自己責任論について

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昨日も書いた自己責任論の「おかしさ」について。
たとえば台風か何かで濁流渦巻く川に子供が落ちているのを見つけ、思わず飛び込んだ人が結果的におぼれ死に、その捜索が大変だったとしよう。よくある話だが、そんなとき、その人の行動を「自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な行動」とフツーなじるだろうか?捜査員たちが「大きな無用の負担をかけやがって」なんていうだろうか?


あるいは以前、東京の新大久保駅で線路から落ちた人を助けようとして、結果的に命を落としたカメラマンの男性と韓国の留学生の青年がいた。電車事故なので、各方面に多大な影響が及んだのはいうまでもない。そのとき誰が彼らの行動を「自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な行動」となじっただろうか?それとは反対に彼の行動は、自らの危険を顧みず、見ず知らずの人を救おうとした勇気ある行動として賞賛され、彼らには警視総監感謝状、警察協力賞が贈られ、多くの一般の人々も参列した韓国青年の葬儀には、当時の森首相も参列している。
イラクに助けを求めている人たちがいる。彼らの助けとなるために自分も死ぬかもしれない危険な場所に飛び込んだ。今回の人質3人がしたのはそういうことだ。もちろん彼らは、上の例のように、1秒、いや0.1秒を争う状況で行動していたわけではない。今、イラク入りすべきかどうか、入るとすれば、どういう経路で、どんな交通手段を選ぶべきかを考える時間があり、もしかしたらそこで何らかの判断ミスがあったかもしれない。その点で彼らが責めを負う部分はあるかもしれない(これはもちろん彼らが帰ってこなければ検証できない)。しかし「今行かなければ・・」という切迫な思いの強さは、瞬間的なものではなく持続的なものだという違いを除けば、基本的には上の例の場合と変わらないだろう。一方は警視総監感謝状、警察協力賞、葬儀に首相参列、他方は政治家、行政トップ(外務事務次官)、マスコミ(読売、週刊新潮その他)を揚げての被害者とその家族のバッシング。いったい何が、ここまで正反対の反応をもたらしているのだろうか?
いうまでもなく(昨日も書いたことだが)「自己責任論」の最大の問題は、それが、犯人の責任はもちろんのこと、より直接的には米軍によるファルージャ攻撃・虐殺、昨年3月に始まる米軍のイラク攻撃と占領政策、そんな米軍・米国政府にどっぷり追従する姿勢・枠組みのもとでの自衛隊派遣という日本政府の失策、そして今回の政府の対応の杜撰さ――奥大使が亡くなられた後、彼の代わりを務められる人材は果たしているのか――という、より大きな責任を覆い隠す「めくらまし」に使われていることに他ならない。
ついでにいえば、あの自称仲介者のペテン師おじさんみたいなのが出てきたのって、もしかして日本政府は、現地の部族長とかコンタクト相手に対してカネを配ってるからじゃないのかという疑いを小生は抱いている。「テロには屈しない」「撤退はしない」なんていいつつ、結局はよからぬ連中につけいられるスキを作っているとすれば、それは結局は売国奴の所業であり、さらなる邦人拉致のリスクを高めることにつながる。(折しも先ほど、イラクで新たに2人の日本人が拉致されたかもしれないというニュースが飛び込んできている。)
今のイラクの惨状を伝えるページへのリンク。
ファルージャの目撃者より:どうか、読んで下さい
地獄の扉を開く:バグダッドからの報告
ファルージャ情報
Baghdad Burning(イラク人女性のblog)
しかし、人質の3人はいったいいつになったら解放されるのだろうか?
グローバル・ウォッチのコリン・コバヤシさんの情報によると、協力してくれている在イラクのネットワークと拉致グループとの仲介者と、電話連絡が取れなくなっているそうだ。
そして、そうこうしているうちに飛び込んできたニュース:
「イタリア人人質殺害される」 アルジャジーラ報道(asahi.com)
イラクの武装勢力に人質になっていたイタリア人4人のうち1人が殺害され、武装勢力は「要求に応じなければ今後も1人ずつ殺す」と主張しているという。(アルジャジーラ英語版の記事
さらに、いま見ていたニュースによれば、米軍は、シーア派の強硬派サドル氏を殺害する目的で、彼がいるナディフ(?)の町を包囲しているそうだ。ここでもファルージャの惨劇が繰り返されるのか?
そもそも、ここ一連の拉致事件や人質の殺害事件の一番直接的な原因は、米軍によるファルージャ攻撃だろう。だとすれば、人質解放を求める運動側は、「自衛隊テッターイ!」は脇に置いておいて、より巨悪な米軍・米国政府の凶行のキューダンに集中し、政府に対しても「同盟国」として米国政府をいさめるよう求めるのを第1にしていったらどうだろうか?(昨夜のニュースでは、チェイニー副大統領との会談でコイズミ首相は、この点について何か言ったらしいし、昨日の党首討論でもファルージャ攻撃が人質事件につながっているという見解を表明している。)

 

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