Subject: 私たちはファルージャをどう捉えるべきか〜 93 年ソマリアでの虐殺の忘却を繰り返すな〜
From: ********** <**************>
皆さま こんにちは。 アメリカ合州国軍が1週間にわたって展開したバグダッド西方170キロに位置する 都市ファルージャでの虐殺は、イラク全体に憤激を巻き起こしており、CPAにより編 成された「イラク軍」もファルージャへの投入を拒否するといった事態も生じていま す。 ファルージャで行われた虐殺は、11年前にソマリアの首都モガディシオで、同じ米 軍によって起こされた虐殺と極めて類似した事件です。 ファルージャでもモガディシオでも、米軍が虐殺を引き起こした直接の原因は、現 地の人々が米軍および米軍関係者(ファルージャの場合は民間軍事会社に所属する元 特殊部隊員)を襲撃・殺害して遺体を傷つけたことでした。ファルージャで地元の人 々によって殺された米軍・米軍関係者は4人。これに対して米軍により虐殺された人 々は、およそ600人と推測されています。一方、93年にモガディシオで地元の人々 が、アイディード将軍捕捉のための作戦行動に出撃して失敗した米軍の戦闘ヘリコプ ターを撃墜して殺害した米軍兵士は18人。これらの米軍兵士に対するいわゆる「救出 作戦」において米軍に虐殺されたソマリアの人々は、1000人以上にのぼると推定され ています。 (モガディシオ事件に関する詳細情報は例えば、 http://www.greenleft.org.au/back/1998/313/313p21.htm) このモガディシオの事件は、現地の人々が米軍兵士の死体を引きずり回す「残虐 な」光景がテレビで放映され、その後クリントン政権が兵士の死亡の危険を伴う海外 での軍事行動に消極的になった事件として記憶されています……米軍兵士18人の死と ともに。しかし、その後行われた1000人以上のソマリア人の虐殺については、少なく とも「国際社会」の記憶からは抹消されているようです。ファルージャでの米国の民 間軍事会社員4名の殺害と死体の展示に関して「ソマリア」の名を挙げた報道は数多 くありました。しかし、ファルージャで米軍によって行われた600人にのぼるイラク 人の虐殺行為について、モガディシオの記憶を引っぱり出してきた報道は、ありませ んでした。 ファルージャの人々は、市街から出る道をすべてふさいで、家の一軒一軒を対象に 行われた米海兵隊の襲撃=アメリカ人を殺害した者をとらえるための捜索=の過程 で、逃げ場もなく家から引きずり出され、殺害、暴行を欲しいままにされました。湾 岸戦争以前には極めて高い水準にあったとされるイラクの医療機関の人々は、ここフ ァルージャでも献身的に人々の手当にあたろうとしましたが、十分な医薬品もなく、 瀕死の重傷を負った人々の数のあまりの多さに、十分な医療を施すことができない状 況だったと言われます。ファルージャの人々は、死者を墓地に埋めることが出来ず、 自分の庭に埋葬せざるを得ませんでした……外に出たら、米軍の容赦ない攻撃が待っ ているからです。ファルージャの人口30万人のうちの600人……人口の2%が亡くな ったことになります。もちろん、これは、人口の3分の1が殺された沖縄戦や、ほぼ 同じ比率で人々が殺された済州島4・3事件と比較すれば、苛烈なものではない、と いえなくはありません。 今後私たちは、ファルージャという街の名前を記憶することになるでしょう……米 国の対イラク侵略の失敗が刻印された街として。そのとき私たちは、同じ過ちを繰り 返してはなりません。私たちの記憶に刻印されるファルージャの物語を、ただ4人の 米国民間軍事会社の社員の死だけとむすびつけてしまうこと、600人のイラク人の死 をそこから抹消してしまうこと。それは、11年前にソマリアで行われたことです。 18名の聖化された死=「ブラック・ホーク・ダウン」=と、1000人以上のソマリア人 の抹消された死。米国政府は、モガディシオでそのとき、自国軍がソマリア人を何人 殺したのか、まともな調査をしませんでした。物語の捏造と死者の忘却を許してはな らないと思います。 稲場 雅紀 ps. 私たちは、最近になって米国政府から体制保証を得たスーダンのバシール政権が イラク戦争の陰で行っている同国ダルフール地方での残虐行為についても知らない振 りをすべきではないでしょう。この地域では、数ヶ月前から、バシール政権と結託し た民兵が、数千人の黒人の先住民たちを殺害し、その結果として、10万人がチャドに 逃れ、67万人がスーダンの国内避難民と化しているとも言われています。 ******** (参考:ソマリアでの93年の事件に関する情報) http://www.greenleft.org.au/back/1998/313/313p21.htm 米国はソマリアでの虐殺を隠蔽している 1993年、「平和維持」を名目とした米国の部隊はソマリアで、ある日の午後たった 半日で、民間人や子どもを含む1000人以上の人々を虐殺した。西側のメディアは、モ ガディシュで米軍のパイロットの死体が引きずり回されている衝撃的な映像を含め、 18人の米国兵士の死を焦点化して報道したが、その一方、数百人(米国政府によれば 200人)が戦闘に伴って死んだということは、わずかに触れられるに過ぎなかった。 米国のジャーナリストの調査により、米国が隠蔽していた恐るべき血の海の実態が判 明した。(後略) -- (以下略)