STS News & Remarks in May 2002

ユージホーセー、もう「徴用」は始まってる・・・（2002.5.5）

ほんとはこんなとこに書いているヒマはないんだけど・・

でも、これは、何をさておき、書いておかなきゃならん話です。はっきりいって、油断してましたわ。こんなことになってるなんて・・・

まずは、昨日の朝日新聞のニュース記事「テロ対策、防衛庁が民間人派遣を要請　石播など受諾」（←このリンクは数日で切れます）。それによると、

戦時の対米支援としてインド洋周辺に派遣されている自衛隊艦艇や航空機を修理するため、防衛庁が「石川島播磨重工業」（本社・東京）など複数の防衛関連業者に対し、技術者の現地派遣を要請していることがわかった。自衛隊に自前の補修能力がないためで、業者側もこれを受け入れ、要員確保や派遣準備を進めている。防衛庁は要請の事実を認めているが、「まだ非公式のもの」としている。
昨年１０月に成立したテロ対策特別措置法では、民間人の派遣は想定していない。実際に派遣されることになれば、政府が戦後初めて民間人を危険地域に送ることになり、その安全確保や身分保障をめぐって論議を呼びそうだ。

要するに、ユージホーセー（有事法制）の前倒しとして、既に事態は動いちゃってるってことです。これを機に、「テロ対策特別措置法では、民間人の派遣は想定していない」、だ・か・ら、「有事法制が必要なんです」という答弁が国会でなされるのも、もう来週あたりには見られてしまうかもしれません。

で、ついでにいうと、実は、上の朝日の記事は間違いがあります。それは２段落めの「実際に派遣されることになれば、政府が戦後初めて民間人を危険地域に送ることになり」というところ。実はもっともっと前から送られちゃった人、死んじゃった人がいるみたいなのです。そして、まだ危険地域に行ってなくても、他の職業でもすでに「徴用準備」は始まってるらしいのです。

以下の囲みは、昨年の9月11日テロをきっかけに始まった、サヨクとか既成の運動とは全く無縁だったフツーのおばさん、おじさん、おねえちゃん、おにいちゃんたちの（←小生はそういうノリがすき）ネットワークCHANCE!から生まれたプロジェクトの一つ「NO WAR! ユージホーセープロジェクト」が、3月末にCHANCE!カフェというイベントで、有事法制についての学習・討論会を東京・渋谷のcafe barで開き（←こういうセンスもすき）、それに招かれた船員さん、看護婦さん、パイロットさんたちの話からの抜粋です。

全文は、メーリングリストCHANCE ! Forumの記事有事法制・現場の声（3/29）で読めます。あと、「NO WAR! ユージホーセープロジェクト」のサイトにある「ユージホーセーがわかる漫画シリーズ　第１弾・第２弾・第３弾」は必見です。またYUJI　*　STORY もお薦め。それと、ピース・ニュースのアメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名の解説もわかりやすい。あなたのとなりの有事はユージホーセーに関する総合情報サイトです。要するにユージホーセーというのは、現在の国際政治状況を考えると、「他国からの侵略に備える」法律じゃなくて、イラクや北朝鮮を「悪の枢軸」と名指して戦争したくてウズウズしているアメリカが、いざ戦争始めるときに日本がスムーズに戦争協力できるための「他国を攻撃するのに備える」法律だということ。仮に「日本を守る」ということを強調したとしてもそれは、「アメリカが戦争開始する」→「日本の米軍基地が報復の対象となる（その意味で日本が攻撃される）」→「日本を守る」というロジックであり、戦争したくてたまらないアメリカに引導渡してやるようなユージホーセーは、日本を守るどころかむしろ日本が攻撃対象になり戦争に巻き込まれるリスクを高めるだけだということです。確かに、何らかの他国からの武力攻撃に対し備え――それは軍事的なことだけではありませんが――をし、軍事面での文民統制をどうやるか、日本国民や在日外国人（とくに交戦国の人たち）をどう保護するかなどの法的枠組みを作っておくのは必要だけれど、とにかく今作られようとしているやつは、正確には「アメリカ戦争協力法」でしかないので、絶対に法案を通過させてはならないと思います。

海員組合の方の話

実際に船員の方たちはこれまでも湾岸戦争やイランイラク戦争のときに湾岸へ赴き戦火の中を物資を運んでいたそうです。２人そのせいでなくなっています。

これまでは　紛争当事国でないということで免れた来た危機も　今後有事法制がとおって実際に当事国になると　攻撃される可能性がかなり高くなるといっていました。

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海の上には　国境がないように、ここまでが前線で　ここからが後方戦線というような線引きはありません。だから、船員の人にとっては国会で常に繰り返される　後方支援ならいいとか悪いとかいった議論はまったく意味がないと言っていました。

２０代の日赤の看護婦さんの話

看護婦さんの間では　今回の法律のことは結構深刻に受け止められているようです。

看護婦はもともと人の命を救うための仕事ですが、 ○○さんいわく　自分が助けた命が　マタ新たな　殺戮を生むのは看護婦としての自分たちの　仕事の根幹を　破壊するものだといっていました。

１９９８年から　拳銃や地雷での　怪我に対応するための　研修が行われているようです。これは、海外での紛争地に赴く場合のため　という面もあるようですが、日赤はそもそも　戦地で　敵味方なく　兵士を看るために生まれた組織だったようで、今後、実際に戦争状況になったら手伝わざるを得ない。という感じなようです。

・・・

また、有事には現在病院にいる人達を　追い出して新しく運ばれてくる　兵隊などを見なければならないために普通の個人が　治療の対象からはずされたり　後回しにされることもあるといっていました。

元自衛官の航空労組の方の話

○○さんはベテランパイロットでありながら　元自衛官という変わった経歴の方です。いわば、国防を志して、途中でその矛盾点を感じて悩んで自衛官を辞めたそうです。自衛官時代　毎朝　『国民をまもるために・・』と宣誓をさせられたそうですが、そういったそばから　当時は安保闘争で　基地の外の市民に向けて銃を構える毎日だったそうです。一体何のために　自分は自衛隊になったのか？悩んで結局やめたといっていました。

・・・

民間の飛行機は　兵器を運んだり、兵士をしてはいけないという国際的な取り決めがあるそうです。
しかし、日本では１９９８年に　在日米軍が　兵士と兵器を運ぶために全日空の飛行機をチャーターしたそうです。
これには○○さんかなり怒っていました。これはあってはならないことで、民間機は兵器などを運ばないという取り決めがあるからこそ安全に空を移送できます。
しかし、民間機が兵器を運んでいる可能性があるということになればどんどん狙われて　今後いくらでもテロが起こる可能性があるといっていました。空の安全、乗客の安全を守るためにも　民間機が戦争に利用されるということはあってはならないことだといっていました。

しかし、有事法制では　航空関係者も　戦争に協力しない場合は罰則規定で　逮捕される可能性があり、絶対にこの法律はとめるべきだといっていました。

いちばん面白かったのは質疑応答で『自衛隊は　国民一人一人　を守ってくれるのか？』という質問に対して ○○さんは『自衛隊は軍隊ですから上官の命令以外では動きません。国民一人一人を守るということはありえなくて、自分が自衛官時代もそう教えられましたが、けっきょくは『国体』。これは天皇制という狭い意味ではなくて、永田町の国の権力システムをまもるということです。つまり、国防といったときに軍隊が守るのは　国民ではなく　国家のシステムです。』といっていました。

弁護士さんの話

日本国内の軍需産業である　三菱重工とか石川島播磨とかで兵器の製造を行っている部門ではごくごく最近になってもし、自衛隊が赴いていった戦地で　兵器が故障したときに直すために派遣される予定の技術者のリストつくりが始まっているそうです。

これは長らく兵器を作ってきたこれらの会社でもこれまではなかったもので、自衛隊が海外に出る事態になってから、こうせざるを得なくてリスト化しているようです。

選ばれるのは組合問題になりにくい　中堅の　管理職などがなっているようです。ここでも有事がかなり現実味を帯びてきているんだなあと思いました。

最後の弁護士さんの話は、朝日の記事を一月以上も先行している話です。

某首相のパフォーマンスに騙されて、性懲りもなくジミントーなんぞに政権預けてる間に、このザマです。僕らのニッポンは。。。

おまけ。

ふと、思い出した歌詞。ブルーハーツのTRAIN-TRAINから。

見えない自由がほしくて
見えない銃を撃ちまくる
本当の声を聞かせておくれよ

聖者になんてなれないよ　だけど生きてる方がいい
だから僕は歌うんだよ精一杯でかい声で

おまけ、その２（2002.5.6）

5月6日の『朝日新聞』のニュース。これもとんでもない。海幕がヤラセって、それっていわゆる「軍部の独走」じゃないのか！？

「イージス艦派遣、海幕が米軍に裏工作　対日要請を促す」
防衛庁海上幕僚監部（海幕）の幹部が４月１０日、在日米海軍のチャプリン司令官を横須賀基地に訪ね、海上自衛隊のイージス艦やＰ３Ｃ哨戒機のインド洋派遣を米側から要請するよう働きかけていたことがわかった。米政府がその後日本側に持ちかけた派遣要請の裏側に、海幕幹部の工作が存在した形になる。米軍支援をめぐる制服組の独走ともいえる事態で、文民統制（シビリアンコントロール）の危うい現状が浮き彫りになった。連休明けの有事法制関連法案の国会審議にも影響を与えそうだ。
・・・
米軍事筋はまた、この海幕幹部が働きかけの理由として「仮に米軍が対イラク開戦に踏み切ってしまってからでは、イージス艦やＰ３Ｃの派遣は難しくなる。何もないうちに出しておけば、開戦になっても問題にならないだろう」と説明したことも明らかにした。

狂牛病メモ、日本でのATTACの行方（2002.5.1）

先週末は木・金・土と東京に出張してましたが、その出張先の一つ、土曜日に開かれた「公共技術のガバナンス：社会技術理論体系の構築にむけて」プロジェクト（科学技術振興事業団による社会技術研究推進事業の助成を受けて推進されているプロジェクト）で聞いた話。この日は、神里達博さん（元三菱化成生命研究所、現RISTEX勤務）の「日本発の狂牛病をめぐって」という実に勉強になる（講義の準備にも役立つ(笑)）報告があったのですが、そのなかで興味深かったことの一つに、日本での狂牛病の発生確率（リスク）の話がありました。それによると、現在、農林水産省のホームページにある「BSE関係Q & A」の「問４　人にうつる確率はどのくらいでしょうか」では、次のような説明がなされています（文中の「vCJD」は「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」という海綿状脳症の一種のことで、牛の海綿状脳症であるBSEが人に感染した結果だとされている病気のことです）。

２　英国でこれまで１８万頭の牛にＢＳＥが発生しているなかで、人におけるvCJDの発生率は５００万人に１人とされています。
　これに対して、日本でのＢＳＥの発生は、平成１３年１２月現在３頭と少ないこと、現在、日本では全頭検査が行われていること、かつての英国と異なり脳を食べる習慣がないことを勘案すれば、日本でvCJDが発生するリスクは英国に比べて桁違いに少ないといえます。
（我が国におけるvCJDの発症の可能性について、東京大学の吉川教授は0.005～0.007人と、放送大学の近藤教授はBSE感染牛が３頭確認された段階で6,000億分の１と推計しています。）

ところが、フランスでは567頭に対して5人、イタリアでは54頭に対して1人となっていて、必ずしも牛の感染頭数と人の感染者数は比例関係にあるわけじゃないらしいのです。（これらの国ではイギリスに行ってて感染した可能性もあるかもしれないけど。）また日本では3頭発見されて以降ずっと感染牛が見つかってませんが、その理由には、「死亡牛は全頭検査されていない」という事実や「高齢牛の出荷が控えられている可能性」もあったりするそうで、楽観はできないとのこと。まぁ、要するに発生確率の同定なんてまだまだできない状態であるわけです（まぁ、上の説明にもあるようにイギリスよりはずっーーと低いだろうけど）。そもそも、感染頭数のピークから遅れて現れるはずの感染者数のピークがまだ来てなくて、潜伏期間もまだまだ不明。神里さんの報告の要の主張でもあったのですが、要はBSEはほんとにまだ分らないことだらけで、極めて不確実性の高い科学に基づいて規制政策をしかざるを得ない超難題、したがって予防原則的な措置が重要なテーマだということです。

実際、EUが「（悪性プリオンの）検出限界以下である」などの理由から感染リスクは無視できるとして、30ヶ月以前の牛は検査無しで市場に出せるとしていたのに対し、最近アイルランドで31ヶ月で発症しちゃった牛がいたそうです。つまり30ヶ月以前でも検出されることがありうるわけです。ちなみに日本の農水省が昨秋、全頭検査を開始したとき、欧州のメディアは、「日本の農水省はなんて無駄なことをしてるんだ」と馬鹿にしまくったそうなんですが、予防措置としては日本が正解である可能性も出てきたわけです。

ちなみに日本のこれまでのBSE対策の問題（行政の失態）については、農水大臣・厚生労働大臣の私的諮問委員会「BSE問題に関する調査検討委員会」の報告書（PDF115KB）（要約はこちらで、計11回の議事録と資料はこちら）がとても重要です。その中身については、すでに3月下旬からマスコミでは、行政（農水省と厚生労働省）の過去の対応を「重大な失政」と批判したり、（最終報告書では名指しは避けられましたが）某自民党の農水族の影響をズバリ指摘するなど、徹底した政と官に対する批判的姿勢が主な話題になってましたが、実際はそれだけに留まっていません。詳しいことは、そのうち時間を見つけて書いてみたいですが（いつになるかは不明）、第一印象は「農水省は、食品安全体制に向けて腹をくくったのかもしれない・・・」でした。第一にこの報告書は、すべて委員会の委員自身によって書かれているということがあります。普通、政府の委員会の報告書というのは、まず下案を事務局の役人が書いて、それを委員がチェックして修正し、最後はまた役人が仕上げるものです。（アメリカの科学諮問委員会はちゃんと委員が書くのが普通で、委員に求められる資質には「文章を書くのが上手であること」「締切りを守れること（が～ん）」というのもあるそうです。）そういう伝統を破ったのがこの報告書であるわけで、そこでまず座布団一枚。

そしてこの報告書の一番の骨子は何かというと、それは、今までの食品安全行政がいかに非科学的であったか、リスク評価・リスク管理のまともな体制が欠如していたかを指摘し、政策形成への市民参加も含めて、予防原則に則ったリスク管理体制を今後しっかり構築していくことを求めていることです。

これを受けて農水省では、独立の規制省庁として「食品安全庁」みたいなものを作ろうという動きにもなったりして（噂では本気で役人たちは動き出しているとも聞いてます）、今後に注目！といったところなのですが、そこで待ったをかけてるのが自民党らしいです。まぁもう少し正確に言うと、橋本内閣以来の行政改革、「小さな政府」化の流れで、新しい役所を作るわけにゃいかないので、既存の食糧庁を潰してそれに代える（要は「看板」の掛け替えだけで、食品安全体制に必要な能力を持った人材を新たに集めるというわけではない）ということらしい。

ちなみに、この行政改革のプレッシャーはいろんなところに現れてて、たとえば先月まで小生が委員で加わっていた経産省の遺伝子組換え生物管理小委員会の議論でも、独立のリスク評価機関・情報集積機関を作るべきだという（産業界代表からのものも含めた）求めに対して、委員長が「行政スリム化が求められているご時世ですから、どこまでそれができるかは難しい・・」という説明があったりしました。実は日本は元来、先進国の中ではかなり公務員の数が少ない「小さな政府」で、とくに公衆衛生や環境の規制関係では、人数的にも予算的にも、また付属する研究機関の規模や数の面でも実に貧弱なのです（その欠陥の現れが原子力安全行政だったりする）。1996年頃に当時の環境庁が環境ホルモン対策としてSPEEDというプログラムを作りましたが、その作成をした官僚はたった二名だったりします（そのうちの一名の方から聞いた話）。おまけに、当然ながら一人一人は同時に複数の仕事をこなしてますから、人手はいくらあっても足りないくらいなのに、人事院の総定員法などの縛りもあってそう簡単には増やせない（これは、昨今話題の国会議員の政策秘書がたった一人しか雇えないという問題にも共通しています）。無駄な部門は無駄な公共事業と同様にどんどんなくすのはいいことだけど、本来増強が必要とされるところまで、一律にスリム化せざるを得ないというのは、なんとも愚かです。ついでにいえば、そういう要と不要を問わずに闇雲に「小泉内閣の行政改革」を後押しし、「小泉内閣vs.抵抗勢力」という図式しか垂れ流さず、小泉政治を批判するのも「行政改革進んでないじゃないか」というかたちでしかやらない――やれない？――マスメディアもだらしがない。上記のBSE報告書にしたって、所詮は農水省のこれまでの失態や族議員の話にしかフォーカスしないのも、メディアのアジェンダセッティング能力の欠如を示してるといえます。（個人情報保護法の問題だって、何人かの評論家や議員―中村敦夫さん（おぉ、木枯紋次郎！！）―が指摘しているように、「内部告発者保護法」というカウンターバランスを求めていくとかすればいいのに、「メディア規制だぁ～」としか言わないから、小泉君に「メディアは規制しません（＝裏返せば、報道関係者ではない内部告発者は罰することができるよ）」なんていう国会答弁で逃げられてしまう。さらには、これから産業化・商業化がますます激しくなって、もはや「純粋な科学研究」なんて言い訳は通用しなくなるはずの個人の遺伝子情報の研究利用には、「学術目的だから」という理由で何の規制もかけてない、そういう意味では全く時代遅れで時代錯誤的なこの法案の欠陥を指摘しない（できない？）し。）

さて、今日は、先週のもう一つの出張先についても書いておきます。それは、ATTAC Japan （首都圏）主催で26日に開かれた「スーザン・ジョージ著『WTO徹底批判!』出版記念―スーザン・ジョージと反グローバリゼーション運動を考える集い」で、こちらは主催者の予想を倍以上も上回る老若男女合わせて140名近くも参加者がありました（この集まりの呼びかけ人の一人で経済評論家の内橋克人さんもいらっしゃってた）。

主催者も言ってたけど、この盛況ぶりは、NHKスペシャルの新シリーズ「変革の世紀」の第1回「国家を超える市民パワー　～国際政治に挑むＮＧＯ～」が、フランスのATTACを正面から取り上げたのが効を奏したみたい。番組では日本のATTACについては一言も触れられなかったのだけど、きっとネットで検索して発見されたんでしょうね。実際、番組終了直後からウチのサイトのATTAC関連のページのアクセスが急上昇しましたし。（ちなみにGoogleで「グローバリゼーション　WTO」で検索すると、なぜかウチのグローバリゼーション／WTO関連のリンク集がトップでヒットします。他にもっと重要なサイトがあるだろうに・・・）。

1998年にフランスに生まれ、その後急速に世界各国に広がってきたATTAC（Association for the Taxation of financial Transactions for the Aid of Citizens：市民のために金融投機に課税を求める協会）のことは、このコーナーでも何度か書いたことがありましたが、これを機会に日本でもATTACの活動の意義が共有され、輪が広がっていって欲しいなと思っています。実際、上記のBSEや、遺伝子組換え作物など、食品安全性や輸入農作物自由化の問題、あるいはその農業や医療分野での知的所有権の無制限な拡大という問題、さらには郵政民営化を初めとする公共サービスの自由化・民営化や、医療制度改革（改悪？）など、日本で今後ますます深刻になりつつある問題は、多かれ少なかれグロバーリゼーションが深く関わっています。また、上に述べた、本来は必要な行政の公的機能の切り下げといった問題もそうですし、個人情報保護から遺伝子情報の保護が抜け落ちている問題も、WTO(世界貿易機関)のTRIPs協定（貿易関連知的所有権保護協定）による国際的な知的財産権強化の体制のもとでの技術開発－特許取得レースのなかで、いかに日本の医療産業が生き残るかという利害関係と密着した話です（研究者自身の研究動機がどんなに非商業的なものであっても、それがすぐさま他の誰かによってたやすく産業化される現在の状況にある限りは、学術研究と産業化は密着しているといえます）。そういう意味で日本でのATTACの展開というのは、単なる欧米の追っかけじゃなくて、まさに日本の市民（これには日本国籍をもつ「国民」だけでなく、在日外国籍者の人たちも含まれます）自身の課題だといえます。

実は日本では、上記のATTAC JAPAN (首都圏)のほかにATTAC関西グループがすでに、学習会を中心に活動を始めていますが、この度、そのブランチとしてATTAC京都も誕生することになりました。当面、固定した枠組みを設けず､学習と討論を重ねていく予定です（フランスでもATTACの中心的活動は学習と討論にあります）。5月9日に立ち上げ会合がある（18:30から京大文学部新館第一講義室にて）のですが、参加をご希望の方は小生（hirakawa@kyoto-wu.ac.jp）まで連絡いただければ、案内をお送りいたします。以下は、その呼びかけ文からATTACの紹介部分を抜粋したものです。

ＡＴＴＡＣとは？

ＡＴＴＡＣとは「市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション」の略で、１９９８年にフランスで生まれたＮＧＯです。

ＡＴＴＡＣの運動は、９７年のアジア通貨危機をうけてフランスの「ルモンド・ディプロマティク」誌に掲載されたイニャシオ・ラモネ氏の「市場を武装解除しよう」という表題の論説をきっかけとしています。この論説は、投機的資本取引によって毎日１兆５千万ドルもの金が何度も取引され、それが高金利、債務の増加、大量のレイオフ等の問題を引き起こしていることを指摘し、金融のグローバリゼーションを進めてきたＩＭＦ・世界銀行、ＯＥＣＤ、ＷＴＯなどの「権力」を武装解除することが、「ジャングルの掟」による支配を阻止するための最優先課題であると主張しています。

ラモネ氏は、投機的な金融取引を抑えるために、これにごく低率の税（提唱した経済学者の名を取って「トービン税」ともいいます）を課すことをもとめるＮＧＯの設立をよびかけたのです。

運動の広がり

ラモネ氏の論説はフランスで大きな反響を呼び、多くの市民団体、労働組合、メディア、そして個人によってＡＴＴＡＣが結成されました。ＡＴＴＡＣは、「市場にまかせればすべてうまくいく」という市場万能主義、市民の健康や生活、雇用、教育を保護する公共サービスを「効率化」「規制緩和」の名のもとになんでも民営化し、市場任せにする新自由主義の政策に反対し、トービン税を導入してその税収を貧困や環境破壊などグローバリゼーションの弊害を解決するために使うことを主張しており、世界経済などについての情報の共有と討論を活動の柱としています。

現在フランスでは、会員は３万人近くに達し、自治体も数多く参加しています。これと並んで世界４０ヵ国以上でもＡＴＴＡＣが生まれ、「金融界の利益のために民主主義が失った空間をとりもどそう」「もう一つの世界は可能だ」をスローガンに、先進国と途上国の垣根を越えて活動する国際的なネットワークをつくりあげています。

ついにフランス国会で可決

運動の発展の結果、ヨーロッパでは国際金融取引への課税は趨勢となってきました。昨年１１月には、フランス国会が国際金融取引への課税を条件付きながら採択しました。日本でも急速に注目されるようになっています。

先日NHKで放映された『変革の世紀』第一回「国家を超える市民パワー」では、仏ＡＴＴＡＣの取り組みが大きく取り上げられました。ご覧になった方も多いのではないでしょうか？

ＡＴＴＡＣの国際的活動

ＡＴＴＡＣは、シアトルからジェノバへと続いた一連の国際的な会議に対するデモの組織化、インターネットを通じた情報の提供でも大きな役割を果たしてきました。

今年１-２月には、ブラジルの先進民主都市ポルトアレグレで、第２回世界社会フォーラムを他の団体とともに開催。5万人以上を集めて成功させました。アフガニスタンに対する戦争に反対する運動やパレスチナ連帯の行動にも積極的に参加しています。

「反」グローバリゼーションではなく・・・

ＡＴＴＡＣの活動は、しばしば「反グローバリゼーション」の運動と形容されることがあります。とくに昨年９月の米国同時多発テロ以降は、あたかも原理主義的テロリズムと同根の運動であるかのような印象がメディアを通じて与えられ、世界各国のＡＴＴＡＣの間にある種の危機感が広がったこともありました。

しかしながらＡＴＴＡＣが反対しているのは「ジャングルの掟」が支配する新自由主義的なグローバリゼーションのあり方であり、これに代わる「もう一つの世界」のための市民のグローバルな絆を基礎にしたもう一つのグローバリゼーション――オルタ(ナティヴ)・グローバリゼーション――を求めています。

STS News & Remarks

2002年5月