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プリオン専門調査会委員のインタヴューから

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日本農業新聞に今月10、11、12日に掲載された食品安全委員会プリオン専門調査会の吉川泰弘座長、金子清俊座長代理、山内一也委員のインタヴューの発言からの抜粋(強調筆者)。

どなたも、「特定危険部位さえ除去すれば安全」とか「検査は単なるサーベイランス(実態把握)」と主張してはばからない米国のBSE対策やOIE(国際獣疫事務局)の国際衛生基準改正案に対し否定的。辞意を表明している金子さんは、検査の位置付けや、国内対策と米国牛肉問題のリンクに関する政府のあいまいな姿勢を批判している。

吉川泰弘座長:

  • これ[日本の飼料規制]に対し、米国は法律による飼料規制を日本より4年早い1997年から始めているが、牛由来の肉骨粉を使った飼料を豚や鶏に与えることをいまだに認めている。「交差汚染」を完全に防いでいるとは考えにくい。どのくらい飼料規制の実効性が確保されているのか検証する必要がある。
  • 米国のBSE検査の実態や、病原体がたまる脳などの特定部位除去が確実に行われているのかも、重要な検証課題だ
  • 米国産牛肉などの評価でも、国内対策と同じように、[人への感染リスクを踏まえた]医学的な観点を加味した高いレベルの評価を目指したい。
  • 輸入制限しない品目に骨なし牛肉を入れるという提案は、感染牛の牛肉は排除すべきだという世界保健機関(WHO)の勧告との整合性がない。
  • 日本は人への感染リスクを重視して、汚染状況の把握と牛肉の安全性確保を兼ねる検査をしている。医学的な観点を加味したBSE対策を講じている。OIEは国際衛生基準見直しで、日本のBSE検査データや評価法をもっと参考にすべきではないか。

金子清俊座長代理:

  • 牛海綿状脳症(BSE)検査に対する政府の説明が、国内と国外で食い違うことが消費者の困惑を招く大きな要因になっている。政府は、日本で初めてBSEが確認された3年半前、全頭検査による安全・安心の「安全宣言」を出した。ここで検査を感染状況の把握と、牛肉の安全性確保を兼ねる「スクリーニング」と位置付けた。
  • 一方で、国際獣疫事務局(OIE)の国際衛生基準見直しをめぐる専門家からの意見聴取で、政府は検査の役割を実態調査に絞る「サーベイランス」と説明した。検査に対する政府の方針はいつ変わったのか。国内外での説明がぶれるようでは、消費者の信頼を得ることはできない。
  • 検査へのスタンスが揺らいでいるのは、リスク管理をする厚労・農水両省だ。検査緩和に対する消費者の困惑は自らまいた種なのだから、専門家に押し付けるだけでなく、きちんと対処すべきだ。
  • 食品安全委員会の本委員会の一部の委員と、BSEの専門家が集まるプリオン専門調査会の間で意見の食い違いがあることも問題を複雑にしている。本委員会の一部の委員などは、BSEの病原体がたまる脳などの特定部位さえ除去すれば、牛肉の安全性は確保できると主張している。しかし、これは人の健康よりも貿易や経済性を重視した危険な考え方だ。それで危険は回避できるという科学的証拠はどこにもない。特定部位除去を検査で補う必要がある。
  • 米国はBSEの感染拡大を防ぐ飼料規制に抜け穴がある。課題は山積みだ。にもかかわらず政府が「特定部位さえ除去すれば検査をしなくても生後20カ月齢以下の牛の牛肉は日本と同等の安全性といえるか」と諮問するなら、この前提がそもそも成り立つのかを審議する必要があるだろう

山内一也委員:

  • 米国は、BSEの感染源とみられる牛由来の肉骨粉を使った飼料を豚や鶏に与えており、牛が誤って食べる「交差汚染」の可能性があるとみられる。これに対し、日本は2001年10月から牛由来の肉骨粉をすべて処分する飼料規制をしている。この効果で、若い牛の感染牛発生の可能性は相当少ないと推定される。米国が、日本と同等以下の汚染状況といえるかは疑問だ
  • BSE検査の有効性や、病原体がたまる脳など特定部位除去の監視体制についても検証する必要がある。
  • 米国やOIEは一定のリスクを容認する獣医学の観点で、検査の役割を感染状況の把握に絞っている。しかし、その考え方は見直さなければいけない時代を迎えている
  • BSEは人に感染し、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発生させる。輸血で人から人に感染する可能性があることも、近年明らかになった。特定部位除去だけでは人の健康は守れない。検査で感染牛を食用からまず除外する必要がある。特定部位除去は、その上で病原体の蓄積が少ない検査の検出限界以下の感染牛のリスクを低減するものだ。
  • 日本は人の健康を重視し、検査を牛肉の安全性を確保する「スクリーニング」と位置付けている。感染状況の把握は二次的なものだ。日本のBSE対策は、世界に誇れるものだ。消費者の食の安全に対する意識も世界で最も高いレベルにある。日本は自信をもって独自のBSE対策を確立し、世界のBSE対策の向上に貢献すべきだ

米国牛肉のリスク評価にも、ぜひ、この勢いで臨んでいただきたい。座長は立場上難しいかもしれないが、金子座長代理、山内委員には、「物分りの悪い委員」に徹していただきたい。特に金子座長代理には、辞意を翻し、最後まで戦っていただきたい。金子さんは、辞意の理由を「私自身、国内の議論が米国産の輸入再開に利用されるのではないかとの消費者の懸念に対し、それは違うと説明して回った。結果的に虚偽の説明になったことの責任を取りたい」(産経新聞、5/15)と説明されているが、そうなったのは金子さんの責任ではなく、政府の側の責任だ。農水省・厚労省も騙す意図はなかったのかもしれないが、少なくとも、国内対策のレヴューも十分に行われていない段階から、アメリカに圧されて、勝手に「20ヶ月以下の牛ならOKね」なんて言質を与えるようなヘタレ外交をやってしまったのは政府なのだから(とくに外務省=米国通商代表部の使いパシリ?)。

ちなみに米国が支持しているOIEの基準緩和案(次の日曜22日からの総会で提出予定)に対しては、政府もがんばってる。緩和案の「目玉」のひとつは、「適切な処理をされた骨のついていない牛肉については、無条件で貿易できる」とすることだが、これに対して農水省は、5月10日にOIEに提出した「BSEコード改正案に対するコメント」[PDF]で次のように述べている。

  • BSE感染牛に由来する骨格筋肉については、脱骨されていても、とさつ及び食肉、処理の工程において蓄積した異常プリオンたん白質に汚染される可能性があるためフードチェーン及びフィードチェーンから排除すべきである。この改正案は、BSE感染牛は完全に処分すべきとの規定を他の部分( 第3 条及び第4 条) で含んでいるBSEコード改正案そのもの及び同様の勧告を含む96年のWHO勧告との整合性がない。
  • 仮にこの提案が「B S E 感染牛由来のものを除く」という条件を含むように修正されるとしても、第2 カテゴリー及び第3 カテゴリーの国の牛に由来する脱骨した骨格筋肉は、食肉処理工程においてS R M及びその他の組織による汚染を防止するための措置( カテゴリーにより異なる) が確保されていないため「無条件物品」とするこ、とはできない。したがって、このような条件を適切に適用するためには、脱骨された骨格筋肉は、現行コードのとおり第1 0 条及び第1 1 条において規定することが必要である。
  • コード委員会は当該組織の感染性を証明する試験報告はないという認識に基づき骨なし筋肉及び血液・血液製品を無条件物品に追加することを提案している。しかしながら、我々が承知する限りでは、この点に関して実施された試験は極めて限られており、リスク管理措置の変更につながるような新たな知見は最近報告されていない。したがって、そのような重要な改正を提案する前に、科学的根拠が加盟国に十分提供され、加盟国がその提案を受け入れられるか否かを適切に決定することができるようにすべきである。
  • これに関連して、最近我が国において、と畜場における緊急とさつ牛及び農場における死亡牛のBSE感染牛から、SRM以外の組織( 腰神経等の末梢神経) に微量の異常プリオンたん白質の蓄積が確認されたことに留意願いたい。動物衛生研究所がこれらの組織の感染性を確認するための試験を現在継続しているところである。この試験は2年以内に終了する見込みである。極く限られた科学的根拠が利用可能な状況においては、人と動物の安全を確保するため、より慎重なアプローチが採用されるべきである。

要は、「適切に処理されてれば・・・」という前提自体が疑わしいんだよ、ということだ。まったくごもっとも。OIEの総会、そして対米交渉のいずれも、その調子でがんばってくれ!農水省の中の人!

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このページは、hirakawaが2005年5月17日 04:48に書いたブログ記事です。

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