今朝のエントリーでとりあげた自民党の憲法改正案。党のホムペのどこにも全文がなく、憲法調査会の議事録も、昨年12月22日から今月4日の第18回まで開かれた会合のうち13回までしかアップされておらず、「参院選前には出さないつもりだな」と思ってたら、NPO型インターネット新聞JANJANが記事にしてます。(初公開かと思ってたら、大江健三郎さんたちの「憲法会議」ですでに6月10日に公開されてました。)
自民党の憲法改正案(全文)が明らかに 2004/06/27
自民党の憲法改正プロジェクトチーム(中谷元・座長)が、これまでの議論を集大成した「論点整理(案)」が明らかになった。新憲法制定にあたっての基本的考え方や主要分野における重要方針などの総論と、前文、各条文の改正の方向を示す各論から成っており、参議院選挙後に予定している地方組織を含めた全党的議論の基礎文書になる。
プロジェクトチームは昨年12月22日から作業を開始し、今月4日の第18回会合までに現行憲法の前文と103条の全条文について検討を終え、その結果を「論点整理(案)」としてまとめた。4月15日の13回までの議論については報道各社に公開、議事録がホームページにも掲載されていたが、各条文ごとのとりまとめに入った14回以降は秘密会の形で論点整理を進めてきた。参議院選挙前の公表は避けたものとみられる。(後略)
個々の論点には賛成したい(ただし文言の解釈は慎重にした上で)ものもたくさんあるのだが、肝心なところで「茶色」のものもたくさんある。なんというか、20世紀から21世紀への新しい時代・社会の動きについていけなくなってアタマがいっぱいいっぱいになっちゃったオヤジどもの思考停止の悪あがき、反動の結果がこの改正案だといってもいい。たとえば今朝のエントリーで、自民党改憲案の根底にあるのは、社会的に担うべき負担を家族、とくに女性にオーバーロードさせる――そして、一部の富める者は市場に負担を外部化できるが、大多数はできないという格差を生む――「家父長制ネオリベラリズム」だと指摘したが、低気温のエクスタシーbyはなゆーさんがエントリー「自民党提唱の新憲法は男女両性の基本的平等を否定する内容か?」で指摘しているように、それを如実に表す項目もある。
婚姻・家族における両性平等の規定(現憲法24条)は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである。
ちなみに憲法24条は次のとおり。いったいこれのどこがどう問題で、どう変えるというのだろう?
第二十四条【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】
1 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。
また、民主国家における憲法というのは、元来、政府が暴走しないよう国民がコントロールするためのものだが、この拘束力を弱めてしまうようなことも提案されている。
現憲法の改正要件は、比較憲法的に見てもかなり厳格であり、これが、時代の趨勢にあった憲法改正を妨げる一因になっていると思われる。したがって、例えば、憲法改正の発議の要件である「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」を「各議院の総議員の過半数」とし、あるいは、各議院にいて総議員の3分の2以上の賛成が得られた場合には、国民投票を要しないものとする等の緩和策を講ずる(そのような憲法改正を行う)べきではないか。
この改正論点整理案の最後は、こう結ばれている。
今後は、この「論点整理(案)」を基礎として、参院通常選挙後、党の地方組織を含めた全党的な議論を深めるとともに、憲法改正に関するわが党の取組についてなお一層の国民の理解を求め、新憲法草案が大多数の国民の共感を得ることができるものとなるよう、引き続き努力を傾注してまいりたい。
「大多数の国民の共感」といっているが、たとえ反対が大多数でも政治家たちの頭の中で勝手に「大多数が賛成」に脳内変換されてしまうことを僕らはよく知っている。そして、ここに書かれているように、参院選後に自民党は一気に改正に乗り出す構えでいる――しかも、選挙前には、この改正案も憲法調査会議事録の総括部分も公開せず、選挙戦の争点にもすることなく。きっと、昨年の衆院選後の自衛隊イラク派遣決定と同様に、選挙が与党勝利で終われば、「憲法改正も含めてわれわれは国民から信託された」とかなんとかいいながら、またもや「後出しジャンケン」をしてくるだろう。
もしも、自民党改憲派が考えているような国には住みたくない、こんな国を誇りになんか思えない、と考えるのなら、台風が来ても地震が来てもテロリストが来ても、7月11日は選挙に行こう!