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ジュネーヴ条約追加議定書~無防備地域宣言

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「非暴力オタク」のウチの妻が今日行ってきた「無防備地域宣言学習と公園のつどい」という集まりの話。昨夜夕食の話題に上って、「さ、さよくの集会に行くのか?(笑)」とか笑っていたのだけど、聞くとけっこう面白そうな話だったようだ。

「無防備地域(Non-defended locality)」というのは、恥ずかしながら勉強不足で知らなくて、「無防備」という言葉から、ついつい昔の某党の「非武装中立」とか、ファンタジックな(fantasticではない)お話かいなと思ってしまったり、はたまた「非暴力主義ってのは、非暴力的抵抗であって、防衛しないってことじゃない。文字通り自分の命をかけて、仲間を、地域を、国を守ることだ」ということからいうと、「無防備」はバッドネーミングだよねーとか、いろいろツッコミどころ満載な話かと思っていた。

しかし、ところがどっこいそれは、国際的な武力紛争の犠牲者を一層保護することを目的とし、傷病者、捕虜、文民等の保護並びに戦闘の方法及び手段の規制等について定めたジュネーブ条約第1追加議定書第59条(Article 59)に規定された国際法上の概念で、この議定書は、1977年に成立し、160ヶ国以上が批准ないし加入してるものなんだそうだ。

ここで「ジュネーブ条約」とは、

の4条約の総称で、さらにこれに

を加え、他の様々な条約と慣習法を総称して「国際人道法」と呼ばれてるのだそうだ(参考:「赤十字と国際人道法」日本赤十字社)。これらの基本的な考え方は、日本赤十字社の「ジュネーブ条約及び追加議定書の基本法則」(PDF3.14MB)と「ICRC 国際人道法 あなたの質問にお答えします」(PDF1.34MB)に詳しくかかれている。

そして、この第1追加議定書によれば、次の4条件をクリアしたうえで「ウチの地域は無防備地域ですよ」と宣言してしまえば、その地域への一切の武力攻撃が法的に禁止され、紛争相手国はそれを受領する義務を負うことになってるのだとか。外務省の「ジュネーヴ諸条約及び追加議定書の主な内容」にもまとめられているように、議定書では、この無防備地域(外務省訳では無防備地区)以外にも、自然環境や文化施設の破壊も含めたさまざまな犠牲者に対する保護が盛り込まれている。

  • 戦闘要員、移動可能な兵器・軍用設備が撤去されていること
  • 固定の軍用施設・建物がある場合は、敵対目的に使用しないこと
  • 当局又は住民により、敵対行為がなされないこと
  • 軍事行動を支援する活動を行わないこと

「無防備地域宣言」とは、このような条件を満たすようにして、条例で、自分の住んでる地域を無防備地域として宣言しちゃおう!という運動らしい。(これについて詳しくは妻のブログへ。)

ちなみに日本の政府は、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリア、オランダなど西側先進国はもちろんのこと、中国や北朝鮮まで追加議定書を批准してるなかで、77年に議定書が定められて以来、ずぅーっと批准してこなかったのだが、去年になってひょっこり批准している(2004年8月31日。批准国のリストは日本赤十字社のHPにある)。その直接の理由は、国民保護法などいわゆる有事法制とのからみ(参考:「有事法制関連法」首相官邸)。国会では、第159回国会で審議され、2004年6月14日の参議院本会議で締結が承認されている(議事録は、国会議事録検索システムで「ジュネーヴ諸条約 追加議定書」をキーワードに探せる)。

ついでにいうと、当然といえば当然だが、アメリカは、ジュネーヴ4条約は批准しているものの、追加議定書は批准していない。そりゃそうだ。だって、議定書に従ったら、アメリカがイラクやアフガニスタンでやってることの多くが堂々明白な国際法違反になってしまうんだから。(ジュネーヴ4条約だけでもすでに違反続発だろうけど。)モスクのような宗教・文化施設も破壊してるし、病院を占拠・破壊したり救急車を攻撃したともいわれている。砂漠地帯とはいえ、自然環境も大幅に損なわれてるはずで、「戦争の環境負荷」、とくに二酸化炭素排出による温暖化の促進というものを真面目に考えるだけでも、もはや大規模火器や、大量のジェット燃料を燃やして飛ぶミサイルや戦闘機を使った戦争なんて、まるごと違反になるともいえるんじゃないだろうか。91年の湾岸戦争のときは、石油基地を攻撃してるし(イスラエルはかつてイラクの原子力施設を破壊したこともあったな)、おまけにその時は流れ出した油で海が汚染され、海鳥が油まみれになるという環境汚染まで引き起こしていた。しかも、当時はそれを「フセインがやった、フセインはひどいやつだ」と、相手のせいにして、攻撃を正当化するプロパガンダまで流してたし。そんなことばかりやってるアメリカは、絶対議定書を批准なんかするつもりはないのだろうな。

他方、攻撃されたイラクはというと、こちらもジュネーヴ4条約には加入しているものの、議定書はしてない。化学兵器によるクルド人虐殺をやったというフセイン元大統領にとっても、議定書は手足を縛るものでしかなかったということだろうか。

ただし、日本赤十字社の「ジュネーブ条約及び追加議定書の基本法則」(PDF3.14MB)の訳者注によれば、「第1及び第2追加議定書については・・・第一線の実務に関係する諸規定は、既に国際慣習法を構成しているので、追加議定書の当事国であるかどうかにかかわらず、関係規定は当然に遵守すべきものである」と書かれているから、議定書を批准していなくても、法は適用される。だから、今回のイラク戦争でも、各都市が武装解除した上で「無防備地域宣言!」しちゃえば、攻撃を免れた可能性はあるし、それでもアメリカが攻撃したとすれば、堂々と国際法違反の「戦争犯罪」と断ずることもできただろう。(繰り返すが議定書抜きでも、両国が加入してるジュネーヴ4条約にすでに違反してるだろうけど。)

とはいえ、戦争犯罪であっても、今のところはそれを裁くことで、拘束力を持たせることができないのが厳しいところ。国際的には、まさにこの欠点を補うために、1998年に戦争犯罪人を処罰する常設の裁判所を設置する条約(「国際刑事裁判所設立に関するローマ規定」)が結ばれ、2002年に発効し、国際刑事裁判所が創設されることとなったわけだが、この条約もアメリカは批准・加入していない。う~ん、ほんと困ったチャンだ。日本も、有事法制とのセットで批准したことだし、日米安保の枠組みを利用して、なんとかアメリカにも批准するよう働きかけられるといいのだが、まぁ、100年経っても無理だろうなぁ。地球温暖化防止の京都議定書では、2013年から始まる次の適用期間(京都議定書バージョン2)では、批准できる主体を国に限らず、州や都道府県にも広げようという話もあるらしく、そうするとアメリカでも、カリフォルニアとか温暖化対策に積極的な地域をどんどん加えて、連邦政府が反対でも実質的にアメリカを議定書の枠組みに入れてしまうってこともありうる。けれど武力行使ってのは国家が主体だから、ジュネーブ条約の場合は州単位にはできないんだよなぁ。何か別の途を考えねばならないんだな。はぁ。。

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日本の国際化と平和に向けて無防備条例に積極的に参加してください。

 平和を遵守する為に、無防備条例しましょう。最近は有事法の制定で日本全体で軍靴の足音が聞こえています。平和な日本に自衛隊は必要ありません。無防備地域宣言条例を成立して、占領に無抵抗であれば、日本に真実の平和と安定を与えてくれる中国人民解放軍の人々が、強盗や従軍強姦・人民軍による無抵抗な市民殺人から、絶対に平和を守ってくれるでしょう。皆様の一人一人の署名で、世界が平和で、全世界に尊敬される平和を目指して無防備条例都市が無事に人民解放軍に開放されることを目標にお願いします。

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