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新たな野望w

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最近、ちょっとマジメに考え出してる野望。

「経済学」をちゃんと勉強しようと思ってる。とくにマクロ経済と経済史、経済哲学のあたり。

ずっと前からうすうす考えてきたことではあったけど、先日の夕食後、『現代思想 2009年8月号』の特集「経済学の使用法」――とくに水野和夫氏の論文「近代の終焉と脱“近代”経済学」――の話題で、妻と盛り上がっていたなかで、「(ぼくが)これからやるべき仕事とは」という話になったのが直接のきっかけ。

なんでかっていうと、遡って考えてみると、いろいろあるわけで。

一番の動機は、「モダニティ(近代性)」、そして現代という時代を「理解したい」という理論的欲求。

1991年に物理をやめてから、これまで自分は、科学哲学、そして科学技術社会論(Science, Technoloyg and Society: STS)という分野でやってきたわけだけど、たぶん、その一番根っこにあるのは、この理論的欲求。

振り返ってみると、一番のきっかけ、「原点」となってるのは、文転してからの修士課程の頃に読んだハンナ・アレントの『人間の条件』(ちくま学芸文庫)。そのなかで、科学技術と資本主義経済は、近代という巨大のムーブメントを駆動する両輪として描かれていた。

それらのうち、もともと理系だったぼくとしては、科学技術のほうに興味をもってやってきて、かつ、アプローチとしては、アレントの影響をかなり受けていて、政治哲学ないし政治学寄りでやってきた。現代社会における科学技術の重要な問題として、97年頃から関心を持ち出して考えてきた「リスク」の問題についても、博士課程のときには、こんな論文まで書いてみたり。

Coping with the Uncertainty beyond Epistemic-Moral Inability: Rethinking the Human Self-Understanding with Hannah Arendt's Reflection on Vita Activa. (paper presented to the 20th World Congress of Philosophy, Boston; On-Line Archive of the Proceedings of the 20th World Congress of Philosophy.)

で、リスク問題を考えるうちに、単に理論的に大きな話だけじゃ、現実の問題にとってあまり意味がないってことで、10年くらい前からは、リスクコミュニケーションとか参加型テクノロジーアセスメント、サイエンスショップ、あるいは広く科学技術コミュニケーションといった旗印のもとで、いかにしてリスク問題など科学技術が関わる公共的な意思決定を行うべきか、そこに当該の科学技術の(職業的)専門家ではない人々が参加・関与し、影響力を行使できるようにするにはどうしたらいいかなど、実践的かつ「政治的」な問題を論じてきたわけだ。(まぁ、そんなにたくさん仕事したわけじゃないけども。)

しかし、そろそろ次のステージへ進むべきではないかと。定年まであと20年ってことで、研究者として、次の10年で何をやるかを考えねばならん時期でもあるし。

それで「そろそろやってみようかなぁ」と思い始めたのが、科学技術と現代社会、そしてモダニティの問題に対する経済学的なアプローチ。一昨年博論書いたときも、現代の科学技術と社会のこと、たとえば「科学技術ガバナンス」とか「イノベーション・ガバナンス」なんて問題について、本当にちゃんとやろうと思ったら、やはり経済のことがわかんないとどうしようもないと思ったし。なにしろ、現代の科学技術は資本主義経済にガッチリ組み込まれていて、その研究開発も、成果の普及やその社会的インパクトも、企業活動や市場を通じてもたらされる部分がますます大きくなっているのだから。「意思決定」にしても、政府ではなく私企業がその主体となる部分が大きいし、それに対する消費行動や市場の動き(投資・為替などグローバルな金融市場・金融資本の動きも含めて)の影響力も計り知れない。

まぁ、それでも、ここ10年あまりやってきたことをやめてしまうつもりはさらさらない。

たとえぱ98~99年度に、いわば「御用学者見習い」として、実践的な問題への最初の取組みとして関わった『科学技術と社会・国民との間に生ずる諸問題に対応するための方策等に関する調査:科学技術と社会・国民との相互の関係の在り方に関する調査』という科学技術振興調整費プロジェクト(98年度成果概要99年度成果概要)。そのなかに盛り込んだ参加型政策決定やコミュニケーションの話は、その後2000年代になり、とくに第3期科学技術基本計画(2006-2010)のもとでは、科学技術政策の重要課題の一部を占めるようになったし、具体的な実践も日本各地に広がってきている。研究者も実践者もどんどん増えてきている。そういう意味では、一つ時代が回ったかなというところではある。

ちなみに、いま文科省の基本計画特別委員会で策定検討中の第4期科学技術基本計画では、「社会とともに創る科学技術・イノベーション政策」というコンセプトが、重要な柱の一つとなりそうな気配である。第2回委員会の資料3-1「今後の科学技術政策に関する基本認識」(PDF:770KB)の13頁から、該当箇所を引用しておこう(強調筆者)。

  • 1999年7月にハンガリーのブダペストにおいて、世界科学会議が開催されてから10年を迎える。この時に採択された「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」は、それまでの知識あるいは開発のための科学という視点に留まらず、「社会における科学と社会のための科学」という考え方を提示し、科学者に対して人類の福祉や持続的な平和と開発への貢献、さらに倫理的問題への対処を求める画期的なものであった。
  • この宣言が出されて10年が経過した今日、社会と科学技術との関わりは、より密接なものとなるとともに、我が国が、科学技術・イノベーション政策を掲げる中で、その重要性は一層高まっていると言える。このため、今後、科学技術・イノベーション政策を国是として推進していくに当たっては、この政策が国民社会の課題・ニーズに応えるものであって、成果は広く社会に還元され、国民社会がその利益を享受できるようにすることが強く要請されることを、改めて認識すべきである。
  • このような点に鑑み、第4期基本計画においては、「『社会とともに創る』科学技術・イノベーション政策」という観点に立脚し、政策等の立案に当たっては、国民の幅広い参画を得て、我が国の科学技術・イノベーション政策が解決すべき重要な政策課題を明らかにし、これを広く社会に発信していくとともに、併せて、社会の理解・信頼を得ていくためのコミュニケーション活動を積極的に進める。

このようなコンセプトは、実は、すでに『平成13年版科学技術白書』のなかで、次のようなかたちで登場している(強調筆者)。

従来、科学技術への無関心の原因は、一般市民の科学技術への理解不足にあるとして、専門家による教育・啓発を図る活動を重視する傾向があったが、科学技術の成果は何を追求すべきか、専門家も気付いていない問題点として何を考慮すべきかなど、市民の側に積極的な観点も含まれていることがある。このため、一般市民に対し、科学技術に対する「受け手」としての興味関心の喚起だけでなく、専門家との「協同の作り手」としての参加意識を喚起することも重要となっている。こうした活動を通じて、国民の科学技術に対する信頼の涵養に努めることが求められている。

で、このなかに登場する「受け手だけでなく協同の作り手としての一般市民」という考え方は、実は、上記の報告書(98年度)でぼくが書いたことでもあった。

「専門家集団と一般市民の関係においては、単に情報のやりとりだけでなく、専門家集団が一般市民の必要に応える形で研究調査や技術開発を行ったり、そのための学習/技術指導や物的・人的支援を行うなど、両者の協力関係を築くことも重要である。また地域の環境調査などでは、いわゆる職業的な専門家よりも、地域に密着した自然観察などの活動や、農業等の労働に従事している市民のほうがより詳細で精確な知識をもっていることも少なくない。すなわち知識の『生産』は、決して職業的な専門家集団のサークル内に閉じているのではなく、『ともに作る』ことが重要だといえる。このため、一般市民に対する働きかけでは、科学技術に対する『受け手』としての興味関心の喚起だけでなく、『協同の作り手』としての参加意識を喚起することも重要である。」

また同じ調査の99年度報告書では、科学教育が専門の小川正賢さんが次のように書いている。

「一般市民の科学技術に対する無関心・懐疑・拒絶の原因を、一般市民の側の科学技術理解の不足とそれに基づく不合理な感情的反応に求め、これを改めるための教育・啓蒙プログラムの推進が唱えられることがある。しかし、『どんな科学技術の成果が追究されるべきか』、『専門家サイドが気づいていないどのような問題点を考慮すべきか』など、市民の側に積極的な観点も含まれていることがあり、専門家と市民双方の相互学習過程という視点が重要となる。すなわち、一般市民に対し、科学技術に対する『受け手』としての興味関心の喚起だけでなく、専門家との『協同の作り手』としての参加意識を喚起することも重要となっている。」

これを見ても、やはり時代は一回りしたのかなと思うのだ。

とはいえ、その動きの、ほんの一隅を占めるだけではあるけど、いろいろ書いたり喋ったり、あるいは、上記の報告書で調査したサイエンスショップを実際に日本で始めてみたりした身としては、まだまだやらなきゃいけないこと、やりたいことがいっぱいある。「やらなきゃいけないこと」としては、やはりサイエンスショップを本格稼動させ、他の大学でもできるようにしていくという責任がある。また科学技術コミュニケーションでは、これまで「専門家と一般市民」という軸で展開されてきたところを、「イノベーションのガバナンス」という文脈で、政策決定者や産業界まで含めたマルチプルな関わりの中で考え、実際にコミュニケーションの仕掛けや実践――たとえば政策決定者と研究者のコミュニケーションとか――を生み出していくことに関わっていかなきゃという思いがある。

しかし、それでもなお、研究上の興味関心として、あるいは実践的な課題として、微力なれども、時代をまた一回しするのに貢献すべく、何をすべきか、何をやりたいかと考えれば、経済学の勉強は避けて通れないように思うのだ。いままでやったことも含めて考えれば、目指すは「科学技術と社会の政治経済学」とでもなるのかな。


まぁ、もちろん、自分にどこまでそれができるかはまったく未知数なのだが。。


そんなわけで、これを読んだ方で、経済にお詳しい方、「まずこれを読め」という入門書や教科書がありましたら、ぜひご教示いただければ幸いです。

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このページは、hirakawaが2009年10月 8日 03:18に書いたブログ記事です。

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