改憲・教育基本法改正で少年犯罪は減らせるか?―加害少女の詩

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長崎県佐世保市で起きた小学6年女児殺害事件の際、たまたま同日、同市にいた自民党の安倍幹事長は講演で「大変残念な事件があった。大切なのは教育だ。子供たちに命の大切さを教え、私たちが生まれたこの国、この郷土のすばらしさを教えてゆくことが大切だ」と述べたうえで、教育基本法改正の必要性を強調したと伝えられている(参照記事とそのミラー)。
その記事で「党として7月の参院選までに改正案の中間報告をまとめて発表」とされている自民党の教育基本法改正案は、まだ同党のHPにはアップされていないので中身が分からないが、まぁ、例の改憲案と同じように、「行き過ぎた個人主義、利己主義を改め、郷土や国を愛する心を育てる」とか、そういうものだろう。
しかし、そんなもので今回のような――被害者にとっても加害者にとっても――痛ましい事件の対策になるのだろうか?そのことを深く考えさせてくれる文章を見つけた。PPFV BLOG さんの「凶悪少年犯罪について~やっぱりこだわる」milouさんの「佐世保小少女の詩」で紹介されている次のブログの記事だ。そこで取り上げられているのは、この事件の加害少女が自分のHPに書いていた「詩と日記」。

施設長の公開日記ブログ版: 憎しみが殺意に転化するとき 3

「不揃いな棒が延々と平行に並んで」いるところで、「長さ、色、太さが同じ棒を探してみた」けれども見つからなかった。ずっと疲れるまで探したけれど見つからなかった。そして「差別はいらない。すべて不揃いなのは必然的なことで。」と書き、「みんな違って、みんな良い。 それが個性なのだから。 」という言葉で詩は終わっている。「みんな違う」という、いわば当たり前の事実の肯定から始まるのではなく、疲れるまで、しつこく「同じもの」を探し、その果てに「みんな違う」を発見する。


政府や首相を批判するだけで、反米、反日分子、非国民呼ばわりされ、マスコミも挙げて個人をバッシングする――加害少女は人質事件をどんな気持ちで見ていたのだろう?――そして、個人よりも共同体、国が大事だといい、本来、国家権力の濫用を防ぐための規範である憲法を、国民・個人の権利を制限するためのものに変える改憲論と、それと軌を一にした教育基本法改正論。教育の現場では、法案審議時の「義務付けはしない」という政府答弁にもかかわらず、君が代の強制がまかり通っている。そんなもので彼女の心を救うことなんて、その渇きや苦悶を癒すことなんてできるだろうか?
最後にオマケ。
「自民党 教育基本法改正」でググッたら二番目に出てきた民主党三重5区総支部長の金子洋一氏のブログのエントリーより。上で言及した安倍幹事長の発言を批判するものだが、「小泉改革は呪術的」というのが言いえて妙(笑)

教育基本法「改正」に反対
・・・なんといっても違和感を覚えるのは、教育基本法という法律の文言を変えれば現実の社会を悩ませている教育問題がいとも簡単に解決するという「呪術的」発想に対してです。・・・

 

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3件のコメント

  1. TB、記事紹介ありがとうございます。
    事件当日の安倍幹事長の講演のニュース、あまりのタイミングの良さと相まって非常に怒りを覚えました。
    ご存知のように佐世保は米軍基地を抱える土地、沖縄北谷町での事件のことなど単なる偶然とも思えません。
    そもそも少年犯罪の増加傾向との見方も大いに疑問感じる所でありますし、まずは教育基本法改悪ありきの思惑を感じるところです。
    犯罪者とされる小6の少女と、一国の政治を任された「大人」のあまりの感性の違いに言葉もありません。

  2. ほんとうに安倍幹事長をはじめとする政治家たちは、感性、知性、人間性のなさにおいて最悪の生き物ですね。

  3. TB、ならびにご紹介ありがとうございました。
    教育行政の中にあっての個性とは『勉強ができないのも個性』だと言っています、又教育基本法の中身もわれわれ、男女、平等などの文言を削除して国や国民に変えようとするなど横暴三昧です。
    大人社会との隔たりが益々深くなり学校教育の場も劣悪になっていく状況を考えると手足をもがれる思いです。
    hirakawaさんの記事はいつも読ませて頂いています。本当に納得させられることばかりです。

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