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米加牛肉輸入問題で食案委が再諮問求める?

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出張前のドタバタで見逃してたのだけど、swan_slabさんの6月21日のエントリー「牛肉輸入、安全食品委が再諮問求める(TBS)」を今日読んで知りました。

政府の食品安全委員会がBSE問題を話し合う専門の会議を開きましたが、アメリカ産牛肉の 輸入再開条件を巡る 諮問を出し直すよう厚生労働省などに 求める極めて異例の 事態となりました。
 この専門調査会は、厚生労働省などの 諮問を受けてアメリカ産牛肉の輸入再開条件を 話し合っていますが、会議では 複数の委員が「諮問の記述が不十分で 国民への説明責任を 果たしていない」と 批判しました。
 このため、座長が諮問に至った経緯や背景、趣旨を 詳しく書き直して再提出するよう求める 異例の事態となりました。・・・(TBS 6/21)

このニュースに対してswanさんは次のような疑問を呈されている。

異例の事態とか一部の委員の反発と表現するあたりに、あたかも”不正常な手続き”であるかのように強調する意図が感じられるのだけれど、実際のところどうなのでしょう。

これは至極当然な疑問だと思う。実際、「再諮問」を求めるのは、リスク評価者と管理者の間のリスクコミュニケーションの一部として、本来はいたって正常な手続きだからだ。

このことは、以前にも書いたことがあるけど(BSE審議の空洞化?―政府が審議短縮策、関連:米国BSE問題―4月19日衆院農林水産委員会の気になる発言)、食品安全の国際基準を定めるFAO(国連食糧農業機関)・WHO(世界保健機関)の合同食品企画委員会(コーデックス委員会)では、リスク評価に先立って、リスク評価機関(日本では食品安全委員会)に対し、リスク評価の項目や方針など諮問内容を定めた「リスク評価方針(risk assessment policy)」という文書をリスク管理者(日本では農林水産省と厚生労働省)が作成することを推奨し、その際に留意すべきことの一つとして、次のことを指摘している。

リスク評価に先立って、リスク評価者や他のすべての利害関係者と協議した上で、リスク管理者がリスク評価方針を制定するべきである。この手続きの目的は、リスク評価が系統的で、完全で、偏りがなく、透明性のあるものになるよう保証することである。(CODEX ALIMENTARIUS COMMISSION PROCEDURAL MANUAL - Thirteenth edition, p.44)

要するに、リスク管理者から評価者への諮問というのは、両者およびすべての利害関係者との協議を通じてインタラクティヴに作成せよ、ということだ。その理由を詳しく説明してると、また長くなっちゃうので今日は省略するけど(以前のエントリーにも書いてあるし)、この考え方からすれば、「再諮問要求」は全然「異例」のことなんかじゃない。

ちなみに、上記のTBSの記事が伝えられた6月21日の第26回プリオン専門調査会の議事録はまだ出来上がっていないが、米加輸入牛肉のリスク評価の諮問が行われた第25回の議事録には、すでに、諮問をめぐるリスク評価者と管理者の関係についての議論が記されている。評価と管理の「分離独立」と両者の綿密な「相互作用」という一見相矛盾する要求を課された「リスク分析」というものを、日本の食品安全行政がどう体得していくのか、その試行錯誤の過程が、政治と科学の拮抗が著しいBSE問題を舞台に進められているといえるだろう。

なお、明後日は、東大先端研の「安全・安心と科学技術人材養成プロジェクト」ジャーナリスト向け連続セミナー「リスク社会化と報道」で、リスクコミュニケーションについて喋ることになっている。リスクコミュニケーションというと、たいていは行政や専門家と、一般市民・消費者との間のことを考えがちなんだけど、もう一つ大事な側面として、上記のような管理者と評価者、専門家と行政とのコミュニケーションの問題も取り上げてみたいと思う。

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コメント(2)

こんにちは。
25回の議事録冒頭の議論は、「もしかして、いまさらこんな議論をしているのかも」と思いましたが。。

とはいえ、以下のやりとり。

「諮問をもうちょっとこれは変えた方がいいのではないかとか、諮問の妥当性というか、そういうことというのは検討できる仕組みなんですか。あるいはしたことがあるんでしょうか。(金子専門委員)」
「それはございません。それは、管理側とリスクアセッサーの評価側とは、そこが本当はリスクコミュニケーションが一番大事なところなんですけれども、あまりそこはやっていなかった。逆に、それをやるとなれ合いだとか、独立性が失われるとかということで、逆にやらなさ過ぎたというちょっと反省はございます。(寺田委員長)」
あたりの発言にみられる、政策決定のプロセスの一部に自分たち評価機関があることのジレンマがよくわかりました。

公共事業の環境アセスメントみたいに、あからさまに施工業者が全部請け負って予算と管理手法を耳打ちして下請けに出すみたいなインチキはできないですが、他方で、リスク評価だけをするのだといって管理選択肢について耳を閉ざそうとする状態も効率的ではないですね。

評価機関も、ある程度は、管理手法をコンサルティングできる能力がないと、実際どういう管理をすればどのくらいリスクを軽減できるのか、みたいな話はできないわけで、そう考えると、評価者と管理者のコミュニケーションはそのあたりで必要になってくるんでしょうか。

swanさん、こんばんは。

委員の皆さん、どなたもアカデミックな研究者ですから、やはり政策決定に組み込まれたレギュラトリー・サイエンスの「文化」には全く不慣れなんですよね。

科学と政治の独立性と相互作用の妙をどうバランスさせるか、そのあたりの「文法」を実例を踏まえながら示せたらと思っています。

>そう考えると、評価者と管理者のコミュニケーションはそのあたりで必要になってくるんでしょうか。

まさにその通りですね。25回の議事録には「(米国のBSE管理の)コンプライアンスまで含めて評価するのかどうか」なんていう議論が出てますが、管理の方法や有効性を考慮しなかったら、現実的なリスク評価なんてできないわけですから、何をトボケタことをいってるんだ、と思いました。管理は、まさにハザードに対する暴露経路(exposure)の管理であり、リスク算定の重要な一部ですから。

いずれにしても、プリオン専門調査会の議論は、リスク分析の生きた教材だなぁと思いますね。

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このページは、hirakawaが2005年7月 1日 01:59に書いたブログ記事です。

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