遺伝子組換え2題

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昨日は遺伝子組換え関係で二つ大きなニュースがあった。

<遺伝子組み換え>セイヨウナタネ自生 茨城・鹿島港周辺 (毎日新聞)
食用油の原料として輸入された遺伝子組み換えセイヨウナタネを荷揚げ作業中に種子が風で飛ばされ、輸入港の茨城県・鹿島港周辺で生育していることが29日、農林水産省の調査で分かった。同省は「環境への影響はない」としているが、研究目的以外の組み換え植物の意図しない生育が国内で確認されたのは初めて。(後略)

 
<サントリー>世界初の「青いバラ」 開発に成功 (毎日新聞)
 サントリー(大阪市)は30日、「青いバラ」の開発に世界で初めて成功したと発表した。青いバラは「不可能の代名詞」とされ、1000年近く多くの育種家が挑戦したものの、咲かせることはできなかった。実際の色は薄紫色で、佐治信忠社長は「より青いバラを作り出して、世界中の人々に楽しんでもらいたい」と話した。同社は07~08年の商品化を目指している。

一つめは、これだけ見ると「げげー」とネガティヴなニュースのように見えるが、農水省のプレスリリースを見ると、昨年6月に成立・公布され、今年2月19日から施行された遺伝組換え生物の環境影響に関する規制法「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(通称「カルタヘナ法」)の運用が機能し始めたことを示すものであり、ポジティヴに評価すべきものでもある。調査結果も含めて、そのあたりの経緯は農水省が早速公表している。

原材料用輸入セイヨウナタネのこぼれ落ち実態調査プレスリリース
(その訂正:原材料用輸入セイヨウナタネのこぼれ落ち実態調査についての訂正について)

このカルタヘナ法の制定では、小生は経産省の審議会の臨時委員としてかかわっていたのだが、そこでの審議の中でも、このような「こぼれ落ち」のことは話題になり、ちゃんと環境リスク評価をすることになっていた。今回のは、それが適用された最初の結果である。とはいえ、審議会の場(一昨年)で既に事務局の役人が「ナタネとか輸送中によくこぼれて道端で咲いてるんですよ」とか言ってたから、こぼれ落ちの事実自体はもうだいぶ前から知られていたことなのだろう。今回のは、それをちゃんとした調査に基づいて追認し、公認した形になっているといえる。
もう一つの青いカーネーションのニュースはけっこう驚いた。最初、妻から聞いて「えぇー!ほんとに~」とビックリしてしまった。ちょうど去年の卒論ゼミで、青いカーネーションを中心に花の遺伝子組換えについて調べた学生がいたので、小生も興味を持って、たとえば農林水産先端技術産業振興センター(STAFF)と飲んだときなどにもいろいろ聞いてたりした。そのときの話では、バラの場合はなぜか、他の花で青い色素の素になる遺伝子を入れて色素が生成されても、色素の分子間の間隔が変わってしまって、うまいこと青い色にならず、しかもその間隔をどうコントロールするかもよく分かっていないということだった。そんなわけで、できるとしても、まだずっと先なんだろうなと思っていたら、こんなに早くできるとは。驚きです。技術者の人知れぬ苦労がたくさんあったんでしょうね。
でも、伝統的な育種家にとっては、組換えでやっちゃうのって、ずるいっていうか、「禁じ手」というかんじなんだろうな。

 

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