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ツッコミどころ満載な米政府のBSE意見書

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数日前のエントリーで、米国政府が、BSE検査の対象月齢を30ヶ月以上まで緩和せい、という意見書を、食品安全委員会のパブコメに提出したというニュース記事をリンクしたが、この意見書本体の日本語訳が、米国大使館のサイトにアップされてました。裏から(だけ)でなく、表から堂々と意見をしてくるなんて、けっこうアッパレというか、バカ正直なかんじもします。

日本における牛海綿状脳症 (BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)に関する審議結果(案)についての意見 (2005年4月12日 アメリカ合衆国政府)

トラックパックいただいた食べる・聴くさんの「アメリカ合衆国って、何様?」で知ったのだけど、ツッコミどころ満載でした。以下、意見書に対する日本側の「仮想回答」を、パブコメに対する官庁の回答の語り口を真似て、「心の声」付き([・・・]内)で書いてみます。(まぁ、実際のパブコメの回答は、こんなに詳しくないのだけど。)


食品安全委員会のプリオン専門調査会の仮答申(2005年3月28日)に対するパブリックコメントで、2005年4月12日に同委員会事務局に提出されました米国政府の「日本における牛海綿状脳症 (BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)に関する審議結果(案)についての意見」(以下、意見書。)について、以下のとおりお答えいたします。

まずはじめに申し上げておかねばならないのは、BSE問題をめぐる日本の世論の動向です。わが国は、[味にも安全にも無頓着などこかの肥満大国と違って]もともと食の安全について[も、味についても]国民の関心が高い国柄ですが、2001年にBSE感染牛が初めて確認され、また、本年2月に日本初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を原因とする死者が確認されたため、食の安全、特にBSE問題に対する国民の関心はこれまで以上に高まっています。このような時期に、成果を焦るあまり、あたかも貴国政府がわが国に圧力をかけているかのような言動をされることは、わが国の国民の反発を招き、この問題の早期解決をますます困難にするものであることをご承知ください。[よーするに、買ってもらいたきゃ、客の注文をちゃんと聞けっつーの。]

以下、貴意見書の主張に即して、わが国の見解を述べさせていただきます。

食の安全を確保するうえで若齢牛に対するBSE検査は不必要であるという報告書の結論は、特に歓迎するものである。具体的には、と畜時にすべての牛を対象に行われている現行の検査対象を21カ月齢以上へと新たな体制に変更することを推奨している。・・・ (強調筆者、以下同)。

ご指摘の点については、事実の誤認がございます。貴意見書が参照されている3月28日の食品安全委員会プリオン専門調査会の報告書(以下、報告書。)の「結論」には、定性的および定量的評価の結果、「検査月齢の線引きがもたらす人に対する食品健康影響(リスク)は、非常に低いレベルの増加にとどまるものと判断される」とあるだけで、「BSE検査は不必要である」、「新たな体制に変更することを推奨する」ということに相当する文言はございません。[都合よく脳内作文するな、バカヤロー。日本語読めねーのか?ゴルァ]

ついでにいえば、今回審議されましたのは、あくまで日本国内の状況に関するリスク評価でありまして、貴国の状況とは全く関係ありません。当然ながら、輸入再開の是非を決めるには、貴国の状況を評価する必要があり、そのためには、貴国の飼料規制、危険部位除去、BSE汚染度に関するデータが必要となります。報告書においても、「おわりに」の結びとして、次のように書かせて頂いております。[あんたの国のことだよ。]

従って、今後諸外国におけるBSE感染リスクの評価を行う際には、総合的な評価を行うための多様なデータの存在が必須になるものと考える。

なお、参考までに申し上げますと、これら必要なデータが貴国より十分に提供されるかどうかについては、残念ながらわが国は非常に懐疑的です。現に貴国は、月齢確認方法の信頼性を検証するのに必要なものとして、わが国が請求している追加的データの提出さえ拒んでおります。また、次のような主張を[いけしゃーしゃーと]されることからも、貴国には上記データの提出の意思はないものと考えざるをえません。

・・・公衆衛生保護の観点からはSRMの除去が最も重要な対策である。そして、日米両国とも適切なSRM除去を保証する強固なプログラムを確立している。

報告書でも指摘させて頂いたピッシングの問題もあり、わが国のプログラムもまだまだ十分強固であるとはいえません。しかしながら、現状を推し量るデータは得られており[ホントは十分じゃないし、安易に公表できないやばいデータもあるんだけど]、それらをもとに今回のリスク評価は行われました。しかしながら貴国については、必要なデータはほとんど揃っておらず、貴国の状況についてのリスク評価も行われておりません。従って、少なくとも現段階におきまして、「日米両国とも適切なSRM除去を保証する強固なプログラムを確立している」という主張に同意することはできません。[一緒にするなっつーの。]

また、この点については貴国の対策の信頼性について重大な疑いを呼び起こす報道が、後を絶たないことも指摘しておかねばなりません。貴国政府は否定されるばかりですが、食肉処理労働者の組合の代表者、OBおよび現役の食肉検査官、全米食品検査官合同評議会議長と、次々と貴国の食肉処理の杜撰さを告発する声が続いております。わが国の報道機関や、民主党による現地調査でも、同様の指摘がなされております(日本農業新聞「特集-米国産牛肉は安全か BSE対策の抜け穴」民主党米国BSE調査団報告書)。貴国が、これらの疑いを合理的に否定できるデータを提出し、わが国の食品安全委員会等の専門家のみならず、BSE問題について経験豊富な欧州の専門家、およびOIE(国際獣疫事務局)及びWHO(世界保健機関)等の専門家による検証を受けてからでなければ、わが国としては、貴国のSRM除去プログラムが強固に確立されているかどうかの判断は保留せざるをえません。[自己申告じゃダメなんだよ。]ご存知のように[え?もしかして知らない?]、欧州食品安全機関は、貴国のBSE対策システムを「極度に不安定」と評価し、「SRM又は死亡牛が化製処理され、飼料原料として使われている」と判断しております。(参考:欧州食品安全機関による米国の地理的BSEリスク評価(GBR)の結果米国の地理的BSEリスクの評価に関する作業グループ報告。)

さらに貴意見書は、飼料規制についても、次のように、同規制が「米国自国のBSE対策においても重要な要素である」と述べられております。しかしながら、この認識が貴国で十分に共有されているかどうかは大変疑わしいと考えております。[こっちのことをエラソーに「称賛」してる場合じゃないだろ、ボケェ!]

また、報告書は効果的な飼料給餌規制(フィードバン)の重要性を強調している。牛用飼料に反芻動物タンパクが混入することを禁止することは、牛をBSEのまん延から保護するうえで極めて重要な要素である。これは米国自国のBSE対策においても重要な要素であり、日本の今回の見直しにおける更なる強化努力を称賛する

まず第一に貴国のシステムでは、反芻動物から反芻動物への肉骨粉使用しか禁じておらず、飼料工場等における交差汚染の可能性が否定できません。これに対し、欧州では動物から動物への、わが国では動物から反芻動物への使用を禁止しております。貴国がわが国のシステムについて度々主張される「国際的な関連との調和」は、貴国の飼料規制についても必要だと考えられます[他についてもな]。一昨年末のBSE発生を受けて貴国農務省が召集された国際専門家調査団の報告書でも、現行の対策では不十分であり、全てのほ乳動物と家禽由来のたんぱく質を反すう動物の飼料から排除することを勧告しています[もう忘れちゃった?](参考: 調査団報告書原文Report on Measures Relating to Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE) in the United States[PDF:421KB]、仮訳[PDF72KB]、解説)。

また、欧州食品安全機関の評価でも、貴国のシステムは、フィードバンについては「意図的な給与が行われている可能性があるか、牛飼料が交差汚染を受けている可能性が高い」、化製処理(レンダリング)についても「高リスク材料も低リスク材料も化製処理時に133℃・3気圧・20分の加圧処理されていない」とされております。ご承知のように[これももう忘れた?]、昨年の日米の専門家会合でも、貴国には交差汚染のリスクがあることを、わが国から指摘させていただいております。

この点につきましては、さらに本年3月14日に、貴国の会計検査院(GAO)も、貴国のFDA(食品医薬品管理局)による飼料規制は、改善はあるものの監督体制が不十分であるとの監査報告を公表しております。(報告書原文:Mad Cow Desease: FDA's Management of the Feed Ban Has Improved, but Oversight Weaknesses Continue to Limit Program Effectiveness [PDF1.32MB]. 参考:米国議会検査院 FDAのフィードバン管理は不適切 BSE拡散のリスクに警告。)また昨年7月に農務省とFDAが提案した規則の強化案も、飼料業界等の反発が著しく、いつどのように実施されるのか、全く見通しが立たない状況であると認識しております。(プレスリリース:USDA And HHS Strengthen Safeguards Against Bovine Spongiform Encephalopathy (2004.7.9)、ルール案:Federal Measures To Mitigate BSE Risks: Considerations for Further Action;Proposed Rule (2004.7.14: PDF290KB)。参考:「米国FDA、BSE感染防止ルール強化を発表、なお抜け穴、実施も何時のことか」「米国飼料業界、排除特定危険部位は脳と脊髄に限れ FDA交差汚染防止案に反対」。)

これらのことから、貴国の飼料規制の有効性や改善状況を証明する追加の調査の実施とデータの提出、および国際的な専門家による検証がなければ、わが国としては、貴国において飼料規制の重要性が広く認識され、十分有効に規制が実施されていると考えることはできません。また、それらの信頼できるデータがなければ、食品安全委員会による米国牛肉のリスク評価を行うことが大変困難になり、輸入再開時期をいたずらに遅らせることにもなることを、併せてご承知ください(※注)。わが国の強化努力を称賛していただけたことは大変喜ばしいことでありますが、貴国におかれましても、称賛に値する一層の努力が払われることを奨励いたします。

※注: ここでも以前にとりあげたように、日本政府は、飼料規制の有効性を輸入再開条件から外してしまっている(参考)。確かに、今年2月24日の衆院農水委員会の質疑における、「飼料規制は牛から牛へのBSEの伝播を防止する上で重要だが、牛肉の安全性を確保する措置ではない」という中川農水省消費・安全局長と島村農相の答弁にあるように、牛肉の安全性と飼料規制の有効性を切り離すことは可能だ。飼料規制が不十分でも、水際規制として、検査による感染牛のスクリーニングやSRM除去が徹底されているならば、牛肉そのもののリスクは低くなる。しかし、そのリスクを評価するためには、検査による汚染状況のサーヴェイランス・データやSRM除去の実施状況に関するデータに加え、飼料規制に関するデータも必要である。いいかえれば、輸入再開条件に、日米間で同等の飼料規制の体制を構築することは除外するとしても、輸入再開に必要な牛肉のリスク評価をするためには飼料規制の現状に関するデータは不可欠なのである。
 なお、「牛肉の安全性と飼料規制の有効性を切り離す」というのは、水際での話に過ぎない。食肉のリスクを下げる最も根本的で効果がある方法は、そもそもBSE感染牛が発生しないように、飼料規制を徹底させ、すでにいる感染牛についてもスクリーニング検査で排除する「BSE清浄化」であるのはいうまでもない。SRM除去やスクリーニング検査にしても自ずと技術的限界があり、それらをくぐり抜けて異常プリオンが食肉に残存する怖れや、現在定義されているSRM以外の部分(末梢神経や傷ついた臓器など)からも異常プリオンが検出されている最近の知見に照らしてみても、そうである。

次に、以下のパラグラフについて。

報告書では、仮答申の根拠を日本において21カ月齢と23カ月齢の若齢牛で予備的なBSE症例が発見されたことに置いている。しかし、これらの2症例は国際的な科学者間でいまだBSEと確定されていないことを指摘することが重要である。BSEに関する科学的な知見を広げるためにも、これらの症例について国際的な科学的再調査の実施が望まれる。これら2例の予備的な診断を確定するために行われているマウス実験の結果について国際的に情報を共有するよう日本政府に促したい。

21カ月齢と23カ月齢の若齢牛でのいわゆる「非定型BSE」については、わが国として、厚生労働省の「牛海綿状脳症の検査にかかる専門家会議」において、様々な事実を踏まえた科学的議論の結果、BSEと最終判断したものであり、たとえば国際獣疫事務局(OIE)等の判断がどうあろうとも、科学的な証拠で否定されない限りは、この判断は変わらないものと考えております(参考:平成17年4月14日石原農林水産事務次官記者会見概要東京新聞による食品安全委員会プリオン専門調査会・吉川委員長のインタヴュー)。ただし、BSEおよびヒトのvCJDについては、全般的にまだまだ科学的に解明されていない不明な点が多く、わが国としても、国際的なさらなる研究が必要だと考えております。また、国際的に合意された結論がないことを理由に、規制措置を緩める(具体的には検査対象月齢の下限を30ヶ月に引き上げる)ことは、予防の観点から有効ではないと考えます。これはSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)第五条七が規定する「関連する科学的証拠が不十分な場合」に相当し、同協定にも反しないものと考えます。

それと同時に、わが国としては、貴国の検査体制の有効性に強い疑問があることをご承知いただきたく存じます。食品安全委員会プリオン専門調査会の吉川委員長は、米国牛肉のリスク評価にあたって、これが障害であることを指摘しております(前出の東京新聞インタヴュー:「米国のデータ不足は頭が痛い。どれくらい米国に(潜在的な)BSE感染牛がいて、飼料規制などの効果はどの程度か、食肉処理、脳など危険部位の除去は適切か、などから消費者のリスクがどの程度かを評価する。ただ、米国のBSE検査頭数は日本に比べて圧倒的に少なく、そこが評価上のネックになるかもしれない」)。

また、奇しくも、貴意見書が提出された今月12日には、カナダ放送協会(CBC)が、すでに1997年に貴国でBSEが発生していた可能性があることを、独自調査に基づいて報じております。それによれば、現在は閉鎖されているニューヨーク州のと畜場で、同年5月と8月に歩行困難など、BSEを疑わせる症例を示した牛が計2頭発見されています。CBCでは、両方の牛を撮影した貴国農務省のビデオを入手し、公開しておりますが、その中で一頭目の牛は小刻みに震え、二頭目は立ち上がれない様子が見えます。これらの牛は、その後の同省による検査で陰性と判定されていますが、これらの牛を最初に調べ、BSEを疑った農務省食肉検査官(当時)マスオ・ドイ氏は、その後に行われた農務省の検査は正当なものでなかった怖れがあると指摘しております。どちらの牛も、BSE検査に必要な脳の組織が紛失または著しく欠落していたとのことです。これは事実隠蔽の意図の有無とは別に、貴国の検査システムの有効性に対する重大な疑いを呼び起こす問題です。CBCの翌日の報道も伝えているとおり、貴国農務省はこれを否定しておられるようですが、わが国としては、この件につきましても、第三者による詳細な調査を求めます。[自己申告はダメだぞ、自己申告は。]

さらに、このような貴国の検査体制の信頼性に対する重大な疑いが持ち上がっているにもかかわらず、本日16日の新聞各紙が伝えているように、貴国ジョハンズ農務長官は、検査体制を緩和し、歩行困難等の症状のあるいわゆる「ヘタリ牛」の一部を食用に供する規制緩和を行う考えを発表しています。輸送中等に足をけがした明らかに生後30カ月未満の牛を規制対象から外すとのことですが、(1)BSE感染牛が歩行困難のため骨折したり、(2)BSE症状を見せながらも、それを隠蔽する目的でわざと業者が足を折るなどの不正が行われる可能性を、どのようにして排除し、排除されていることを保証するのでしょうか。この点についても、明確かつ真摯な回答がなされることを強く求めます。[わざと骨折させるなんて、誰でも考えそうだもんな。絶対誰かがやるよね。「この牛、足がガクブルしてます」→「よし、足折っとけ」→そのままお肉になって食卓へ。実にありがち。]

最後に、前後いたしますが、貴意見書第4パラグラフで、SRM除去の重要性を強調するにあたり、貴意見書は「世界中の科学者は、一定水準でのBSE検査が牛の健康を監視するための有益なサーベイランス手段であることに賛同している」と述べています。この点につきましては、わが国の検査は、サーベイランス(感染状況の調査)のみならず、SRM除去と相補いあうかたちで、スクリーニング(食物連鎖からの感染牛の排除)の目的をもって実施されていることをご承知ください。これは、日米間の専門家会合等でも繰り返し説明させて頂いていることでもありますので、改めてご確認下さるようお願いいたします。[ひとの話、聞いてんのか?まったく。]

以上。[あ~疲れた。]


とまぁ、こんなかんじのことを日本政府が答えてくれるといいのだが、という気持ちで書いたみたが、実際はどうなるんだろう?

ちなみに昨日15日に日本政府は、米通商代表部(USTR)が先に公表した今年の外国貿易障壁報告書への意見書を発表し、その中で、「これは貿易問題ではなく食の安全の問題」と反論し、米国に対し、さらなる情報を提供するよう要求している。おぉ、ちゃんと言うこと言うじゃんと少し見直した。これが、単なる国内向けのポーズでないことを願うばかりだ。(ちなみに「これは貿易問題ではなく食の安全の問題」というのは、「輸入禁止は、消費者の健康保護であって、国内産業保護ではない」という意味だが、国内産業からの圧力もあるから、消費者の健康保護という大義や科学ベースという原則が通用しやすくなっているともいえると思うのだが、どうだろう?)

意見書は、すでに昨日のうちに外務省のHPで公開されている。

2005年外国貿易障壁報告書(米国通商代表部)に対する日本政府コメント(PDF)

BSE問題については7-8ページにある。後半では、米国政府のご都合主義的な「脳内作文」「脳内合意」も指摘している。以下にコピペしておきます(強調筆者)。

(イ)BSE問題に関する日本政府の基本的な考え方
(i)日本は、食料の60%を海外からの輸入に依存していることに加え、もともと食の安全については国民の関心が高い国柄であるが、2001年にBSE感染牛が初めて確認され、また、本年2月には日本で初めての変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を原因とする死者が確認されたため、食の安全、特にBSE問題に対する国民の関心はこれまで以上に高まっている。
(ii)BSEや変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は比較的最近になって確認された病気であり、十分な知見が得られておらず、慎重な科学的分析が必要とされている。このため、日本政府は、BSE発生国から輸入される牛肉及び牛肉製品については、例外なく、日本産のものと同等の安全性が確保されることが確認されるまでの間輸入を認めていない。このような措置は、WTOの衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)上の規定とも合致したものである。
(iii)日本政府は、米国産牛肉の輸入再開問題についても、このような、食の安全と消費者の信頼の確保を大前提に科学的知見に基づいて解決を図るとの一貫した基本方針の下で対応してきている。日本政府が現在米国産牛肉の輸入を停止しているのは、国内産業を保護しようとしているためでは全くなく、その意味で本件は貿易問題ではなく、食の安全の問題である。
(iv)日本政府は、BSEの国内対策の妥当性について適切にレビューを行っている。事実、食品安全委員会において、検査により20か月齢以下でBSE感染牛を確認できなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき旨の結論が導き出されたことから、現在、リスク管理官庁(厚生労働省及び農林水産省)が、国内のBSE対策として導入されている全頭検査を最新の科学的知見に基づいて見直すこと等の是非を食品安全委員会に諮問している。本年3月28日、同委員会プリオン専門調査会において報告書案がとりまとめられ、現在、パブリック・コメント手続に付されている。
(v)上記のような日本政府の立場は累次の日米協議において米国政府に説明してきており、本報告書にも記述があるとおり、昨年10月には、日米間の牛肉貿易再開に向けた具体的な手続きについて、日米政府間で認識の一致が見られた。日本政府は、科学的知見に基づき、日本の消費者の食の安全の確保を前提に、問題が適切に解決されるよう、必要な国内手続が着実に行われることが重要と考えている。国内措置の見直しが審議されている現段階において、貿易再開の具体的時期を明示することはできないが、日本政府としては、この問題の早期解決が必要であるとの認識を米国政府と共有しており、この問題が日米関係の大きな阻害要因とならないようにすることが必要との考えである。

(ロ)「外国貿易障壁報告書」の該当部分に対する具体的指摘
(i)本報告書には、日米間の牛肉貿易再開後6か月で、より通常の形での貿易形態に復する方向で、貿易プログラムの見直しが行われる、との記述がある。しかしながら、1)日米間で認識を共有しているのは、昨年10月に公表した共同記者発表に、「BEV(牛肉輸出証明)プログラムは、適当と考えられる形で、2005年7月をめどに、修正のための検証が行われる。日米両政府の実務担当者による共同の検証においては、OIE(国際獣疫事務局)及びWHO(世界保健機関)の専門家により行われる科学的検討が考慮される。とるべき行動を含む検証の結果は、両政府の一致した判断によって得る。日本の場合、その結果は食品安全委員会の審議を条件とする。」と明記されていることがすべてである。2)したがって、「貿易再開後6か月」で、貿易プログラムの見直しが行われるとの記述や、「より通常の形」での貿易形態に復する方向で、貿易プログラムの見直しが行われるという記述は正確ではない。
(ii)また、「2004年10月23日に両政府は、日米間の牛肉貿易再開の道のりをデザインした枠組に合意(agree)した」とあるが、共同記者発表では「認識を共有した(shared the view)」となっている。
(iii)なお、「米国政府は、米国産牛肉に関する科学及び消費者の安全に関して日本から提起されたすべての関係する質問に対処してきた」とあるが、本問題の早期解決のためには、両国のBSE対策の内容等について、引き続き両政府間で必要な情報の交換を行っていく必要があると考えている。

それと、この意見書の冒頭の「総論」には、こんなパラグラフもある。ま、よーするに、買ってもらいたかったら、売れるようなもの作れ、ゴルァってことだ。(同じことは、昨年の意見書にも書かれている。)

さらに、本報告書においては、ある分野の日本市場における米国の参入実績が停滞していることをもって日本の市場アクセスに問題がある旨結論づけている部分が随所に見られるが、これに賛成することはできない。市場原理の下では、シェア等の実績は需要構造、供給者側の努力を始めとする様々な要因によって決定されるものであり、米国製品の日本市場におけるシェアが低いことと、日本市場が「閉鎖的」であるか否かは全く別の問題である。

最後にもう一つ。

BSE-米国牛輸入再開問題については、米国政府はどこかの独裁政権並みに信じられないのだが、その一方で、たとえば会計検査院が「FDAの飼料管理は不十分」という報告を発表したりして、米国では、他律規制(権力分立)による「チェック・アンド・バランス」に基づくガバナンスが機能してるんだなぁとも思ってしまう。イラク戦争についても、「大量破壊兵器はなかった」、「戦争の大義はなかった」という報告書が出てくるし。そういうことを望むべくもない日本に住む者としては、やはりアメリカはすごいと思ってしまう。リスクアセスメントのリスクマネジメントの分離というリスクアナリシスの基本原則に基づいて設置された食品安全委員会は、そういうガバナンスを実現するためのものなのだが、果たしてどこまでこの理念を実現できるのか、とても見通しは暗い。米国の貿易障壁報告書に対する上記の意見書のような毅然とした態度を、単なるポーズでなく、実質的にドーンと貫いて欲しいもんだ。

<追記>
BSE問題について、さまざまな新聞記事や論文を集めて精力的に記事を書かれているSpeak Easyさんが、「米合衆国CJD審査への懸念」を取り上げている。この問題も、牛の飼料規制、SRM除去、検査などの信頼性に対する疑いと並んで、深刻な問題だ。より正確なアメリカ牛肉のリスク評価をするためには、牛のデータのみならず人間のデータも求めていかなくてはならないだろう。もちろん、アメリカはそれを拒むだろうし、またSpeak Easyさんの記事が伝えているように、そもそも(これまた)ちゃんとデータを集めていないのだが。

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コメント(2)

いや、さすが、大学の先生。私などの及ぶところではありません。論点をしっかり押さえながらも、楽しんで読めました。「心の声」付き、最高!
ところで、牛肉のリスクとは別に、BSE清浄化の問題も忘れてはならないと思うのですが。流通業に携わりながら畜産現場も見てきた人間の意見です。

楽しんで頂けて光栄です。
あまりにアメリカの言い分が癪に触ったので、パロディにでもしないと、精神衛生に悪そうですからね。

清浄化の重要性についてはおっしゃるとおりだと思います。それこそ根本的解決ですよね。それに、清浄国という条件を、輸入条件から外すというのは、n_ayadaさんがリンクされている中村敦夫元議員が国会質疑で指摘されているように、アメリカだけを特別視することになりますし。

http://www.monjiro.org/hokoku/iinkai/nosui/040128.html

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