遺伝子組換え作物問題に関するNGO報告書

〜 なぜアフリカはGM食糧援助を拒否するのか? 〜

ActionAid (アクションエイド)
GM Crops - going against the grain (遺伝子組み換え作物 ― 本質に逆らうもの) (PDF261KB) プレスリリース(2003.5.28)
2003年6-7月に行われた英国の公開討論会GM Nation? The public debate in UKへの参考資料としても提出された報告書。
概要より: 世界では今日約8億人の人が充分な食べ物を買ったり栽培したりできないため餓えている。飢餓が蔓延している国に生まれた子どもの7人に1人は5歳に達する前に命を落としている。
 この飢餓問題に遺伝子組み換え(GM)作物が解決策であると多くの政府や企業、研究所が盛んに奨励している。GM推奨者はGM技術が食糧生産を増やし、環境悪化を減らし、より栄養価の高い食品を提供し、持続可能な農業を推進すると主張している。しかしGM作物が本当に世界飢餓を緩和することができるのだろうか?
 アクションエイドは飢餓問題を適切にとらえ、地元の必要に応じた技術を適用し、基本的人権を向上させ、生物多様性を保護し、貧しい人々が正確な情報に基づき選択して参加することによってのみ食糧安全が確保できると考える。アジア、アフリカ、ラテンアメリカにおける事実に裏付けされたこの報告書は、GM作物はこれらのどの要素も改善しそうにないとの結論に達した。GMを大規模に普及することは、貧しい人たちより、裕福な企業にとって利益のある場合が多いのである。

概要の日本語訳ジャーニー・トゥ・フォーエバー平賀緑氏訳)

Friends of the Earth International (地球の友インターナショナル)
Playing with Hunger - The reality behind the shipment of GMOs as food aid (飢餓をもてあそぶ ― GM食糧援助の積荷の裏側の真実) (PDF2.01MB)
概要より: 遺伝子組換え(GM)食品による食糧援助をめぐる論争は、2000年に始まり、2002年に増大した。その年、アフリカ南部地域の国々が、食糧危機のさなかにGM食糧援助を拒否したのである。アフリカ諸国は、遺伝子組換え生物(GMO)を受け入れるか、人々が飢えていくのを見守るだけかという、誤った選択肢を与えられていた。GM食糧援助が、しばしば飢餓を解決する唯一の方法だと提示されるこのような状況は、主に、GM作物を開発途上国に売りつけようと躍起になっている米国によって進められたものである。
 今日、GM作物は飢餓解決の方法ではなく、アフリカや他の途上国の優先順位リストにもまったく数えられていないことは広く認められている。世界に対してザンビアのような国々は、地元産の非GM食品を援助として供給し、将来の飢饉を回避するための持続可能で多様な農業生産を達成できるよう助けてくれることを求めている。第3世界の国々で米国が、被援助国が望む解決法ではなく、GM作物の普及を優先しているという事実は、米国の数十億ドルに及ぶバイオテクノロジー産業の経済的な利害関心がもたらした主要な帰結である。

関連報告書: Trade and Food Sovereignty (貿易と食糧主権) (PDF758KB)
概要より: 世界貿易機関(WTO)、世界銀行、国際通貨基金(IMF)によって進められている政策は、完全に非持続可能な農業と食糧生産のシステムの発展を促進している。農と食のシステムのグローバリゼーションは、超国家企業(transnational corporations (TNCs))の利害関心に大きく影響された工業的で輸出優先的な生産体制への転換によって特徴づけられる。それらの企業は、食糧の生産や貿易、売買の仕方を命ずる力をますます増している。
 このような農業のシステムでは、世界の食糧安全保障と環境の持続可能性をもたらすことはできないということは証明されつつある。ショッキングなことに、すべての人に十分な量を供給するのに十分な食糧が世界では生産されているにもかかわらず、大多数は女性や子供である8億2600万人の人々が、未だに飢えや他の形態での栄養不足にさいなまれているのである。資源や土地、食糧の不平等な分配が、今日の世界の飢餓と栄養不足の主たる原因の一つであり、WTOが、特に農業協定(Agreement on Agriculture (AoA))を通じて進めている現在の貿易自由化のプロセスは、その原因の一部であり、解決策ではない。
 その理由は、WTOが、世界的な食糧主権の確立を妨げる自由化と規制の混ぜ合わせを促進しているからである。それは、世界中の生活必需産品の生産と小規模農家の生計を体系的に掘り崩しているのだ。またWTOは、超国家企業に、農民の食糧生産の技術や趣旨のような基本的資源を収奪するのを許す知的財産権システムを確立した。  このようなトレンドは、北側諸国でも南側諸国でも明らかに長続きするものではない。私たちは進路を変える必要があるのだ。農業が焦点を当て促進しなければならないのは、食糧安全保障や食糧主権、さまざまな持続可能な農業実践であり、「効率的な」生産ではないのである。コミュニティと人々、国々には、すべての個人に安全で健康によく栄養に富んだ食べ物を供給する適切で実施可能な方法の選択を保証するような、自らの政策を決定する基本的で奪うことのできない権利がある。すべての人々のための安全で健康によく栄養に富んだ食べ物こそ、最終目標なのである。
 要するに必要なのは、社会的・環境的・経済的な持続可能性を反映した食糧生産と貿易のシステムへと移行することである。社会的には、持続可能なフードシステムは、男性も女性も子供も等しく、土地や種子、安全で健康な食べ物にアクセスでき、それと同時にコミュニティを育み、社会的平等と民主主義を促進するものでなければならない。環境的には持続可能なフードシステムは、環境的に持続可能な土地利用と市場のシステムを含み、何よりもまず地元の必要のために地元の季節ごとの食べ物を提供するものでなければならない。そして経済的には、構成で平等な報酬が生産者とそのコミュニティにもたらされるのを保証するものでなくてはならないのである。

Food First & Pesticide Action Network
Voices from the South- The Third World Debunks Corporate Myths on Genetically Engineered Crops (南からの声 ― 第三世界は企業の遺伝子組換え作物神話を暴露する)
序章より: 遺伝子組換え食品の推進者たちにとって、現在は暗黒の時代である。ザンビアに始まり、最近ではインドなど、南側諸国の国がますますGM食糧援助を追い払い、企業に管理されたフードシステムの知恵とやらに疑問を投げかけている。ザンビアは雄叫びをあげるねずみである。大規模な飢饉に直面しながらもザンビアは、GM食品が安全である証拠は十分ではないという自国の科学者たちの研究に基づいて、米国からのGMに汚染された食糧援助を拒否したのである…

Third World Network Africa (第三世界ネットワーク・アフリカ) Genetically Modified Crops and Sustainable Poverty Alleviation in Sub-Saharan Africa: An Assessment of Current Evidence (遺伝子組換え作物とサハラ以南アフリカにおける持続可能な貧困緩和 ― 現在の証拠についての評価) (PDF1.06MB)(ミラー
概要より: この報告書は、サハラ以南アフリカの小規模農家にとっての遺伝子組換え作物の仮説的な潜在的便益および/またはリスクについて論争の先に進むものである。従来の作物育種を査定するための6つの規準を用いて、現在栽培されているか近々実用化される広く普及した3つの遺伝子組換え作物 ― 茎食い虫用害虫耐性Btトウモロコシ、ゾウムシ用害虫耐性Bt綿、ウィルス耐性サツマイモ ― を査定した。5つの規準は、需要主導性(demand-led,)、地域密着性(site-specific)、貧困緩和重視(poverty-focused)、費用対効果(cost-effective)、制度的持続可能性(institutionally sustainable)、環境的持続可能性(environmentally sustainable)である。

要約すれば、ウィルス耐性サツマイモは、大きな需要があるわけでも、地域密着的でも、貧困緩和に焦点を当てたものでも、費用対効果が高いものでも、制度的に持続可能なものでもない。組換えサツマイモの環境的持続可能性はあいまい(両義的)だが、大きくはない。Bt綿は、需要主導性、地域密着性、制度的持続可能性の点で低得点であり、貧困緩和性と費用対効果については両義的な結果となった。環境的持続可能性は、現在のところ際立ったものではないが、潜在的にはより向上する可能性がある。Btトウモロコシについては、需要主導性、費用対効果、制度的持続可能性の点で評価は低かった。地域密着性と貧困緩和性についてはっきりとした結果を得るにはまだ早すぎる。環境的持続可能性は現在は低いか穏健なレベルだが、潜在的には向上する可能性がある。
 適合性が低いにもかかわらず、これらの新しい組換え作物に対する大きな興奮が続いている。遺伝子組換えからの利得は、最大のものでも小さなものであり、従来の育種やアグロエコロジー的手法よりもずっと小さい。広く世界に知られているのは、遺伝子組換え作物についての政治化した国際的論争のせいである。特に、バイオテクノロジー企業は、盛んにアフリカの人道的援助計画を宣伝目的で使おうとしてきた。そのような社会的正統性は、貿易制限やバイオセイフティ管理、独占禁止規制を減らそうというそれらの企てにとっては必要なことなのかもしれない。