上が大学教員で、2/3以上が博士号取得者だという。(全会員数も3万人以上。)このあたり、小生もメンバーであるATTACジャパンから見ると、うらやましい限りである。(まぁ、専門家不足は日本のNGO全般の特徴なのだが。。)
なお、このフランス、ブラジル両国大統領によるトービン税提案の話題は、日本の普通のメディアではいっさい伝えられていないようだ。同提案に関する以前の情報によると、米国、ドイツ、そして日本がグローバル税の導入に反対しているのだそうだ。
で、その日本国首相だが、今行ってる外遊の中で、トービン税提案の一翼を担うブラジル・リラ大統領とも現地時間で一昨日会談しているのだが、少なくともマスコミでは、二人の間でこの提案が話題になったということは伝えられていない。まぁ、アテネ五輪の男子マラソンでで沿道から飛び出してきた観客(トンデモ神父)のせいで惜しくも銅メダルとなったブラジルのデリマ選手と歓談なんて、相も変わらずマヌケなパフォーマンスごっこやってるくらいだから、きっと彼の頭にはトービン税やグローバル税のことなんて、ひとかけらもないのだろう。
もしも彼の頭の中を占めているものがあるとすれば、国連総会の演説で安保理入りを訴えることくらいか。。なんとアホで中身のない首相なのだろう。(実際、この国連演説にしても、元身内のとある元首相補佐官から「本当に安保理に入ることを考えるなら、国連総会演説なんていうパフォーマンスなどやってないで、真っ先に中国との関係を何とかすべきだ」と苦言が飛び出している。最近、以前にもまして寒いパフォーマンスの連続で、なんか見ていて滑稽でもあり哀れでもあるな。)
まぁ、日本にとってはこの男の存在は大問題だが、世界にとっては何の意味もない。(ただしブッシュのちょうちん持ちは世界にとっても有害。)こんなやつのことは無視して、世界はグローバル税導入に向けて大きく回りだして欲しいものだ。
最後に一つ。
上記のレポートのミカエル・ブックさんですが、11月に来日して、東京と京都で講演会を開きます。(京都は4日の予定。)詳細が決まり次第、このブログでも宣伝します。