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汚名挽回―米国産牛肉再び輸入全面停止

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米国産牛肉が再び全面的な輸入停止へ。成田空港の動物検疫所で、特定危険部位の脊柱が見つかったとのこと。なーんと、先月の輸入再開からたった1ヶ月と8日という瞬殺的ボロ出し。こんなに早く見つかるなんて、米国政府が約束した「日本向け輸出プログラム」なんてものは、耐震強度偽装を見抜けなかった日本の検査機関並みに怪しいということでしょうか。(でも成田の検疫官はGJ!)

以下はTBSニュースより。

米国産牛肉輸入、再び全面停止へ
 政府は、アメリカ産牛肉の輸入を再び、全面的に停止する方針を決めました。
これは中川農林水産大臣が小泉総理に電話で報告して了承を得たものです。
 この中で中川大臣は「国民の食に対する安心を確保することが大事だ。アメリカにしっかりした対応を求める」と説明。小泉総理も了承したということです。
 この問題は、成田空港の検疫所に到着したアメリカ産牛肉の中にBSEの病原体がたまりやすい危険部位とされるせき柱が含まれていたことが、20日になって判明したものです。
 せき柱は日米両国の協議で輸入が禁止されていることから、農水省と厚生労働省などが対応を協議して決めたものです。(20日19:31)

Yahoo!ニュースの関連カテゴリーはこちら。

Yahoo!ニュース: 米国産牛肉輸入再開

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米国食肉輸出連合会: アメリカのお肉は安全なの?
吉野家の牛丼 安全・安心!納得Q&A  ~アメリカ産牛肉の疑問にお答えします~
 >Q9. アメリカ産牛肉の管理体制は大丈夫なの?

吉野家さん、いい加減あきらめて、悪いお友達とは縁を切ったらどうでしょう?

それと、これは、2ちゃんニュー速+の反応から。。(22:20現在でスレが4つめになってて祭り状態)

215 :名無しさん@6周年:2006/01/20(金) 19:50:11 ID:WRUKZ2W50

   アメリカ牛が 「汚名挽回」  しましたね

「汚名挽回」という言葉、よく「名誉挽回」と間違われて使われるのを目にするけど、これは完全に正しい使い方。可笑しすぎて、ちょっと腹筋よじれました。

ちなみにアメリカ政府、調子に乗って、ほんの一週間前にはこんなことまで言ってました。

<日米農相会談>米国牛輸入対象拡大を要請 時期尚早と反論
訪米中の中川昭一農相は13日、ジョハンズ米農務長官と会談した。日本は昨年12月に生後20カ月以下の米国産牛肉の輸入を再開したが、同長官は輸入対象を30カ月未満に拡大するよう要請した。これに対し、中川農相は「(20カ月以下は)日本の基準であり、米国だけを特別扱いできない」と反論した。(毎日新聞) - 1月14日11時4分更新

ここで「30ヶ月」というのは、米国が「国際基準」として、日本に従うよう求めてるものなんだけど、先月ヒアリングしたBSEの専門家によると、今の国際基準というのは、年間数万頭、トータルでは検出できなかったものも含めれば100万頭の感染牛がいたとされる90年代の英国の高濃度の汚染状況をベースにしたもので、現在のように英国でさえ年間数百頭(2005年は121頭)しか発生が確認されないような低濃度汚染の状況には、そのまま当てはめてはいけないのだそうだ(参考:動物衛生研究所「世界のBSE発生状況」)。

もちろん低濃度ということは、全体的なリスクは格段に低いわけだけど、その分、検査で見つかる割合もぐっと低くなって、特定危険部位除去や飼料規制(肉骨粉の使用禁止、交差汚染の防止など)をしっかりやっておかないと、見えないところで感染が広がっちゃって、再び高濃度汚染の状況になってしまう恐れがある。また感染は、牛と牛の間だけじゃなく、牛から人へ、さらに献血や手術などを通じて人から人へも広がりうる。献血についてはこれまでに二人、感染者が見つかっているそうだ。

そんなわけだから、今回のように、特定危険部位除去の徹底を義務付けた「輸出プログラム」を実施しているはずの食肉処理施設でさえ除去が不十分で、飼料規制も疑いが多く、検査もごく一部の抜き取りサンプル検査しかしていないアメリカの場合は、低濃度汚染状況での不可視の汚染拡大の恐れは十分にある。「30ヶ月が国際基準」なんて寝言を言ってる場合じゃないわけだ。先の専門家は、この4年余り、ずーっと全頭検査も続けてデータを蓄積してきた日本の経験をもとにして、新たに国際基準を作り直す必要があるとおっしゃっていた。(もちろんこれは、日本の対策が十分だという意味ではない。特定危険部位除去に関しては、食品安全委員会や農水省・厚労省も認めているように、ピッシングやスタンニングという汚染のリスクが強いと殺方法が今も行われてる施設がまだまだたくさんあるのだから。)

それから昨日には、こんなニュースも。

<牛肉輸入再開>「早過ぎ?」 食品安全委で疑問の声相次ぐ
食品安全委員会の専門調査会が19日開かれ、米国とカナダでの査察前に、牛肉輸入が再開されたことに対して疑問の声が相次いだ。吉川座長は「再開前に両省が米国に行って見てきて、それから再開だと思う」と発言。寺田雅昭・食品安全委員長も「これでは国民が牛肉(の安全性)について耳を貸さなくなる」と批判した。 (毎日新聞) - 1月19日22時4分更新

そうそう、当時、マスコミは全然突っ込まなかったけど、これも実は大問題だと思う。輸入再開を告げた農林水産省の昨年12月12日のプレスリリース「米国及びカナダから日本向けに輸出される牛肉等の輸入停止措置の解除について」にも書いてあるけど、農水・厚労省が、米国とカナダの輸出プログラムの遵守状況確認のために査察をしたのは、12月13日から12月24日まで。ところが、この査察の真っ最中の16日には第一便が日本に届き(米産牛肉の第1便到着 丸大がサンプル輸入:共同通信)、19日には焼肉屋で食べられちゃっている(米産牛、焼き肉店で復活 外食チェーンが関西で再開:共同通信)。そして、厚労省・農水省の「米国における日本向け牛肉認定施設の査察結果報告」が発表された26日にはスーパーの店頭にも並んでいる(スーパーも米産牛肉販売へ マルナカ、四国で26日から:共同通信)。食品安全委員会に査察の結果報告があったのは、ようやく昨日になってからだ(第35回食品安全委員会プリオン専門調査会)。

他方、12月の輸入再開の前提となっている食品安全委員会のリスク評価「米国及びカナダ産牛肉等に係る食品健康影響評価」(PDF378KB)の結論は、「日本向け輸出プログラムが適切に実施されている」という前提条件が満たされているならば、日本の牛肉と米国・カナダの牛肉のリスクの差は無視できる、としているにすぎない。査察は、この前提が満たされているかを確認するためのもので、それが終わっていない段階では、「リスクの差は無視できる」=>「したがって輸入再開してもよし」ということにはならないわけだ。にもかかわらず査察の最中に輸入を始めちゃったっていうのは、科学的には何の根拠もないフライングである。

そういう意味では、今回の件は、ちゃんと確認をせずに見切り発車しちゃった日本政府にも責任はある。ネット上では、全面輸入停止を即断した小泉首相を「GJ!」と持ち上げる書き込みを見かけるが、輸入条件が満たされていなかったのだから、速攻で停止するのは当たり前の「デュー・プロセス」であり、むしろ、条件が満たされているかを十分に確認せぬまま見切り発車しちゃったことの責任が問われるべきだろう。そこんとこ、履き違えちゃいけない。(まぁ、小泉首相じゃなけりゃ、もう少しグダグダして、特定の業者からの輸入禁止だけで終わってたかも知れんけど。それと、米牛肉にネガティヴな世論を気にして「本当は輸入再開なんかしたくないんだけど・・・」と思ってたとしたら、先方がミスしてくれたのは強運といえるかも。)

とにもかくにも、とりあえず再び全面輸入停止で、事態は振り出しに戻った。さっそく、アメリカさんは何か言ってくるだろうけど、いったいどんなこと言ってくるんでしょうね?まさか「アメリカ産牛肉は特定危険部位がついてても安全だ」とか言ったりして。それじゃもう滅茶苦茶です。

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コメント(2)

初めまして、私は愛媛の大学に通っている学生です。
大学で社会学を専攻しておりまして、食に関して非常に興味を持っております。今回も米国産牛肉の輸入禁止についての情報を得たく検索していたところ、こちらのブログにやってきた次第です。非常にわかりやすく書いてあり、また所々の表現もおもしろく伝えてくださることで、凄く読みやすかったです。ニュースなどではなかなか正しい情報が得られない中、少しでも多くの真実を伝えていただけたらすごくうれしいです。挨拶をしておこうと思いまして、今回は書き込ませていただきました、またお伺いいたします。

umaさん、コメントありがとうございます。お役に立てて光栄です。

マスコミはほんとにちゃんとした報道をしてくれないので、情報集めが大変ですね。とはいえ、あちこちのブログや、食品安全委員会をはじめとする政府の公式文書など一次ソースを見ていくだけでも、ふつうのマスコミではわからないいろいろなことが見えてきます。ここも含めて、あちこちから情報を集め、比較検討しながら、真実を探し出してください。

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このブログ記事について

このページは、hirakawaが2006年1月20日 19:32に書いたブログ記事です。

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