主催: 神戸GMO 研究会、日本科学史学会阪神支部会
後援: STS Network Japan 、神戸STS 研究会(木ゼミ)、神戸大学立花隆研究会
日時: 2000年12月28日(木) 午後1時 - 5時
会場: 神戸大学国際文化学部 B110教室
本シンポジウムは、科学研究費研究「遺伝子組み換え作物の安全性に関するリスク論的・STS的研究」のもとで、神戸大学国際文化学部教員ならびに国内の科学技術社会論(Science, Technology & Society; STS)研究者によって組織された研究会(通称:神戸大GMO研)の活動の一環として開催されるものです。
遺伝子組み換え作物・食品(GM作物・GM食品)の「安全性」については、先進国・途上国とわず世界中で問題になっています。日本でも来年度より遺伝子組み換え食品の表示が実施されようとしてますし、また研究開発にかかわる農水省のイニシアティヴのもと、(社)農林水産先端技術産業振興センターの主催で、この9月から11月にかけて「遺伝子組み換え農作物を考えるコンセンサス会議」が開催されました。国際的には、とくに生物多様性条約・バイオセイフティ議定書(カルタへーナ議定書)交渉において、GMOの貿易をめぐるさまざまな科学的・政策的問題が話し合われています。
ところで、バイオセイフティ議定書交渉のような国際的舞台での議論から見えてくるのは、GMOの「安全性」の問題は、通常マスメディアでとりあげられるような、食品としての人体に対する安全性や、農作物としての農業生態系やそれを取り囲む生態系に対する環境面での安全性だけではないということです。世界貿易機関(WTO)体制のもとで推し進められている農作物貿易自由化の流れのなかでの食糧安全保障の問題や、いわゆる生物特許に関する貿易関連知的財産権協定(TRIPS)など現行の国際的な知的財産権(IPRs)制度と、途上国の農業・環境に関する伝統的知識と現地住民の諸権利の衝突、多国籍企業による農業支配、さらには従来のモノカルチャー的近代農業とGM作物の関係など、現代の農業・食糧システム全体に波及する広い意味での「安全性問題」が重要テーマとなっているのです。またリスクコミュニケーションという開発者と行政、生産者、消費者・市民のあいだの意思疎通をめぐる問題も、他の科学%技術と同様に大きなテーマです。そしてこれらの問題は、上記のコンセンサス会議でも提起され、話し合われていました。
神戸大GMO研は、このような幅広い視野のなかでGMOの「安全性」の問題をフレーミングし、GMOに関する自然科学・工学・人文・社会科学全体にわたる学際的な対話と、GMOの開発・利用・規制に関する政策をめぐる公共的対話のための共通のプラットホームの構築に資する基礎研究を行っています。本シンポジウムは、その初年度の活動の成果の一部として開催されるものです。
第1セッションでは、自然科学・工学の立場からのGMO問題が論じられます。話題提供者には先頃『立花隆の無知蒙昧を衝く』(社会評論社)を著された京都大工学部名誉教授の佐藤進さんと、遺伝子組み換え食品について一般市民向けに分かりやすく解説された『遺伝子組み換え食品がわかる本』(法研)の編著者である京都大食糧科学研究所教授の村田幸作さんをお招きします。こちらは神戸大国際文化学部塚原研の学生たちの企画によるものです。
第2セッションでは、神戸大GMO研メンバーのうち科学技術社会論(STS)を専門とする研究者からの報告があります。今回は、上記コンセンサス会議も含めた日本国内の省庁の動きや、本年9月にウィーンで開催された欧州科学技術研究学会(EASST)と国際科学社会学会(4S)の合同会議での海外研究者との交流の成果、東南アジアその他の環境NGOの活動に関する予備調査などをふまえて報告が行われます。
司会: 三浦伸夫(神戸大・GMO 研代表)
話題提供者:
佐藤進さん(京都大工学部名誉教授) (『立花隆の無知蒙昧を衝く』著者)
村田幸作さん(京都大食糧科学研究所教授) (『遺伝子組み換え食品がわかる本』編著者)
「科学の問題としてのGMO: 立花隆を手がかりに」
ディスカッサント: 神戸大塚原研・立花隆研究会メンバー: 薗田恵美(代表)、中津匡哉、小池通輝、山本知恵子
司会: 三上剛史・山崎康仕(神戸大・GMO 研)
話題提供者:
綾部広則さん(東大・GMO 研)
「GMOをめぐるヨーロッパ対アメリカという構図:そして通産・外務・大蔵などによる日本の戦略的位置付け」
中島秀人さん(東京工大・GMO 研)
「アジアのSTS の動向とGMO :今後のSTS 世界戦略の構想と方針(仮題)」
春日匠(京都大)、平川秀幸(京都女子大・GMO研)、塚原東吾(神戸大・GMO研)
「緑の革命とGMO: サード・ワールド・ネットワーク(TWN)、グリーン・ピース、ヴィシュヌ財団、ワールド・ウォッチなどの環境NGO 活動から(仮題)」
なお、終了後、懇親会が予定されております。
連絡先: 神戸大学国際文化学部 塚原研究室
tel./fax.078-803-7435 e-mail:eug@cs.cla.kobe-u.ac.jp