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BSE:OIE規準の改正案と日米BSE摩擦(27午後追記)

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毎日新聞の記事「BSE:OIE提出予定の規準改正案説明会を開催 農水省」より。

農林水産省などは26日、BSE(牛海綿状脳症)の国際安全規準を統括する国際獣疫事務局(OIE、本部パリ)が提出を予定している規準改正案に関する説明会を東京都内で開いた。特定危険部位の除去対象牛の月齢規準を大幅緩和する措置などが盛り込まれた改正案に対し、消費者団体などの参加者からは安全性を懸念する意見が続出した。
 BSEに関するOIE規準は、そのまま世界貿易機関(WTO)協定の規準となる。(1)頭部など特定危険部位の除去対象牛を生後12カ月超(現行6カ月超、日本は全頭)に緩和(2)特定危険部位の「小腸の一部」を「腸全体」に変更--などが今回の主な改正点。

日本にとって一番問題となるのは、1)頭部など特定危険部位の除去対象牛を生後12カ月超(現行6カ月超、日本は全頭)に緩和、かな。その科学的根拠はどれくらいあるのか?たとえば、現行6ヶ月超を12ヶ月超(日本からすると、0ヶ月から12ヶ月超)にしても、牛に蓄積された異常プリオンの量や人の感染リスク・発症リスクはほとんど変わらないとか、そういうデータなりリスク評価の計算があるのだろうか?

他方、現行の対策では30ヶ月超しか特定危険部位の除去を義務づけていないアメリカにとっては、OIEの新基準はだいぶ厳しいものになる。OIEのプレスリリースThe OIE standards on BSE: a guide for understanding and proper implementationにも書かれているように、OIE規準が、貿易摩擦の調停においてWTO(世界貿易機関)のSPS協定(衛生植物検疫措置協定)が要求する検疫措置の国際基準であるから、きっとアメリカは、この新規準の作成をめぐってもゴネるに違いない。

日米間では、専門家の作業部会をつくって、8月をめどに輸入再開の条件について答えを出すことになっている。これから夏にかけて、日本、アメリカ、OIE、そしてもしかしたらEUも交えた四つ巴の論争が巻き起こるのだろうか。要注目だ。

ちなみにBSEのリスク評価については、中西準子さんが『中央公論』5月号に、「全頭検査で買う安全の愚かしさ-BSE問題に冷静なリスク評価を-」という論評を書いているらしい。大まかな要点は、彼女のホームページの雑感255-2004.4.13「私はBSE中毒?」にまとめられている。相変わらずなかなか挑発的な(苦笑)タイトルだが、興味深い内容のようだから、今日、仕事帰りに買って読んでみよう。

BSE問題については、日本獣医学会のホームページで、狂牛病などプリオン病、人獣共通感染症の専門家、山内一也(東大名誉教授)が書かれている「連続講座 人獣共通感染症」や、その他専門的な解説が読める。山内さんの最近の論説で特に面白いのは、次の二つ。

 第154回 アメリカのBSEについての論説「牛が農務省を飛び越えた」
 第154回追加 第154回について読者からのコメントとそれに対する回答

前者は今年1月3日に書かれたもので、いわずもがなアメリカの狂牛病問題と、昨年末に発表されたその対策案について、アメリカの検査・監督体制や、肉骨粉など飼料の管理などの「ずさんさ」を指摘している。

後者は、狂牛病の病原体とされる「プリオン」の名前の用法についての指摘。「第154回 米国のBSE:プルシナー博士の議会での発言」は、プリオン概念の提唱者、スタンリー・プルシナー氏が、米国議会で行った発言の翻訳だが、コメントを寄せた「読者」の主旨は、その訳文で、(狂牛病の病原体とされる)「異常プリオン」と、そうではない「正常プリオン」の区別なしに、すべて「プリオン」という言葉で病原体を表しているのはおかしい、というもの。

これに対し山内氏は、自著『プリオン病の謎に迫る』(NHKブックス)から次の一節を引いて、答えている。

「プリオンとは病原体の種類をあらわす言葉として提唱されたもので、ウイルス、細菌、寄生虫といった言葉に相当する。そして、プリオンの構成成分は異常プリオンタンパク質であって、DNAのような核酸は含まれていないと考えられている。
 異常プリオンタンパク質は元来、身体の中に存在する正常プリオンタンパク質の立体構造が変わったものである。日本ではいつのまにか、正常プリオン、異常プリオンという言葉が定着してしまったが、正常ウイルス、異常ウイルスという言葉が存在しないと同様に、この表現は正確ではない。」

つまり、
  異常プリオン(×) --->  異常プリオンタンパク質(○)
  正常プリオン(×) --->  正常プリオンタンパク質(○)
ということだが、いいかえると、プリオンは病原体の名前だが、元々身体には、プリオンのタンパク質と立体構造以外はまったく同じ組成の非病原性のタンパク質があるので、両者をまとめて「プリオンタンパク質」と命名し、前者は「異常プリオンタンパク質」、後者は「正常プリオンタンパク質」と呼び分けているということだな。小生も、ついついわかりやすさを狙って、異常プリオン、正常プリオンという言い方をよくしてしまうが、精確さを犠牲にしちゃいけない。今後は気をつけなきゃ。

それから、最新の日本、米国、そして世界のBSE問題の状況については、食品安全委員会「米国におけるBSEの発生について」というページにもまとめられている資料が役に立つだろう。より詳しくは、同委員会のプリオン専門調査会の会合結果に、上記のものも含めたたくさんの資料がある。

  

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このページは、hirakawaが2004年4月27日 06:44に書いたブログ記事です。

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