自民「憲法改正のポイント」―隠さず全部出せよ(笑)

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さっき自民党のHPを見てたら――見てると全部ウソやごまかしに見えて精神衛生に悪いのだけど――「憲法改正のポイント」というのをみつけた。

憲法改正のポイント――憲法改正に向けての主な論点――自民党

はっきりいってゲロゲロです。さっきのエントリーで取り上げた参院選公約と同様、きな臭い、時代錯誤のオヤジモード丸出しの部分をごっそり落として(=隠して)、耳障りの良いあたりさわりのないことばかりが並んでます。こんなのでだまされないために、必ずこれら(↓)と一緒に読みましょう。

ちなみに「憲法改正のポイント」の「4.「公共」とは、お互いを尊重し合うなかまのこと」には、こんなくだりがある。

家族は、一番身近な「小さな公共」
 さて、互いに尊重し合う個人のネットワーク、「公共」の一番身近で小さな形態は、家族です。家族の構成員は相互に尊重し合う責務を負うのですが、通常は、そういうことを意識することはありません。

一昨日も指摘したんだけど、政治学や社会学ではふつう、「家族」は、公的領域/私的領域のうち私的領域に属しているんだけど、なぜか自民党改憲案では、憲法調査会の議論もふくめて一貫して「家族=公共」とされ公的領域に位置付けられている。おそらくそれは、「公共」を「お互いを尊重し合うなかまのこと」ということ、つまり「他人との共生」という素朴な意味で定義しているからなのかもしれないが、そういう概念の立て方に問題がないか考えてみる必要があるだろう。
それはともかくとして、問題だと思うのは、そのすぐあとではいきなり「国家」が登場することだ。共同体うんぬんも少々出てくるが、こういう話の運び方をみると、その共同体というのは、「相互監視の隣組的ムラ社会」と大差ないものじゃないのとかんぐりたくなる。
おまけに、現代において「公共」といえば、地方自治体レベルの実際の政治・行政でも、NGOやNPO、「市民社会」の役割が大きくなっているが、この「ポイント」にも改正案にも憲法調査会の議論にもこれらの言葉はただの一度も登場していない。「市民」という言葉すらほとんどなく、どれも「市民社会」の積極的意義とは無関係な文脈(一つは否定的ですらある)でしかない。
そして、さらに現代世界で公共は、市民社会のレベルでも国際化している――たとえばイラク人質事件の救出でもNGOの国際的ネットワークが大きく動いた――が、そういう国際的視野もまったく含まれていない。それどころか「「公共」の一番大きな形態は、国家といえるでしょう」なんて書いているくらいだ。いったい何時代までこの日本を逆行させるつもりなのか?
それとちゃんちゃらおかしいのはこの部分。

 最近は、個人主義が正確に理解されず、利己主義的な側面ばかりが強調された結果、自分のことばかり考えて国家や地域社会のことを顧みない風潮がはびこるようになりました。いかに自由があるとはいえ、自らの行動が他人に迷惑をかけることになれば、それは自由とはいえないのです。

私利私欲まみれ、利権まみれ、汚職まみれでタイホされたりした政治家が、自民党には過去累々といるはずだか、そういうことは一番上の棚に挙げちゃってるらしい。「自分のことばかり考えて国家や地域社会のことを顧みない風潮」の最たるものではないのか?そして国会の場では、数の力で有無をいわせぬ強行採決ばかり。もう20年くらい前だったと思うが、ある新聞の読者欄に小学生の子供をもつ父親の投稿があった。ある日ニュースを見ていたら、何かの法案で強行採決が行われ、議員たちの乱闘シーンが放映されていた。それを見た子供が「お父さん、これ日本なの?学校で習ったのと違うよ」と言ったそうだ。お父さんは返す言葉がなかったという。
要するに、いくら教育の場で「礼節を重んじる人々の国」とか教えても、現実の大人たち、とくに政治家たちが正反対の暴挙をしていれば、すべてが台無しになるのだ。ある者はそれを反面教師にするかもしれないが、ある者は「これでいいんだ」と思ったり、シラケてしまう子供も少なくないだろう。もちろん悪しき例は、他にも無数に世の中に転がっているわけだが、少なくとも国民の代表として、その言動のシンボリックな意味合いが他よりずっと大きいはずの政治家、とくに与党=責任政党の政治家が、自分たちの愚行をなんら省みることなく「道徳教育が大事」なんていうのは冗談にしても破廉恥すぎるぞ。
そんなふうに思う一方で、もしかしたらこのオッサンたちは、実は可哀相な人たちなんじゃないかとも思えてくる。現代社会の変化の波に乗り遅れ、昨日の絵の具で明日を塗りつぶそうとしている――愚かというより――哀れな人たち。改憲案は、そんなオジサンたちの「昔は良かったのぉ、ズズズ(と茶をすする)」という嘆きの表現なのかもしれない。確かに次代に伝えるべき尊い価値、伝統というものはある。しかし「昔は良かった」というときの昔は、いいとこ取りの美化されたフィクションに過ぎない。(それともこのオヤジたちの場合は、苦しむ庶民を尻目に一部の者がウハウハな生活をしていたリアルな過去に戻りたいのかな?)行くべき道を見失い、その結果、次代に伝えるべき遺産もどこかでニセモノにすり返られてしまった哀れなオジサンたちが帰っていくのは、結局どこにもない過去というユートピア――大多数の普通の人にとってはディストピア――しかないのかもしれない。
そんなオジサンたちには、「お疲れ様」と一言労をねぎらって、(議員年金もってっていいから)歴史の舞台から引退してもらうのが一番。可哀相な彼らのためにも7月11日は選挙に行きましょう。

 

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7件のコメント

  1. 憲法問題についての論考

     憲法改正問題では、<私たちが住んでいる「日本国」というところの制度をどのようにすべきか>が問われている。
     法律や政令が国民に対する命令であるならば、憲法は統治権力に対する命令である。統治権力(国家)はその統治範囲の及ぶ地域に居住する人々(国民)の…

  2. こんにちは。(以下6月30日の書き込みより抜粋)
    もしかしたらこのオッサンたちは、実は可哀相な人たちなんじゃないかとも思えてくる。現代社会の変化の波に乗り遅れ、昨日の絵の具で明日を塗りつぶそうとしている――愚かというより――哀れな人たち。改憲案は、そんなオジサンたちの「昔は良かったのぉ、ズズズ(と茶をすする)」という嘆きの表現なのかもしれない。確かに次代に伝えるべき尊い価値、伝統というものはある。しかし「昔は良かった」というときの昔は、いいとこ取りの美化されたフィクションに過ぎない。(それともこのオヤジたちの場合は、苦しむ庶民を尻目に一部の者がウハウハな生活をしていたリアルな過去に戻りたいのかな?)行くべき道を見失い、その結果、次代に伝えるべき遺産もどこかでニセモノにすり返られてしまった哀れなオジサンたちが帰っていくのは、結局どこにもない過去というユートピア――大多数の普通の人にとってはディストピア――しかないのかもしれない。
    そんなオジサンたちには、「お疲れ様」と一言労をねぎらって、(議員年金もってっていいから)歴史の舞台から引退してもらうのが一番。可哀相な彼らのためにも7月11日は選挙に行きましょう。(抜粋終了)
    私も政治家の汚職事件のニュースの度に、なんとなく、そうじゃないかな?と、思っていたとはいえ、すごい皮肉ですね。前期所属していたゼミで習ったBob Doll氏著、「Great Presidental Wits」ばりの・・・。日本語だから意味が取れるのですが・・・英語だったら・・・思い出しそうだ・・・。
    でも今回も低投票率が予測されますが、民主と当と自民党、公明党が競り合う形になりそうですね。私も今回の選挙は目が離せないと思います。

  3. すみません、間違えて2度もトラバってしまいました。
    憲法議論はもちろんいいことなのですが、日本では法律に対する概念や知識が不足しているとあらためて痛感するようになりました。個人を尊重することもです。「滅私奉公」という言葉が個と社会に対する概念としてしみついているのでしょうか。これを「未成熟な社会」と呼ぶのだなと思っています。まだまだ日本は民主主義を実践する努力が足りないのかもしれないと自戒しつつ、こうした憲法改正議論などを注意深く見守っていこうと思います。

  4. 「両性の平等」を定めた憲法24条の改悪

    えと、「今週の佐々木信也」とか(汗)「Borderline Cases」展のその後とか、先に書くべきことは大いにあるのは重々承知なのですが、取り急ぎカッと来てるのでアップします。 今日、メールで回って

  5. k035173さん、お久しぶり。
    >でも今回も低投票率が予測されますが、
    予測どおりにならないように、周りの人にも声かけて、選挙に行きましょうね(^^)
    女性の地位を根本から否定するような「改憲案」まで出てますし。
    はじめまして、夫婦別姓を待つ身さん。
    先日、ウチの妻のブログから辿って以来、たびたび拝読させて頂いてます。
    「法律に対する概念や知識が不足している」というのは同感です。アメリカみたいな訴訟社会になるのもなんだかなぁという気がしますが、生活の中での法の存在がすごく希薄ですよね。憲法にしても、主権者(国民)が為政者に課しているものだという認識をどれだけの人がもっているでしょう?首相をはじめとして国会議員――いみじくも立法者とも呼ばれますが――でさえ、法に対してあまりに無頓着で、とくに最近は異常な水準まで来ているように思います。法治国家ではなく放置国家になってきていますね。

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