誰かコイズミの口をふさいでくれ!
いや、黙らせるのは良くない。発言の権利を奪っちゃいけないし、そもそも彼には説明責任というものがある。なんとか、ちゃんと意味のある言葉を喋らせて欲しい。
ほんと、あの無意味で空虚で、論理のすり替えばかりの言葉は耐え難い。たとえていえば黒板や磨りガラスを爪でひっかく音を聞かされるようなもんだ。質問をはぐらかす、問題をすり替えるというのは、確かに政治のテクニックではあるが、あそこまでいくと、言葉に対する、言葉の営みである政治に対する暴力である。
たとえば一昨日の国会での答弁。自身の厚生年金不正加入問題で、「勤務実態があったかどうか」を問われているのに、「政治家に限らない。芸術、文化、スポーツ……。見返りを求めず応援する人がいるからこそ、この社会はおもしろいし味がある」(参照記事)なんて、「見返りを求めず応援する人がいることはいいことかどうか」という問題にすり替えている。勤務実態について言う場合でも、「毎日、国会に出てこなくても、実に大きな政治活動をしている方もいる。人によって仕事の形態は違う」なんていってるが、これは比較の対象になっていない。政治家の仕事は政治活動であり、国会の中だろうと外だろうと政治活動をしている限りにおいて、政治家としての勤務実態があるといえるし、政治活動をしていなければ勤務実態がないということになる。いくら社長が「あんたの仕事は選挙に当選すること」といったって、不動産会社の社員が、不動産業の仕事をしていなかったり、会社の利益のために働いていなければ、普通、勤務実態があるとは言わないだろう。(ついでにいえばこの男は、当選後も2年近く社員として厚生年金に加入し、また現在の物価換算で70万円の月給までもらっていたという。)勤務実態がないのにお金をもらっていたとすれば、それは給与ではなく寄付・献金(当選前は贈与?)であり、厚生年金に加入することはできないし、支払う税金も違ってくるだろう。
だいたい、もしも雇用主が認めればどんなものでも「勤務実態がある」ということになれば、辻元清美の秘書給与不正なんてどうなるんだ?あれは、勤務実態がないにもかかわらず秘書が給与を受けたことにして、その金を政治資金に流用していたわけだが、もしも秘書にちゃんと勤務実態があり、そのうえで給与の一部を寄付していたらどうだったろう?寄付の届け出をしていなかったことくらいしか罪にはならないだろう。「あなたの仕事は、秘書業務でなく、名義を貸して寄付してくれること」と雇い主が言っても、それは勤務実態ありとはみなされなかったわけだ。
それと、昨日の国会では岡田民主党代表が面白いことを指摘した。通常は厚生年金に入れない自営業者の人が、形式上、別の会社に雇ってもらい厚生年金に加入するということが広まったらどうなるのか、年金制度の根幹が崩れるじゃないか、というやつだ。もちろんその場合、雇った側の会社は、その幽霊社員氏の分まで厚生年金の掛け金を負担することになるわけだが、反対に、その会社の社長が、幽霊社員氏の会社で雇ってもらえば、互いに負担を負いつつも、双方が厚生年金に加入できてウマ~である。やろうと思えばできなくもない。(もしかしたら、雇用主は別の会社の社員にはなれないなんていう法律があったりするのだろうか?)そして、もしも多くの自営業者がそれをやったとすれば、岡田代表のいうように年金制度の根幹を揺るがすものになるだろう。それはillegalなことじゃないとしても、極めてimmoralなモラルハザードではないだろうか?
ちなみにコイズミ首相の行為は、現時点ではまだ「詐欺罪」にはならないのだが、受給した段階で詐欺罪になりうるのだそうだ。今週発売の「週刊ポスト」6月11号の記事「小泉首相の重大事態『厚生年金加入』が詐欺罪になる 未加入・未納よりさらに深刻な疑惑発覚」によれば、「厚生年金を受け取っていない段階では詐欺罪に問われることはないが、『公正証書原本不実記載』『詐欺未遂』の可能性はある。ただし、前者の公訴時効は5年で、詐欺罪は7年だから、だいぶ以前に厚生年金に違法加入していたとしても罪には問われない。しかし、厚生年金を受給し始めた段階で詐欺罪になる」(元最高検検事の土本武司・筑波大学名誉教授)のだそうだ。コイズミ首相は、「30年も前のことを問題にする方がおかしい」なんて吠えてるが、問題になってくるのはこれからなのだ。
また同記事によれば、過去にも政治家による厚生年金違法加入の事件があったそうだ。一つはすでに受給していたために有罪になっている。以下記事からの引用。
98年に起きた東大阪市の事件は社会的に大きな衝撃を与えた。東大阪市長のA氏(64歳=当時)は、同年5月、厚生年金を詐取した詐欺容疑に問われた。A市長は東大阪市議と大阪府議時代の71年6月~90年1月の約18年間、後援会企業に勤務したことにして、労使が負担する社会保険料月額3万円を全額同社に支払わせていた。市議になるまで勤めた財団法人の期間を合わせ、25年加入となって受給資格を満たし、60歳になった95年2月から総額約700万円の厚生年金を詐取していた。大阪地裁の一審判決(98年12月18日)では、懲役2年6か月(執行猶予4年)の有罪判決が下された。
第2のケースはまだ記憶に新しい。02年2月に発覚した、当時の民主党副代表、鹿野道彦氏の厚生年金違法加入事件である。鹿野氏は、76年から義弟が勤める建設会社の顧問に就任し、91年2月から同社の“社員”として厚生年金と健康保険に加入していた。三重社会保険事務局の聞き取り調査によって、鹿野氏はほとんど出社せず、電話でアドバイスする程度だったため、勤務実態がないと判断され、被保険者の資格が取り消された。鹿野氏はそれまでに同氏と家族が受けた医療費の保険給付分の返還を迫られて、年金加入歴も抹消された。また同時に鹿野氏が違法加入をもとに社会保険料控除を受けていれば、その分が脱税にあたるとも指摘された。結局、刑事事件としての立件は見送られたが、鹿野氏は民主党を離党して政治責任を取ったのである。
第2の鹿野氏のケースは、おそらくコイズミ首相のケースと同じなのではないだろうか?鹿野氏の場合も義弟が勤める建設会社の社長が「いいよ」と認めたからこそ、顧問に就任でき、厚生年金と健康保険に加入したのだろう。けれども、(まだ受給していないため)刑事事件にはならずとも、離党という政治責任を鹿野氏はとったのであり、もしもこれがずっとバレずに年金を受給していたとすれば、詐欺罪で有罪になっていただろう。コイズミ首相も同様であるはずだ。
そういう重大な問題を相変わらずのempty talkでごまかし続けるコイズミ首相が、公明党と役人にほとんど丸投げして作らせたような今回の年金法案は、明日にも参院で可決される。自民党が法案成立に躍起になっているのは、要は来月の参院選で公明党の選挙応援が欲しいからだという見方もある。あくまで選挙戦略なのだ。民主党がいくら抵抗しても、きっと伝家の宝刀「単独強行採決」という凶行で通してしまうのだろう。(有事関連法案もね。)この国の未来に希望を失わないでいるのがとても難しいぞ。
最後に、いま思ったのだが、コイズミ首相のように厚生年金に違法加入している政治家って、実はとっても多いんじゃないだろうか?未納議員も底が知れないが、こちらのほうも有象無象、たくさんにいそうでなんかコワイな(苦笑)